アルミラージ その25 こんな恥ずかしいヒロインがかつていたのですかね?(涙)
戦闘は静かに始まったのです。
まずわたしは、自分の気配を察知されていることを逆手にとることにしたのです。
オークが見えていない敵を感知するのは鋭敏な鼻。
つまりはわたしが自分の匂いを周囲に振り撒けば、匂いに敏感なだけに混乱すると思うのですよ。
何で匂いを振り撒くのか、ですって?
…………唾液と、しょ、小水なのです、よ?
仕方ないのです!
角うさぎは犬と同じで汗かかないのですよ!
とっさに匂いづけできる体液なんて、これくらいしかないじゃないですか⁈
戦闘前に自分を傷つけて血を流すわけにもいかないですし。
戦いの前に、戦場におしっこをまくなんて……、こんな恥ずかしいヒロインがかつていたのですかね?
情けなくて涙が出そうなのです。
あっ、涙も使えるのですね。
でも、わたしはリルと違って、いつでも自在に涙目になんてなれないのです。
と、とにかく、周囲に匂いづけをして、自分は入念に地面に擦り付けて匂いを消したのです。
これで簡易バトルフィールドの準備完了なのです。
さあて、それでは殺戮を始めるのです!
まずは、わたしの付けた匂いに釣られているオークどもの逆方向から突貫! なのです。
高い位置にあるオークの急所、頭、首、胸、腹は狙わないのです。
2メートル近い身長のオークの急所を狙うには跳躍しなければならないのですから。
遠距離攻撃の手段はまだ持っていないから仕方ないのです。
跳べばオークの視界に入ってしまう確率が上がるので、必然的に下半身、主には足を狙って攻撃するのです。
いきなり正体を見せることはしないのですよ。
気配は消したまま素早く近づいて、自慢の角で魔力撃! なのです。
前にゴブリン達を不意打ちしたみたいに、次々に倒れるオークどもなのです。
この場合は足止めさえできればいいのですから、いちいちとどめを刺す必要はないのです。
まあ、さらに威力が上がったわたしの魔力撃で、ほとんどのオークが両脚切断状態なのですよ。
ほっとけば出血多量で死んでいくだけなのですね。
よっしゃ! 順調、順調なのです。
早くも20匹近くのオークどもが血の海の中に転がっているのです。
奴らはまだわたしの存在に気付いていないのです。
まあ、これだけ血の匂いが充満すれば、今更わたしの匂いなど気にならないのですけどね。
このまま数を減らして、適当なところでトンズラするのです!
再度、オークの集団に突っ込もうとした時、わたしは違和感を感じ足を止めるのです。
あの集団は何か違うのです。
他のオークは恐れて叫んだり、怯えたりしているのに、目の前の一団には一切の乱れが無いのです。
まるで精鋭部隊のような……。
ここは退くべきなのですかね。
もう充分足止めは出来たのです。
無理をして可愛い妹分を悲しませることはないのですよ。
前を向いたまま少しずつ後退しようとすると、突然!
こちらに両刃の斧が回転しながら飛んできたのです!
ヤバッ⁈




