ヴォルパーティンガー その59 わたしは空気の読める角うさぎなのです。
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つたない作品ですが、これからも楽しんでいただけたら嬉しいです。
(^-^)
村長宅を出て外に出ると、数人の村人たちが待っていたのです。
わたしを見るなり、一瞬の硬直。
その後動き出したのですが、駆け寄ってくる幼女が一人いるのですよ。
「おねえちゃん、ママを助けてくれてありがとう!
ママは元気になったの! ねっ? ママ?」
言って振り返る幼女なのです。
振り向いた先に、歩み寄るご夫婦が。
ヒゲの旦那と天晴れママさんなのですね。
二人して深々と頭を下げて、感謝を伝えてくるのです。
「妻を救ってくれて、本当にありがとう。
わたしたちで出来ることがあったら、なんでも言ってくれ。」
「盗賊たちも、あなたたちが退治してくださったと聞きました。あなたたちは、わたしだけでなく、この子や、わたしたち全員の命の恩人です。
ありがとうございました。」
ちょっと涙目なのですね。
こっちは打算でやったことなので、若干引け目を感じないこともないのですが、それを正直に言っても場を乱すだけなのです。
空気を読めるわたしは、素直に感謝を受け取るのですよ。
わたしは夫妻を見てひとつうなずくと、しゃがんで女の子の頭を撫でるのです。
リル、ランには及ばないですが、良い感触なのです。
目を見て微笑みながら言うのですよ。
「それは良かったのですね。
しっかり治したから大丈夫とは思うのですが、それでもしばらくは無理をさせないようにするのですよ?
お母様はあなたを守ったのですから、今度はあなたがお母様を守ってあげるのです。」
「うん! 分かった! わたし、ママを守るの!」
と元気よく答えると、勢いよく天晴れママさんに抱きつくのです。
……それで守っているつもりなのですね。
守るつもりが守られているのですが、逆もまた真なり、なのです。
子を守ることで母は強くなるのですから。
それぞれ、村人の感謝を受け取ってから、盗賊のところに行くのです。
有象無象の連中を死なない程度に治しーの、片目の親分を穴から土魔法で掘り出しーの。
で、歩ける程度に治しーの、してたらもう夕方なのですよ。
これは街に連れて行くなら明日なのですかね。
せっかく掘り出したのですが、逃げられないようにまた埋めるのですか。
また明日の朝、村に来た時に掘り出してやるのですよ。
それまでは糞尿垂れ流しなのです。
かつての名作小説に「盗賊に人権は無い」という名句(迷句?)があるので気にしないのですよ。
他人の権利を侵害することは、自分の権利を放棄することと同義なのですから。
連れて歩く時は水魔法で洗ってやるから我慢するのです。




