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間話 その30 とある母親 このお方はもしや……。

いつのまにか40万文字を突破していたので、一日遅れですが記念の追加投稿いたします。


千文字前後縛りで書き始め、40万まで書けるとは思ってませんでした。


これからも楽しんでいただけるように精進いたします。


ありがとうございました!(๑>◡<๑)

 ……夜が明けていきます。


 恐ろしい魔物が出す毒の風に巻かれて死んだ息子を、神殿に運び込んだのは昨日のこと。


 噂で聞く巫女様ならば、ひょっとして息子を生き返らせてくださるかもしれない、と。


 近頃は高いお布施を要求されるとも聞きます。

 もちろん、そんな大金は持ち合わせてはいませんが、諦めきれなかったのです……。


 わたしの子はまだ四歳だったのですよ?


 昨日の今頃には可愛い寝顔を見せてくれていたのに、どうしてこんなことに……!

 こみ上げてくる涙を堪えて、冷たくなった頬を撫でます。


 藁にもすがる思いで神官様に理由を告げると、すぐに巫女様に引き合わせてくださいました。

 多くの怪我人を癒された巫女様は大変お疲れのようでしたが、事情を聞くとすぐさま魔法を使って、息子を生き返らせようとしてくれました……。


 ですが……息子が帰って来ることはありませんでした。


 とても心残りですが、巫女様が魔法を使っても無理だったのなら仕方ないと諦めようとした時。

 白と空色の髪をもつ美しい女性が声をかけてきました。


「わたしは蘇生魔法は使えませんが、ミラお姉様ならばあるいは可能かと思います。

 一晩、お待ちいただければ蘇生できる可能性はありますが……。

 いかがいたしますか?」


 この国で一番の癒し魔法の使い手である巫女様にできなかったことが、その「ミラお姉様」なるお方にできるのかは疑問ですが、ほんの少しでも希望があるならばと一晩待つことになりました。


 神殿の広間に寝かされた息子のそばから離れられず、一睡もできずに一晩過ごした今朝。


 広間に繋がる扉を開けて入ってきたのは巫女様と身分の高そうな少女、それに侍女でしょうか。

 そして、その後から続けて入ってこられた方に思わず目を奪われました。


 キレイな赤みがかった金色の髪。

 一度も日に当たったことがないかのような白い肌。

 キラキラと輝く美しい紅い瞳。


 なによりも、ひと目見たら目を離せなくなる存在感に圧倒されてしまいました。


 巫女様や貴族らしい少女も高貴な雰囲気をまとっていますが、この方は……なんというか格が違います。

 知らず知らずに、跪き、そのお方に向きなおり手を組んで祈りの姿勢をとっていました。


「どうか……どうかお願いします!

 わたしの息子をお救いください!」


 そのお方は、わたしの前で片膝をついて目を合わせるとおっしゃいました。


「確約はできないですが、出来るだけのことはするのです。

 ですので、ここで見たことはできれば言いふらさないで欲しいのですよ。」


 そして、目を合わせたまま微笑み、わたしの肩を軽く触れ、優しく撫でてくださいました。

 わたしは慌てて頷くと頭を下げ、重ねてお願いいたしました。


 巫女様がそのお方に言いました。


「ミラ様……。よろしいのですか?」


「わたしの正体をあまり広めたくはないですが、昨日姿をさらしてあれだけ戦ったのですから、今さらですね。

 それに出来るだけのことをする、と言ったのです。

 ならば()()で行使するだけのこと。」


 このお方の正体?


 なんのことか分かりませんが、床に寝かされた息子の横を空けて、ミラ様と呼ばれた方に場所を譲ります。


 ミラ様は、目を閉じ手を組んで祈りの姿勢を取られました。

 すると、お体から黄金の光が溢れ出し、気がつけばミラ様のお姿が変わっていました。


 組んでいた手には艶やかな獣毛が生え。

 背中から金色の翼が広がり。

 さらには、頭からは銀色の鹿の角のようなものと、動物の長い耳が。うさぎの耳でしょうか。


 溢れる光に(すが)しい神殿の空気が、さらに浄められていくかのような……。

 でも、冷たい光ではなく包みこまれるような温かさを感じます。


 このお方はもしや……。


「ルーナ様。

 罪なき子供が悪しき魔物のために、その幼い命を奪われたのです。

 この者を憐れに思われたのなら、どうかお力添えを。

 願わくば、この子の魂が輪廻に転ずる前に、再びこの世界に呼び戻すことを許して欲しいのです。」


 ミラ様は閉じていた目を開けると、魔法の言葉を唱えられました。


死者蘇生(リザレクション)!」


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― 新着の感想 ―
[一言] ワンちゃんミラお姉さま教ができる予感…
[良い点] 〉「ルーナ様。 〉願わくば、 この辺りだけが『力ある言葉』。 〉「リザレクション!」 これは雰囲気で言ってみた、単なるオマケ。 [一言] うん。 ルーナ様の目尻が、地面に届きそう。 …
[一言] 自分から注目を集めにいくタイプのラビット
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