玉兎 その40 仕方ないから許してやるのですかね。
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まったくもう!
薄々気付いてはいたのですけれど、レイのやつはわたしのことを未だにママネエちゃんと(心の中で)呼んでいるのですね?
で、時々うっかり出てしまうと。
まあねぇ、レイにとってわたしは命の恩人、いや恩兎な上、名付け親でもあるのです。
母親と慕うのも分からなくもないのですけど。
わたしとしては微妙に嫌なのですが、心の中までは縛れないし、縛りたくもないのですよ。
レイは家族なのであって、奴隷ではないのですから。
奴隷だって頭の中で考えることは自由なはずなのです。
はぁ。仕方ないからママネエちゃん呼ばわりも許してやるのですかね。
ほら!もう怒ってないから戻ってくるのですよ!
治療もあっさりと終わらせて、ランともども、わたしにも畏敬と感謝の混ざった視線を感じるのです。
ま、スルーなのですけどね?
さっさと持ち場に戻るのですよ!
それより、念話で呼びかけても、なかなか戻らないレイなのです。
それどころか、遠くを見ながらさらに高度を上げるのですよ。
何かあったのですか?
『ママネ……ミラネエちゃん。ダレかがトオクへニゲてイクのデス。』
ん?
逃げる?
なんで?何から?
そこまで考えて、ハッと気がついたのです。
このゾンビどもはどこから来たのですか?
戦場跡でも、大量殺人現場でもない街道に突如現れたアンデッドモンスター。
しかも、思考能力など無いに等しいのに、馬車の行く手をさえぎるかのように半包囲態勢をとっていたのですよ。
指揮者、死霊術師的なやつがいてもおかしくない、いや、居ない方が不自然なのです。
ちぃっ!気付くのが遅かったのです!
超感覚を切っていたのが裏目に出てしまったのですね。
『レイ、追いつけそうですか?』
『ウーン、オイツケるカモシレナイけど、モリのナカにハイッタらワカラないのデス。』
……空からの追跡は遮蔽物があると弱いのですね。
それに、わたしやリルならともかく、Dランクのレイでは戦力的に不安が残るのですよ。
わたしの全力スピードならワンチャン、追いつけるかもしれないですが、人前で全力出して玉兎の姿を見せるわけにもいかないのです。
仕方ない、今回は見逃してやるのですかね。
しかし、次は無いのです!
今度出てきたら、ボッコボコにして腐った死体の仲間入りさせてやるのですよ!
「どうかされたかな?」
ゴージャス鎧のグイナルさんが話しかけてきたのです。
レイと会話して、街道の奥を見ていただけなのですけど。
はたから見れば突然黙って遠くを眺めているようにしか見えないから、不思議に思われたのですね。
「……いえ、少し不思議に思っていたのですよ。
わたしたちは森の奥で暮らしていたので、よく分からないのですが、このようなアンデッドモンスターが街道に出てくることは、よくあることなのですか?」
「いや、我々もこのようなことは初めてだ。
この街道は、公都と隣国を繋いでいるから兵が巡回もしているし、安全性も高いはずなのだが……。」
……やはり、意図的な襲撃の可能性が高いようですね。




