ヴォルパーティンガー その46 『なんで助けるの?』
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素人が書いた、つたない作品ですが、楽しんでいただけたら幸いです。
三匹そろって近隣の村に向かう、わたしたちなのです。
わたしは元の姿、ヴォルパーティンガーのままなのです。
リルがちょっとだけ不満顔なのですが、変化は一日12時間までなので仕方ないのですよ。
人間に化けたら、いつまでその姿でいるか分からないのですから。
全力ではないものの、それなりの速度で走るのです。
わたしたちの中で一番足が遅いのはもちろんランなのですが、持久力はリルよりランの方が上なのです。
なので、ランの足に合わせて、リルの息が上がらないように適度な速さを心がけるのです、って面倒くさいのですね!
まあ仕方ないのですけど!
森を抜け、全員が隠密と索敵をしながら、さらに進むと村が見えて来たのです。
?
煙がいくつも上がっているのです。
お昼時にはまだ早いのですが……。
!!!
煙は黒いのです! 村が燃えているのですか⁈
わたしが走りだすと、リルとランもあとを追うのですが、どんどん離されていくのです。
『ミラお姉ちゃん! 急に走りだしてどうしたの?』
『村が燃えているのです! 何者かに襲撃されているかもしれないのですよ! 助けなければ!』
『なんで?』
『なんでって……。』
『ミラお姉ちゃんに教えてもらった盗賊さんたちだったら、確かに殺しても問題ないけれども、盗賊さんたちも生きるために殺すだけなのよね?
それならお姉ちゃんのお兄さんを殺して食べた村の人間と変わらないの。
村の人だけ助ける理由はないのよ?』
ハッとして、足を止めてしまうのです。
たしかにリルの言う通り、わたしたち魔物の論理は弱肉強食。
生きるために殺して食べるのが当たり前なのです。
そこに、普通の村人と盗賊、街に住む人、兵士などの区別はないのですよ。
襲われたら反撃する。
敵わなければ逃げる。
勝てたら食べる。
単純明快なのですね。
まあ、今のところ人間を食べたことはないのですけれど。
それも含めて、わたしは随分と魔物の思考に染まったと思っていたのですが、まだまだ人間だった頃の常識から抜けていなかったようなのです。
しかし、何の罪も犯していない村人が、理不尽に害されるのを黙って見ているのもモヤモヤするのです。
どうしたものか……。
『リルお姉様。村人を助ける理由はありますよ。』
その時、追いついて来たランが話に入ってきたのです。
『どうしてなの?』
『村人に恩を売れるからです。
話に聞く盗賊たちは、こちらから交渉してもまともに対応してくれるとは思えません。
ミラお姉様の容姿は美しいので、むしろ襲いかかってくる確率が高いでしょう。
対して、村人たちは警戒はしても、交渉には応じると思います。
さらには、盗賊を撃退すればわたしたちに恩を感じ、その後の交渉も有利になるでしょう。』




