玉兎 その13 ヘルプなのですよ!ランちゃん⁈
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つたない作品ですが、これからも楽しんでいただけると嬉しいです。
(๑・̑◡・̑๑)
屋敷内の掃除も済んで、最後の仕上げにかかるのですよ。
すなわち、風船おやじの生ハム……、このおやじを生ハム呼ばわりは生ハムに失礼なのですね。
生ハムは美味しいものなのですから。
煮ても焼いても食えない、というより食いたくない風船おやじは普通に死体と呼ぶのです。
つまりは、風船おやじの死体を屋敷の門前に置いて、衛兵に発見してもらうのです。
おやじの懐には遺書ならぬ、悪行日記が。
衛兵には声をかけるべきですかね?
発見が遅れれば、悪事の関係者に証拠隠滅されてしまうかもしれないのです。
うーん。一応、声だけかけておくのですかね。
それに反応するかは知らないのですよ。
というわけで。
そろそろ東の空が白み始めた、まだ夜明け前に。
衛兵の詰所を目指して、気配を消し空を飛ぶのです。
はっきり分かるのは街の入り口なのですけど、ちょっと遠いのですよね。
近くにあるといいのですが。
超感覚で探すまでもなく、夜警の篝火が街の中央付近に一つあったのです。
うむ。あそこからならそれなりに近いのですね。
では決定なのです。
夜警に向かってゴー!なのです。
篝火の範囲からは外れた場所にフワリと降り立つのですよ。
わたしの視界には、眠そうに立つ歩哨が二人。
右手に短めの槍を、左腕には小型の盾がついているのです。
大きな建物の門前に立つ歩哨。
これは衛兵の詰所ではなくて、領主とか代官のお屋敷なのですかね?
まあ、そんなことはどうでもいいのです。
なるべく低い声をイメージして念話で話しかけるのですよ。
『ここから西にある商人の屋敷が襲われたのです。』
急に頭の中に声がしてビクンとなる二人。
あたりをキョロキョロと見まわすのですが、当然何も見つからないのですよ。
わたしは気配を消して、建物の陰から念話を届けているのですから。
『もう襲撃は終わったのですが、その屋敷の主は極悪人で、多くの悪事に手を染めていたのです。
ですが、最後に悔い改めて、自身が行なってきた悪行を書き記したのです。
それを証拠にすればさまざまな捜査が進むのですよ。』
ヒソヒソと話し合う歩哨たち。
「お前は何者だ?いったいどこにいる⁈」
誰何されても答えるわけないのですよ?
『その商人の名前は……。』
名前は。
……えーっと。
なんでしたっけ⁈
ヘルプなのですよ!ランちゃん⁈
『たしかツェンバルンだったかと。』
ありがとう、ラン!さすがなのですね!
『お役に立てたならよかったです♪』
うんうん。こんな未明にまで起きて待っていてくれるとか、本当にありがたいのですよ!
あとでご褒美なのです!
すると嬉しそうな雰囲気が伝わってきたのです。
リルもランも可愛いものですね!
『その商人の名前はツェンバルン。
色々と悪事を行なっていたようですよ?
関係者に証拠を消されないうちに確保することを薦めるのです。
では、あとは好きにするのですね。』
「待ってくれ、それだけじゃ動けない!
何か証拠はないのか⁈」
証拠?
証拠ねえ。
『証拠なら、奴の屋敷の門前に置いてあるのです。
その商人の死体とともにね。』
言い捨てて、宿の自室に転移!
あとは任せたのですよ!




