間話 その31 アストリス伯爵 【無間地獄】
いつも、つたない作品をお読みくださいまして、ありがとうございます。
m(_ _)m
今回は、断罪編なので胸くそ表現があります。
お嫌いな方はスルーしてもらっても、お話の流れは問題ありません。
それはそれとして今日は、悪役令嬢の中の人のマンガ版3巻が届いたので執筆はお休みです。
やっぱりこの作者の人すごい。面白い。
原作もマンガもね。
カサイサンの次回作にご期待ください。
これからも楽しんでいただけると嬉しいです。
俺は平凡な農夫だ。
だが、それで満足している。
愛する妻と娘、それと代々受け継いできた農地があればそれでいい。
平凡だが幸せな毎日を送っている。
しかし、ある日、ある夜にそれは終わった。
突然押し入ってきた盗賊どもに捕まってしまったのだ。
金目のものを(それもたいしてないが)奪ったあと、妻や娘は盗賊どもに手篭めにされてしまった。
それも、俺の目の前で。
やめてくれ!
なぜ、こんな酷いことができるんだ!!
下卑た笑い声が耳に残る。妻と娘の嗚咽も。
血の涙を流して反抗しても抑え込まれ、散々に殴られ、最後には切り殺されてしまった……。
気がつくと、そこは鉄格子のはまった馬車の中だった。
……俺は切られたはずじゃあ……?
考えても答えは出ない。それよりも家族のことだ。
妻や娘は別のところに売られたらしい。
絶望して死にたくなるが、生きていさえいれば助けられる可能性もある。
生き延びてチャンスを待つんだ……。
そう決意してから、すでに三年が過ぎた。
我ながらよく生きているものだ。
この鉱山の過酷な労働の中で。
飯はカチカチのパンにたまに薄いスープがつくだけ。
体もやせ細り、もはや逃げ出す体力もない。
だが諦めるわけにはいかない。
家族の命がかかっているんだ。
俺は必死で仲間を募り、脱走を計画した。
だが、いざ実行という時に裏切りにあい、あっさりと捕まってしまった。
罰は過酷なものだった。背中をムチで散々に打たれ、治療もせずに牢のような場所に放置された。
傷が化膿して高熱が出て、みるみる衰弱していく。
それを見た現場監督はあっさりと俺を捨てた。
俺をムチ打った連中に担がれて、崖から落とされた。
意識が落ちる前に思ったのは家族のことだった。
……スマン……助けに行けなくて……。
気がつけば、俺は街道を歩いていた。
……たしか崖から突き落とされたような……。
記憶が曖昧になっていく。
まあいいか。今は旅の途中だ。
妻や子供が待つ家に帰るのだ。
……だが故郷に帰った俺が見たものは、荒れ果てた村と血の跡が残る家だった。
わずかな生き残りに聞くと、突然現れた賊どもに襲われ、妻は殺され、娘は拐われたらしい。
俺は復讐と娘を助け出すことを誓った。
これでも昔は名の知れた冒険者だったんだ。
ただの山賊どもに遅れはとらない。
それから数ヶ月が過ぎ、やっとの思いで賊のアジトを突き止め突入したが……そこにあったのは変わり果てた娘の姿だった。
呆然と立ちすくむ俺の背を、仕留め損った賊の生き残りが振るった剣が切り裂いていく。
もはや、目的は失われ、生きる気力もなく娘の亡き骸に倒れ伏した。
すまなかった……俺が留守にしなければこんな目にはあわなかったのに……。
…………それからも、気がつくと別の人生をたどり、それを理不尽に奪われていくことを無数に繰り返している……。
いい加減、分かってきた。
これらのことを見せられ、体験させられる訳が。
これは罰なのだな。わしがしてきたことへの。
わしがしたことはこれほどに罪深く、多くの人生を理不尽に壊してしまったのだな。
これを見せてくる者が何者かなど分からないが、どうか聞いてくれ。
すまなかった。申し訳なかった。許してくれ。
謝るから。だから。
頼む……助けてくれ、もう勘弁してくれ、わしが悪かった…………。
もうこれ以上、わしの家族を奪わないでくれ……。
『今さら後悔しても遅いのですよ?
これは、お前が自ら招いたこと。
悔いるくらいなら、初めからやらなければよかったのです!』
今回の断罪は、精神的な攻撃にしました。
ゴブリンの餌やオークに掘られるのもよかったんですけど、あんまり血生臭いのもあれですし、ゴブリンやオークを捕まえてくるのも面倒ですし。(^^;
というわけで、ハゲ伯には生きながら無間地獄に落ちてもらいました。
……ミラさんがますます冥府神みたいになってしまった。
行き着く先は閻魔さま?




