アルミラージ その9 天丼少女
わたしは溜め息をついて、女の子とオオカミを追いかけていくのです。
一応、隠密はかけたまま走り出すのですが、身体強化で速度を上げて疾走するので、どこまで気配が隠せるかは分からないですけどね。
とはいっても、全力疾走には程遠い感じなのです。
アルミラージの身体能力ハンパないのです!
余力を充分に残しながらも、あっという間に追いついてしまったのですよ。
この感じなら、全力の二、三割くらいなのですかね?
そういえば、アルミラージのステータスからして、敏捷性高かったのです。
具体的には女の子冒険者の4、5倍くらいなのです?
素のステータスで差があるのに身体強化まですれば、それはすぐ追いつこうというものなのです。
あーあー、もう地面に倒されて、オオカミに覆いかぶさられているのです。
涙目で必死になって、鞘ごと掴んだ小剣で噛みつかれないようにオオカミの口を押さえているのですが。
オオカミは噛みついたまま、頭を左右に振って小剣を奪い取ろうとしているのです。
……この状況、オオカミに鞘を噛みつかせておいて、小剣の中身を抜き放って刺し殺せばよいのではないのですか?
女の子はまったく気付いてなさそうなのですが。
まあ、襲われている最中に思いつけというのも酷かもしれないですけれど。
……ぁぁああ、もう! 不本意ではあるのですが、本日二回目の救出大作戦なのです!
さて、本作戦の要点は二つあるのです。
まず一つ目は、あくまでも正体は不明のままにするのです。
身バレしては、冒険者ギルド(あるかわからないのですが)に討伐依頼とか出されてしまうかもしれないですからね。
なので、やはり死角からバックスタッブでオオカミにとどめを刺して即、立ち去るのです。
二つ目は、ついでにオオカミのお肉をゲットするのです。
助けてあげたのだから、食事くらい差し出すのが礼儀というものなのですよ!
……というのは冗談として、今のアルミラージの身体能力と身体強化のコンボなら。
・魔力撃でとどめを刺す→そのまま角で突き刺して走り去る。
くらいは出来る気がするのです。
出来れば、女の子冒険者が目をつぶった隙にでも実行できれば言うことはないのですが、そこまでは望めないのですかね。
まあ、手間取って身バレしそうなら、即座に離脱すればいいのです。食事より身の安全が優先なのですから。
それじゃあ、そろそろ女の子も限界が近そうなので作戦を決行するのですよ。




