アルミラージ その5 第一冒険者発見?
全ての痕跡を消すのは不可能とは言わないまでも、大変な労力を使うことになるので、とりあえず後ろ足で土をかぶせて表面上は何もなかったことにするのです。
ザッザッとかけていくわけですが、後ろに向かってかけるので狙いが上手く定まらないですね。まあ、ここは適当でいいのです。
この後、新居を作らなくてはいけないのですしね。
さて、新しいスィートマイホームを作るにあたって、まず場所の選定から始めるのです。
旧ホームからある程度離れたところにしないと、腐臭やアンデッドさんが「こんにちは!」してくるかもしれないですからね。
それは勘弁して欲しいので、数百メートル、出来ればキロ単位で遠い場所にするのです。
ただし、水場から適度に近く、森や人間の村からは離れた立地がベストですね。
川の流れと並行に移動するのです。
逆方向に川を下ると人間の住む村っぽい集落があるので、反対方向に進むのです。
うちのお兄様が罠にかかって捕まった村なのですね。
もうとっくに人間たちに、美味しく(同性愛的な比喩でなく食料的に)いただかれてしまっていると思うのですけど。
今のアルミラージなわたしなら、身体能力にあかせて簡単な罠など軽く食い破って逃げられるとは思うのですが、気をつけるに越したことはないのです。
触らぬ神にタタリなし、なのです。
……なし、なのですが。
なんで人間がここにいるのですかね⁈
十代の女の子なのですか。
革っぽい胸当てをつけて、バックパックを背負い、小剣を腰に差しているのです。
これはもしかして冒険者というやつなのですか⁈
癖のある赤毛をポニーテールにしている、目鼻立ちのくっきりした、なかなか可愛いらしい顔立ちなのです。
お胸のボリュームは……スレンダーとだけ言っておくのです。
動きがぎこちないというか、物慣れない感じなので、多分駆け出しっぽい?
キョロキョロと周りを見渡しては、時折しゃがみ込んでは何か作業をしているのですよ。
立ち上がると手に持った皮袋に草をしまっているところを見ると、いわゆるひとつの薬草採取をしているのですか?
うーん、ハッキリ言ってお邪魔なのですよ。
せっかく新居を作ろうとして来たのに、早くどっか行かないのですかね〜。
隠密して気配を消しているので、こちらには全く気づいていないのですが、ちょっとイライラしてくるのです。
………人がうろつくところは、スィートマイホームの立地場所としては良くないのですよね。
出来れば人には関わらないで生きていきたいのですが。
角うさぎ時代には食料として、アルミラージとしては猛獣駆除的に狩られてしまうのです。
仕方ないからちょっと水場から離れたところに新居を移すのですかね、と踵を返してきた道を戻ろうとしたその時なのです。
甲高い悲鳴が聞こえたのは。




