玉兎 その43 甘えん坊大将軍(なんじゃそれ?)の名が泣くのですよ?
つたない作品をお読みくださいまして、いつもありがとうございます♪
( ˘ ‿ ˘ )
これからも楽しんでいただけたら幸いです。
さて、出発する前に現場の後片付けをするのです。
腐った死体をそのまま放置するわけにもいかないですからね?
わたしは、レイと一緒に火魔法で死体を焼き払い、ランと一緒に土魔法で次々に埋めていくのです。
最後に穴のあいた街道を元通りに、いや前以上に整地して固めておくのですよ。
フフフン?
ここだけアスファルトに舗装されたかのような美しさなのです!
土木工事の業者でもやっていけるのですね。
面倒だからやらないですが。
することも終わり、いざ出発!と思ったら。
なにやらリルが沈んだ様子なのですよ。
人前で移動する時の定位置、わたしの抱っこもせがまないとは!
甘えん坊大将軍の名が泣くのですよ?
わたしはリルに近づくと、脇に手を入れて抱き上げるのです。
『どうしたのですか、リル。何か考えごとでも?』
水を向けても目を合わせずに黙っているのです。
わたしは、フッと微笑むのです。
『言いたくなければ言わなくても良いのですよ。
リルが話したくなったら聞くのです。』
と言って、リルをランの背中に乗せてから、わたしもランにまたがるのです。
ランは乗りやすいように伏せてくれているのですよ。
相変わらず気の利く子なのですね!
ランに乗るわたしの前にリルが座っているのです。
なにを屈託しているのかは分からないですが、これも成長なのですかね?
リルもお年頃(もうすぐ一歳くらい?)ですから、姉に話したくないことの一つや二つあろうというものなのです。
隊列の準備が整い出発するのですが、リルはまだ黙ったままなのですよ。
わたしはリルの気を紛らわせるよう、みんなに話しかけるのです。
『ゾンビたちを焼いて埋めたから、やっと鼻で息ができるのです。
あの臭いは、わたしたちにとって天敵かもしれないですね。』
すると、やはり空気が読めるランが返してくれるのですよ。
『そうですね、ご主人様。私は鼻が利かないと索敵能力が著しく下がってしまいますから。
不死者たちと森の中で出会わなくて良かったです。』
ランの言葉を聞いたリルが少し体を震わせたのです。
ふむ。ひょっとして、わたしたちが腐敗臭に耐えかねて超嗅覚をオフにした後、自分に任された索敵で推定死霊術師を見逃してしまったことを気に病んでいるのですかね?
まあ、たしかに褒められたことではないのですけれど、それを言ったらわたしたちが臭いに我慢して索敵していればよかっただけのこと。
そんなに気にすることではないのですよ?
リルの背中を撫でながら、そう伝えたのです。




