間話 その16 アセナ ランちゃん、珍しく自爆。少し恥ずかしいです……。
いつも、つたない作品をお読みくださいまして、ありがとうございます♪
(╹◡╹)
続けて間話ですみませんが、楽しんでいただけたら幸いです。
『おめでとう、ラン。
これであなたは、新たな種族『アセナ』に進化できたのです。
まずは自分の能力の把握と慣らしが必要ですね。』
進化の眠りから目を覚ましたわたしを、ご主人様が祝福してくださいました。
わたしがワイズファングの次に選んだ進化先は、Bランクの魔物であるアセナ。
病気や怪我の治癒が得意なアセナならば、他の進化先よりもご主人様のお役に立てると思い、迷わず選ばせていただきました。
実際のところ、ご主人様やリルお姉様が怪我をするのは大抵の場合、お二方での模擬戦なのですけどね……。
さて。
わたしは今、ご主人様のお作りになったスィートマイホームから少しだけ離れた場所で能力の検証をしています。
いざという時には、戦力になり得るだけの『力』が無くては、ご主人様の群れの一員であると胸を張って言えないですからね?
そこで目をつけたのが魔法です。
わたしには、リルお姉様のヴォーパルホーンのような強力な武器も、ご主人様のような反則的なステータスや身体超強化もありません。
しかし、魔法なら。それも複合魔法ならば、想像力次第で強力な攻撃手段になり得ると考えたのです。
そして、湯浴みの準備における失敗と、ご主人様に授けていただいた知識を合わせて考えたのが、水蒸気爆発魔法です。
湯浴みのために、ご主人様が作られた湯船に水魔法で水を満たし、火魔法で温めようとした際に、加減を間違えて煮立たせてしまったのです……。
それをご覧になったご主人様が、わたしに説明してくださいました。
水は蒸発して気化する時に千倍以上の体積になると。
その爆発力は、時には山の形を変えるほどの威力であるとも。
わたしは、これは『使える』と感じました。
僅か水瓶一つ分ほどの水が、家屋ほどにも瞬時に膨張するのなら、その衝撃力はかなりのものとなります。
また、火魔法での爆発と違って、森の中でも延焼を気にせずに使えることも利点ですね。
それでは早速、試してみるといたしましょう。
前方、ある程度離れた場所に、まずは水の塊を作ります。
大きさは小さめの壺一つ分ほど。
そこに重ねるよるに火魔法で作る熱量をイメージ。
一瞬で蒸発するように、高温の炎の塊を水と同じ大きさで想像します。
そして魔力を注ぎこみ……発動!
ドッカーーーーン!!!!!
「キャン⁈」
……わたしは爆風に吹き飛ばされて、地面を転がり、大木に叩きつけられて止まりました。
耳が聞こえづらく、体中が痛みを訴えています。
致命傷ではないとはいえ、なんだか既視感を感じてしまいますね……。
ご主人様と初めてお会いした時を思い出します。
『なにごとですか⁈』
ご主人様たちがスィートマイホームから出て、こちらに来られました。
わたしは起き上がりながらもお答えします。
『ご、ご心配をおかけして申し訳ございません、ご主人様。
新しい複合魔法の実験をしていたのですが、爆発が近すぎて吹き飛ばされてしまいました。』
『ランが失敗するとは珍しいですね……。
いったいどんな魔法を使おうとしたのですか?』
恥ずかしながらも、ご説明しますと。
『……なるほど。
水蒸気爆発に目をつけるとはなかなか面白いですね。
さすがはランなのです。
ですけれども、今度からは防壁を作るなど、キチンと安全を確保してから実験をするのですよ?』
と、おっしゃってから、わたしに治癒魔法をかけようとしてくださいます。
ですが、わたしは丁重にお断りして、自分に治癒魔法をかけるのです。
ご主人様に癒してもらいたいのはやまやまですが、アセナの治癒魔法の威力を調べるには絶好の機会ですからね。
…………それにしても。
まさか、アセナになって最初の治癒魔法の対象が自分とは思いませんでしたね。
……しかも自爆したケガとは……。
少しだけ恥ずかしい気持ちで、わたしは自分の傷を癒すのでした。




