間話 その34 地龍王 わたしの可愛いミラを!
いつも、つたない作品をお読みくださいまして、ありがとうございます。
m(_ _)m
なんか前回投稿した日付けを勘違いしていました。
きっちり一週間後に投稿しようと思ってたのに……。
兎も角、これからも楽しんでいただけると嬉しいです。
わたしは深い微睡みの中にいる。
かつて、幸せだった頃を夢見ながら。
敬愛すべき夫。果たすべき仕事。
そして何よりも愛した、わたしの娘のことを。
わたしは夫であり、上司でもある龍神に生み出された存在です。
この世界に生きる魔物と呼ばれる、魔力を持ち、進化の可能性を秘めた生命たち。
その統括管理者である龍神の手伝いをするべく、わたしをはじめ、四体の最古の龍、龍王が眷属として作られたのです。
仕事は順調でした。
様々な種族が、様々な神々によって生み出され、繁栄し、あるいは生き残れずに滅んでいきました。
時には、他種族を全て滅ぼそうとする破滅的な存在も生まれましたが、そんな跳ねっ返りはわたしたちで制裁を加えて殲滅します。
わたしたちは最古の龍。
神々はさておき、地上では間違いなく最強の存在です。
数百万年の時を生きるわたしたちからすれば、たかだか百歳にも満たない魔物など赤子の手をひねるようなもの。
簡単な仕事です。
そうして長い刻を共に過ごせば、情愛が湧くのは必然だったのでしょう。
わたしたち四体の龍王は、龍神の妻となったのです。
そして授かった最愛の娘、ミルランディア。
ああ!わたしの可愛い娘!わたしのミラ!
わたしは、わたしの娘を奪った者たちを絶対に許しはしない!
月神との婚儀の席に現れ、祝福を授けると騙し討ちをしたあの堕ちた女神を!
わたしや月神は警告していたはずです!
あの女神が月神に想いを寄せ、事あるごとにミラの邪魔をしていたと!
時には命に関わるほどのことをしでかしていたと!
それなのに、夫である龍神や、全ての神々の父である太陽神たちは聞く耳を持たず、あの子は……わたしの可愛いミルランディアは……呪いを受け帰らぬ身となってしまったのです…………。
婚儀の席にいた者たちの中で、とっさにミラを庇ったのはわたしと月神ルーナラーナ様だけ。
元から疑っていたからこそ動けたのですが、全てをさえぎることは出来ず、ミラは死んだのです。
わたしも呪いの余波を受けて、長い眠りにつき体を癒やすしかありませんでした。
次に目覚めたわたしに、月神は告げました。
『あなたの最愛の娘を守りきれずに……申し訳ありませんでした……。
いくら詫びても詫びきれるものじゃないけど、せめて謝罪の気持ちがあることだけは知っておいて欲しい。
かの神の呪いは非常に強力で、僕の力を持ってしても治癒も復活も出来なかったんだ。
だけど!僕の祝福は授けてあるから!
いつかは……。そう、幾星霜の果てに、転生して巡り会えるかもしれない。
僕はそれまで待つ。
あなたも……どうか希望を捨てずに待っていてくれないか。』
わたしには月神に対する怒りはまったくありませんでした。
もとより娘を愛し、守ると誓い、実際に守ろうとしてくれたのはルーナ様だけでしたから。
それよりも腹立たしいのはかの女神と、わたしたちの警告を無視して、この惨事を引き起こした龍神たちです!
わたしたちの言うことを少しでも聞いてくれていれば防げたはずなのに!
……わたしは……。
夫である龍神のもとから離れて、地上の迷宮の奥深くにひきこもりました。
龍神からは何度も謝罪を受けましたが、わたしは一切聞かずに無視し続けました。
何を言っても、もうミラは返ってはこないのですから。
そのうちに何も言ってこなくなった、ある日。
久しぶりに月神の眷属が迷宮に現れたのです。
そして、告げられた言葉にわたしは歓喜しました!!
ああ……!
やっと……やっとあの子に会える!!
数多の転生を経ているから、わたしのことは何も覚えていないと分かっているけれど。
そんなことは些細なこと。
再び愛しいあの子、わたしの娘を抱きしめられるなら!
わたしの可愛いミラを!
この間話は、日付けを見ると去年の四月くらいにはもう書いていました。
当時の予定では、ミラさんが本神殿に行く→聖域が穢されてお呼び出し不可→結局、迷宮を踏破して月神宮に行く羽目に→迷宮のボス地龍王に挑戦!
の直前に差し込むつもりでした。
戦々恐々としてボス部屋に入る、モフモフ角うさぎパーティ。なにせボスはSランクでレベル100の地龍王ですからね。
ところが、そこに居たのは龍角の生えた美女。
しかも、涙を流して抱きしめられてしまう。ムギュッ!
記憶が無いから訳わかめなミラさんと、やっと娘に会えた地龍王さんの感情のギャップを書いてみたかったんですが。(^^;
書きすすめるうちに流れが変わり、亜神に進化した上で堕女神討伐が先になったので、ここに入れました。
この後、地龍王さんには堕女神討伐の助っ人として合流してもらう予定です。
記憶が無いのはそのままですが、自分が地龍王の娘の生まれ変わりだと知ってしまいましたから、ちょっと感動や落差は弱くなりそうですね。




