玉兎 その45 女使用人B、メイド(仮)登場。使えるものは使った方がいいのですよ?
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しばらくは無言の行進が続いたのです。
ランとレイも空気を読んだのか、なにも言わないのですよ。
そんなわたしたちを好奇の目で見てくる周りの兵隊さん。
わたしたち、というかランに乗ったわたしたちは、隊列の中ほどの豪華な馬車の少し前を歩いているのです。
推定やんごとない人、つまりはヤンさん(仮)の防衛に当てるつもりだと思うのですけど。
……雇ったとはいえ、さっき会ったばかりの人間に最終防衛ラインを任せるとか、ちょっと信用し過ぎじゃないですかね?大丈夫ですか?
まあ、いまさら裏切ったり、トンズラしたりはしないですけれど。
それに、索敵能力を万全に発揮するには悪くない配置なのです。
前後、左右、どこから攻めてくるかわからないのですからね。
ホントは前衛にリル、後衛にラン、上空にレイを配置して、中央に一番索敵範囲の広いわたしを置くのがベストだと思うのです。
ですけれど、さっきの今で襲撃が来るとも思えないから、このままでいいのですよ。
休憩や野営の時にでも、グイナルさんに提案してみるのです?
警戒しつつも、特になにも起こらずに小休止をとる一行なのです。
朝から動き出したのですけど、ゾンビの対応と後始末してから出発したから、もう昼は過ぎているのです。
太陽は中天から傾き始めているのですよ。
2時くらい?ですか。
だだっ広い草原の真ん中を走る街道。
その脇に馬車を止めてひと休みなのです。
当直の兵以外の人や、戦闘には出なかった使用人らしき男女が馬車から降りてきて遅い昼ごはんの準備をし始めるのですよ。
わたしもランから降りて近づくのです。
「なにかお手伝いすることはあるのですか?」
「いえいえ!護衛の方にお食事の準備などしていただくわけには!」
慌てて言う、使用人A。男。
「そうですか?ですが、わたしは火魔法、水魔法も使えるので炊事でもお役に立てると思うのですけれど……。」
「ええっ⁈土魔法だけじゃないんですか?」
驚く、使用人B。女、っていうかメイドっぽい。
馬車の窓から見ていたのですかね?
「ええ、そうですよ?ついでに風魔法と光魔法も使えるのです。
ですから、かまども作れるし、火加減もバッチリなのですが、いかがですか?」
それを聞いても「ですが……。」と渋る男使用人Aに対して、「では鍋とやかんを持って来ますので、かまどを二つお願いします!」と目をキラキラさせて即決の女使用人Bなのです。
「おい……。」と男使用人Aに止められても、「だってお嬢様に暖かいものを食べていただきたいじゃない!」とひかない女使用人B。
面倒くさいから仮称メイドとしておくのです。
そうそう、メイド(仮)の言う通り使えるものは使った方がいいのですよ?快適な旅のためにはね?




