間話 その21 大公国公女 わたくしたちに出来ることをいたしましょう。
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これからも楽しんでいただけると幸いです。
……ミラ様は……。
わたくしに向かって微笑み、軽く抱きしめてくださった後、窓から飛び出していかれました。
とてもお強いミラ様が、あれほどにおっしゃるのですから、相手である黒鳥は強敵なのでしょう。
どうかご無事で……。
開け放たれた窓を見つめていると、キャサリーテが声をかけてきました。
「フィルリネア様……。」
「分かっています。今はわたくしたちに出来ることをいたしましょう。」
まずは、お父様にお会いして、避難誘導の指示をしていただき……。
その後は神殿に向かい、お姉様を救い出すのです。
ああ、面倒ですけれど、床に並んで寝転んでいる方たちも移動させないといけませんわね。
……まったくもう。
我が兄ながら、知らないとはいえ月神様の婚約者であるミラ様に、よりにもよって側室になれとは!
失礼にもほどがありますわ!
考えていると、白い狼とカラスが歩み寄ってきました。
ミラ様の従魔であるラン様とレイ様。
改めて見ても、お二方ともお綺麗ですわね。
純白の毛並みに青空の色の鬣が映える狼。
光沢のある艶やかな漆黒の羽も美しい烏。
『フィルリネア様。
我が主の命に従い、お守りいたします。』
『ママ姉ちゃんの役に立つためにも、巫女を救い出すのデス!』
「ありがとうございます、ラン様、レイ様。
よろしくお願いいたしますわ。」
そして魔物とは到底思えない理知的な話し方。
ミラ様たちと話していると、すべての魔物が知性を持ち会話することができるのでは、と錯覚してしまいますね。
もちろん、それがとても珍しい例外であると分かっていますけれど。
ラン様たちとともに足早に廊下を進みます。
途中で会った執事長にお兄様の回収をお願いし、この国の元首、大公であるお父様の執務室に向かっていると、当然のこと護衛や執事たちに止められますが。
立ち塞がる者たちを魔法で眠らせるレイ様。
ラン様は行き交う人々を出会い頭に鑑定しては、時々光魔法を使って魅了を解除されていきます。
そうしてたどり着いた執務室。
ノックもせずに入ってきたわたくしたちを、最初は叱責しようとした父ですが、即座に魅了を解除され、まるで憑き物が落ちたかのようにキョトンとしています。
お父様までも魅了されていたのですね……。
事情を話し、民の避難誘導をお願いしますが、なかなか信じてもらえません。
「神獣だと?本気で言っているのか?フィルリネア。」
「もちろんですわ!」
急がなくてはならないのに、どうすれば良いのでしょう……。
すると、またしてもラン様に助けていただきました。
『そちらの側近の方は鑑定をお待ちですね。
疑うならば、わたしを鑑定されるといいでしょう。』
宮廷魔術師に念話で促しますと、すぐに顔色が青ざめてまいりました。
「こ、この狼……いえ聖獣様がおっしゃることは本当です!
このお方はたしかに月神様の眷属、神獣玉兎の従魔でいらっしゃいます!」
それを聞いて驚く父と側近たち。
ふぅ。なんとか信じてもらえたようですね。
これで民の避難誘導をお願いできますわ。
ようやくお姉様の元に行けるのですね……!
ミラ様。貴重な戦力である、ラン様とレイ様をお貸しいただき、改めて感謝いたしますわ!
必ずや、お姉様を救い出してみせます!




