玉兎 その55 移動再開。……はい?今なんて?
いつも、つたない作品を読んでくださいまして、ありがとうございます♪
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これからも楽しんでいただけましたら、幸甚でございます。
話が込み入ってきたので、続きは馬車の中で移動しながら聞くことになったのですよ。
……その前に。
リルたちのモフモフを忘れずに堪能したお姫様なのです。
まあ、フサフサ毛皮をモフりたくなる気持ちは分かるのですよ。
最初はそうっと、徐々にしっかりとモフっていくお姫様。
表情はニッコニコですね?
その後ろで落ち着いた表情の戦闘侍女と、物欲しそうな顔のメイド(仮)。
よく見ると、手がワキワキ動いているのです。
自分も撫でたいけど、さすがに主人を差し置いてモフるわけにはいかないのですね。
しかも、モフり終わったお姫様が「ありがとうございました。とても良い感触でしたわ。それでは時間も押していますし、出発いたしましょうか。」と言うのを聞いて、メイド(仮)ちゃんはガックリと肩を落とすのです。
……なんだか、すこーし可哀想になったので、機会があれば撫でさせてあげるのですかね。
馬車に乗り込んで移動を再開するのです。
当然、ランは馬車には入れないから外で併走、ついでにレイも空からの索敵を任せるのです。
リルはというと。
隊列の先頭に立って索敵をしているのですよ。
『さっそく名誉挽回するの!』と張り切っていたのです。
それなりに広い馬車の中、お姫様と戦闘侍女の向かい側に座るのです。
馬車も動き出したので、とにかく続きを聞くのですよ。
「その貴族は、あろうことか姉の蘇生魔法で商売をしようと神殿に持ちかけたそうです。
自分の管理下に置き、高額の報酬を受け取って蘇生魔法を使うべきだと。」
……強欲って言ってたし、なんかどこかの風船おやじ(故人)を思い出すのですよ。
「しかし、姉は断りました。
蘇生魔法は難しい魔法で、成功したとはいえ、その成功率はけっして高くはありません。
その上、月神様からいただいた加護によってはじめて成功した奇跡ですから、それを私欲のために使うなど、到底許せなかったのでしょう。」
そりゃあそうですよね。
努力して身につけた蘇生魔法をお金で売るなど、信仰心を舐めてるとしか思えないのですよ!
それに蘇生魔法といっても、寿命で死んだ人を生き返らせることはできないはずなのです。
復活させられるのは、寿命や老衰以外で死んだ場合。
外傷や病気で死んだ時だけなのですね。
それに、当然のこと死んでから時間が経てば経つほど成功率は下がるのです。
この世界には、高速道路も、新幹線も、飛行機もないので、遠くで死んだらそれだけで復活は難しくなるのです。
しかし、それでいいのです。
ルーナ様が司るのは、正しく生きて死に、輪廻に帰ること。
際限なく復活できたら、人の死生観なんて歪むに決まっているのです!
ほんの少しだけの希望。
世界や国家にとって、あるいは人々にとって本当に必要な時にだけ使われる、くらいでちょうどいいのです。
わたしは答えるのです。
「当然ですね。
善意や信仰心を切り売りするなど、その貴族は巫女や神殿をいったいなんだと思っているのですかね?」
「おっしゃる通りです。
神殿でも、お布施や喜捨を受け取って治療をすることはありますが、商業として行うこととはまったく違います。だから姉も神殿も断ったのですが……。」
「それで?その貴族とやらはおとなしく引き下がったのですか?」
自分で聞いておきながら、なんだか嫌な予感がするのです……。
こういう非常識なやつは、一回断ったからって素直に諦めるわけがないのです!
と思っていたら案の定。
次のお姫様の言葉に、わたしは絶句するのです。
「その貴族は諦めずに何度も訪問してきたそうです。
それでもきっぱりと断ると……ついには私兵を率いて神殿を占拠してしまったのです!」
…………はい?
お姫様のモフりとメイドちゃんの手がワキワキのくだりを入れたから、少し長くなりました。
「さあ、参りましょうか。」(^.^)
「がーん!」Σ ω(゜Д゜III)ω




