間話 その2 冒険者 いったい、何に助けられたのでしょうか?
私の名前はリサ。
駆け出しの冒険者です。
この辺境の街ハーグの孤児院で暮らしていましたが、15才になったので卒業しなければならず、特に取り柄も無い私は冒険者登録しました。
今日も街を出て常設依頼である薬草採取をしに草原までやって来ました。腰まである草をかき分け、少しずつ摘んでは皮袋にしまっていると、後ろからガサガサと草をかき分ける音が。
すぐに立ち上がって振り返ると、そこには三匹のゴブリンがいたのです。
一匹ならなんとか相手に出来ると思うのですが、いきなり三匹は予想外!
手には粗末な棍棒や錆びたナイフを握って、こちらが一人だと分かってニヤニヤしながらこちらに近づいてきます。
逃げようか迷いましたが、三匹相手では逃げ切れる自信がないので、なんとかここで戦って勝つしか無いと小剣を抜き放ちます。
しかし、訓練以外では初めての戦闘に、剣を持つ手も震えてしまいます。
と、とにかく落ち着け! どの道いつかは通る道。それが早いか遅いかの違いだけよ!
震える小剣をゴブリン達に向けて、内心で自分を叱咤していると。
突然、ゴブリン達が叫び声を上げて、バタバタと後ろに倒れていったのです!
何が起きたのかまったく分からず、しばらく呆然としてしまいました。
ギャァギャァと叫び声を上げるゴブリン達をよく見れば、三匹とも足首のあたりに怪我をしてるではありませんか。
それも切断寸前くらいに深い傷の者もいます。
いったい何がゴブリン達を傷つけたのか?
周りを見渡しても何も見当たらず、気味が悪いですがこれはチャンスです。
そろそろと近づいて、ゴブリン達にとどめを刺していきます。
初めて殺した感覚にやはり手が震えます。
確か、ゴブリンなどの魔物には魔石があるはずなので、気持ち悪いですが、さらに胸に小剣を突き立て魔石を探し、薬草とは別にしてバックパックに入れて立ち上がると。
目の前に今度は狼の群れが!
血の匂いに釣られてやって来たのか、ぱっと見で5、6匹います。
一人では到底勝ち目はないので、すぐに逃げ出したのはいいのですが、なぜか一匹だけ追いかけてきました!
パニックになり悲鳴を上げて走るのですが、狼の方が足が速く、すぐに追いつかれて地面に倒されてしまいました。
慌てて、鞘ごと掴んだ小剣を盾にして、狼の噛みつきを防いでみたものの、このままではジリ貧です。
涙目になって必死に防ぎながら、何か打つ手はないか考えていると。
突然、狼が血を吐いたと思ったら、急に目の前から消えたんです!
血が顔にかかって咄嗟に目を閉じてしまったので、何が起きたのかは分からないけど……。
私、助かったのでしょうか?
一体全体、何が起きたのか?
また、何に助けられたのか?
付近を見渡してもやはり何も見当たらず、首をかしげるばかりです。
釈然としないのですが、生きていることだけは確かなので、バックパックを確かめると、顔を拭いて街に足を向けるのでした。
今日は薬草だけでなく、魔石が3個と臨時収入がありました。たまには何か美味しいものでも食べたいです!
ちなみに……ギルドにあったことを報告したのですが、白昼夢でも見たのだろうと、まったく取り合ってもらえませんでした……。
自分でも信じられないくらいだから、仕方ないですけどね。




