玉兎 その38 まるで子だくさんのママみたい?
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これからも楽しんでいただけたら幸いです。
ゾンビどもを全滅させ、もはや動くやつは居なくなったのです。
魔石が残っているゾンビは、胴体だけでピクピクと動いていたりするのですけどね。
そんな連中にもきっちりとどめを刺していると、リルとレイが戻って来たのです。
『ミラお姉ちゃん!ゾンビ?たちはリルがやっつけたのよ!』
『レイもヤッツケたのデス!』
よしよし、みんなよくやったのですよ。
わたしは騎乗していたランから降りると、リルを片手で抱き上げ、レイを肩に止まらせつつ、空いている手でランを撫でるのです。
……なんか、レイが増えてから、さらに子だくさんのママみたいなのですね……。
まだ未婚なのですが……。
ちょっとだけ現実から離れて遠い目をしていると、ちょいゴージャス鎧の人が近づいて来たのです。
「御助勢いただき感謝する!
わたしはクレサンド公国騎士、グイナルと申す。
恩人の名をお聞かせいただけるかな?」
「これはご丁寧に。
わたしの名前はミラ。魔物使いなのです。
魔法も使うのですけどね。
この子たちは、わたしの従魔なのですよ。」
わたしは答えて、皆を撫で、抱きしめ、頬ずりをするのです。
みんなうっとり顔なのですね。
「それに感謝するには及ばないのですよ。
見たところ、皆さんの実力なら問題なくゾンビたちを倒せたと思うのです。
余計な手出しでしたか?」
「いや、そんな事はないぞ!
たしかに我々だけでも勝てただろうが、犠牲が皆無とはいかなかっただろう。
君達のおかげで軽傷者だけで済んだのだからな。
改めて感謝を受け取って欲しい。ありがとう!」
そう言うと左拳を右胸に当て、直立不動になるのです。
見ず知らず、通りすがりの人間に異世界式敬礼(仮)をして感謝を伝える騎士。
この、ちょいゴージャス鎧さんは当たりなのですね。
人間社会の中では地位、身分を持たないわたしに敬意を払えるとはなかなかの人物なのです。
「それにしても見事な手並みであった!
ゾンビどもを穴に落として動きを封じることで、安全にとどめをさせたのだからな!
従魔たちも強かったが、ミラ殿が最後に使った光の剣がまた凄い威力だった!
あれも光魔法なのかな?」
やっぱりツッコまれたのですね。しかし、正直には言えないのですよ!
「ええ、そのようなものです。
失礼ながら詳細はお話しできないのですが……。」
「いや、こちらこそ失礼した!
初対面の人間に手の内は明かせまいよ。
忘れてくれたまえ!」
すんなり引いてくれたのです。
……ここは少しサービスするのですかね?
「わたしと狼のランは治癒魔法が使えるのです。
ケガをしている人がいるのなら治療するのですが、いかがですか?」
「なんと!治癒魔法まで使えるのか!
しかし、その狼が魔法を使うと?
失礼だが、本当に大丈夫なのか?」
まあ、お疑いもごもっともなのですが。
しか〜し!
アセナに進化したランの治癒魔法は、なんならわたしと遜色ないレベルにまで達しているのですよ。
心配無用なのです!
「ええ。ランの治癒魔法はわたし以上に優れているのです。そういう種族なのですから。
お疑いなら、わたしだけでも問題はないのですが。」
「いや、構わない!
それでは頼めるか?軽傷とはいえ、悪化しないとも限らないからな。治せる時に治しておくに越したことはない!」
ふむふむ、ついさっき知り合った人間の、そのまた従魔に部下の治療を任せるとか、懐も深めなのです。
これは仕方ないから名前を覚えてやるのですかね?
……ただ単に、単純なだけなのかもしれないのですけれどね……。




