間話 その4 ワイズファング前編 ご主人様との出会い
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素人のつたない作品ですが、楽しんでいただけたら幸いです。
私の名前はランと申します。
ご主人様とリルお姉様にお仕えする狼です。
私がご主人様と初めてお会いしたのは、私が群れから追い出されてしばらくしてからのことでした。
黒い毛並みに白い牙を持つ、ホワイトファングの一族にあって、私だけが白い体を持っている。
異端者であり、白い目で見られてはいましたが、それだけで排除されるほどではなかったのです。
私が群れを追い出された原因は、私が群れのリーダーに逆らってしまったから。
狼は群れで狩りをします。
群れのリーダーの指示は絶対です。
しかし、私は小賢しく頭が回るせいで、リーダーの指示を無視して獲物を捕まえてしまったのです。
良いことをしたと思い、獲物を咥えて仲間の元に戻った私を、リーダーは威嚇で迎えました。
今なら分かりますが、その時の私には分からなかったのですね。
群れの秩序を乱すことの意味を。
いくら、その時点で私の判断の方が正しく、獲物を仕留めることができたとしても、原始的な力で頂点を決めるホワイトファングにとっては、リーダーの権威に逆らう異分子に他ならないのですから。
私は制裁を受け、群れを追い出されました。
一匹では大きな獲物は取れず、小さな獲物で飢えをしのいでいたのですが、毎日狩りが成功するわけではありません。
途方にくれ、空腹を抱えて森を抜けた私の鼻に飛び込んできたのは、むせ返るような血の匂いでした。
慎重に近づいてみると、数えきれないオークの死骸があったのです。
今思えば、付近にそのオークを仕留めた者がいるかもしれないと危機感を持つべきですが、当時の私は空腹に耐えかねていたので、即座に食いつきました。
周りを気にせず夢中で食べていた私は、突然轟音と共に吹き飛ばされたのです。
血を吐き、全身を襲う苦痛の中、ああ、これで私は死ぬのだなと、薄れゆく意識の中思いました。
しかし、私は死ななかったのです。
何故なら、ご主人様が傷を癒やしてくださったから。
しかも、傷を治しただけでなく、私を傷つけたことを謝罪し、腹を空かせた私に自分が仕留めた獲物を譲ってまでくださいました。
それもすぐには食べ切れないほどに、です。
見た目はただの角うさぎですが、私はこの時、私を群れから追い出したリーダーよりも遥かに大きな度量を持つご主人様に、感動すら覚えていたのです。
……燃え盛る炎を前にして、高笑いを上げていたお姿は少しだけ怖かったのですけどね……。




