ヴォルパーティンガー その53 獣使いの聖女様
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m(_ _)m
つたない上に、行き当たりばったりで先行き不安な作品ですが、楽しんでいただけたら嬉しいです。
(=^x^=)
「おねえちゃんがママをなおしてくれたの?」
涙をふきもせずに幼い娘が、わたしを見上げて聞いてくるのです。
「そうですよ。わたしが治したのです。
あなたのママはもう大丈夫なのです。あとはキレイにして、ゆっくり休ませてあげるのですよ。」
わたしは微笑んで、娘の頭を撫でるのです。
父子の感謝の言葉を聞き流しつつ、次々と患者を癒やしていくのです。
ものの十数分ですべての怪我人を治したのですが、わたしの前にはなぜか跪いて拝んでくる村人たちの姿が。
え、えぇ〜〜?
わたしが神々しいのは仕方ないのですけど、なんかやりにくいのですよ。
「ありがとうございます! ありがとうございます!」「あんたのおかげで助かった!」「さぞかし名のある魔法使い様と思いますが、お支払いはいかほどでしょうか?」「おねえちゃん、ありがとう!」
いや、一度に言われても分からないですから!
困っているわたしを見て、村長さん(仮)が助け舟を出すのです。
……もうちょっと早く出してくれてもよかったのですよ?
「みんな落ち着いてくれ!
このお方は、魔物使いのミラ様とおっしゃるそうだ。
たまたま襲撃に居合わせた縁で、わたしたちの傷を治してくださったのだよ。
対価は無料ではないが、わずかな衣服と食料で構わないと言ってくださったから、みんな心配しなくていい。」
そう言い聞かされて、どよめき、こちらを見てくる村人たちなのです。
わたしは頷いて肯定するのですよ。
ついでにニッコリ微笑んでみると、顔を赤らめる連中が多数。
余計なことしたのですかね?
ま、まあ、交渉を円滑に進めるためなのです。
「わたしたちはずっと森の奥で暮らしていたのです。
街のこと、この国のことなど、色々と教えて欲しいのですよ。
それを対価としたいのですが、よろしいですか?」
それに答えて、「もちろんです!」「ありがたや、ありがたや!」「ありがとう! あんた、まるで聖女様だ!」「そうだそうだ! 獣使いの聖女様だ!」などなど、また一斉にまくし立てるのですよ。
いやいや、聖女とかいらんから!
余計なことを言うのはやめるのです!
ああっ!
そら見たことか! やっぱり称号ついちゃったじゃないですか!
『獣使いの聖女 森に獣たちとともに住む清らかな少女。癒しの魔法を得意とする。テイムの成功率と治癒魔法の威力が上がる。』
くっそ、要らんことを言ったやつは誰なのですか⁈
聖女とか、やっぱり婚約破棄フラグじゃないですか!
わたしが不機嫌な様子を見て、慌てて村長(仮)がとりなすのです。
「静かに! 静かにするんだ!
ミラ様? とりあえず、わたしの家で衣服のお着替えなどいかがでしょうか?
狭い家ですが、おもてなしさせていただきますので!」
……ここまできて、交渉決裂させるわけにはいかないのです。
機嫌を直して、案内に従って歩きだすのですよ。




