玉兎 その58 推測だけど、いい線いってるのでは?油断は禁物なのです。
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「……頭を上げるのですよ、公女殿下。
承知したのです。
神殿を解放し、巫女であるお姉様を助けるお手伝いをさせていただくのですよ。
どのみち、解放しなければ聖域にも入れそうにないですからね。」
わたしの言葉を聞き、パッと頭を上げるお姫様。
胸の前でお祈りのように両手を組んで握りしめて、わたしを見るのですが。
段々と目が潤んでいくのですね。
「ありがとうございます、ミラ様!
ああ……!これでまた、お姉様にお会いすることができますわ!」
うんうん。仲のいい肉親と会えないのはつらいですよね。
しかも、脅迫されて言うことを聞かされているのなら尚更なのです。
……さすがに金の卵に直接危害は加えないと思うのですけど。
精神的な負担はもちろん、若い女性なら別の心配もあるのですよ。
その強欲貴族に無理やり嫁にされたりして。
大公の娘を嫁にするなら、政治的な立場も強化されるでしょうし。よく分からんですけど。
それに、ゾンビーズの襲撃もおそらくは、その貴族の差し金かもしれないですね。
お姫様が、巫女である姉を助けたいと思っているのが知れ渡っているなら、助けるための戦力を集めようとするはず。
当然、強欲貴族側からすれば妨害したいですよね。
まあ、今回は妨害するまでもなく、他の貴族との交渉は不調に終わったようですけど、それを知らずに襲撃した可能性はあるのです。
もしくは、その情報も知った上で脅しをかけたのかもしれないですね。
そう考えると、ゾンビーズの戦力にも納得がいくのですよ。
おそらくは、わたしたちが加勢しなかったとしても、お姫様一行は苦戦はしても勝てたと思うのです。
しかし、犠牲者がゼロとはいかず、数名の死者、重傷者は出たはず。
その犠牲者の存在が強烈な脅しになるのです。
つまり、『余計なことをすると次はお前がこうなるぞ?』と。
すべては推測にすぎないのですけれど、割といい線いってるのでは?
ラン。あなたはどう思うのですか?
『……現在のところは状況証拠だけですので断言はできませんが、その可能性は充分にあるかと思います。
付け加えて申し上げるならば、襲撃犯をゾンビにしたのもこちらに情報を与えないためかもしれませんね。
襲撃が成功しても、失敗してもゾンビから情報は取れませんから。』
む。たしかにこれが雇われたゴロツキとかなら、どうせ大元にはたどり着けないにしても、雇われたという事実だけで黒幕が存在していることは分かるのですよ。
しかし、ゾンビーズなら、いかに不自然な襲撃であったとしても、「野良ゾンビに襲われただけでしょう?」と言われたらそれまでなのです。
……その強欲貴族かブレーンの参謀でもいるのかは分からないですが、敵は狡猾というか知能は高いとみるべきですね。
油断は禁物なのです。




