間話 その1 見上げる月
いつも、つたない作品をお読みくださいまして、ありがとうございます。
m(_ _)m
この間話は、書籍化作業の中で追加されたものです。
初めて読む方にはネタバレになるので細かく説明はしませんが、後に繋がる話なので、こちらも楽しんでいただけると嬉しいです。
あと、微妙に長い。一話約千文字縛りがこんな序盤で崩れてしまうとは…。(^^;
あっ、間話のナンバリングをずらさなきゃ!
うへぇ、面倒臭いなあ。
数多の真っ白な太い柱が立ち並ぶ広大な広間。
床も、高い天井も一点の曇りもなく白く磨かれ、自ら光り輝いているかのようだ。
そんな荘厳な神殿を思わせる空間に、低く太い声がどこからともなく聞こえてきた。
そして、それに答える人影がひとつ。
『かの娘の魂が見つかったというのか。まことなのか?』
『はい、間違いありません。』
毅然と答える人影は一人の若い男。
白くゆったりとしたトーガを身にまとい、堂々と声に答えている。
『……あれから幾星霜が過ぎたことでしょう。
ようやく戻って来られたのですね……。』
別の場所から、柔らかい女性の声が。
その声はわずかに震え、喜びを隠しきれずにいた。
『あなたにとって一番大切な存在なのですから、今度こそしっかり守ってあげるのですよ?』
『もちろんです、母上。
つきましては、地上に干渉する許可をいただきたい。
なに、本体を降臨させるわけではないのですから、簡単でしょう?』
おどけて言うと、たしなめる声が。
『しかしな。いくら長らく想っていた相手とはいえ、そなたが直接、地上に手を出すのはまずいのではないか?』
『左様。いかにも影響が大き過ぎよう。
とりあえずは見守るだけでも良いじゃろうて。』
『いやいやいや、そんな悠長なこと言ってたら、あっという間に死んでしまうから!
なにせ、彼女は人間に生まれたわけではないし、僕らの眷属になったわけでもない。
最弱といってもいい、弱い魔物に生まれてしまったんだからね。』
焦りからか、男の言葉遣いがだんだんと砕けてきたが、周りの声たちは気にする風でもない。おそらくはいつものことなのだろう。
『弱い魔物って、いったい何に生まれたんだ?』
快活な若い女性の声が尋ねた。
ぶっきらぼうな物言いだが、それが嫌味もなくよく似合っている。
『角うさぎさ。』
『はぁ?』『なんと!』『そんなまさか……。』『…………。』
それぞれ驚きの声が上がった後には、沈黙が広間に満ちた。
静寂を破ったのは艶のある妙齢の女性の声。
『……ホホホ。なんとも可愛らしい魔物に生まれ変わったことでございますね。』
『……角うさぎって、あの角うさぎだよな? ゴブリンと一対一でも勝てるか怪しいやつ。
まあ可愛いっちゃ、可愛いが……。』
『そうさ! ほんのわずかな行き違いで死にかねないからね。僕は自重する気は無いよ。』
その言葉に本気を感じとったのか、最初の声が許しを与えた。
『……よかろう。かの娘が助力を必要したその時には力を貸してやるがいい。だが、化身の降臨は許さぬ。それ以外のことも、ある程度は制限せざるを得ないが。』
『なんでさ! ようやく帰って来てくれたんだよ⁈』
『落ち着きなさい。
あなたが化身を降ろせば、その場所が聖域になってしまうわ。無闇にに聖域を増やすことは許可できません。
それに最弱レベルの魔物に、あなたの自重しない力を注ぎこんだとして耐えられるわけがないでしょう? 自らの手で愛する者の命を断つつもりですか?』
『…………。』
母性を感じさせる声は、柔らかく笑みを含んで続ける。
『まったく干渉するな、とは言いません。
ですが、そなたもしっかりと考えて動かなくてはなりませんよ? そうね……例えば、魔物ならば進化の手助けをするとか、かしら。』
『分かったよ……。でも、次に生まれ変わったとしても、この世界でとは限らない。
彼女に危険が迫った場合、僕は干渉するのを躊躇わないからね。』
『ええ、わたくしもあの娘に再び会えることを楽しみにしています。』
『……では次の議題に移る。』
話し合いが続く中、男は一人想う。
(今度こそは守ってみせるからね……。)
見上げる先には広間の天井があったが、その視線は遥か彼方へと伸び、星々を背景に宙に浮かぶ青い惑星を見据えていた。
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ん?
……なんか視線を感じるような……。
草むらの影に隠れ、魔力視で周りを見るけど、なにも居ないのですよ。おっかしいなぁ。
まあ、居ないなら居ないで別にいいですけどね。危険がないわけですし。
キョロキョロと周囲を見回してから、ふと見上げるとお空にぽっかりお月様が。
昼間の月ですね。満月に近いけどちょっと欠けてるかな?
ほーん。これがこの世界のお月様ですか。
異世界の月だから、地球から見た月とは違って模様も色も違うのです。あと大きさも。
夜に見てみないとハッキリしないですけど、白というよりか白銀っぽいのです?
それにたぶん、地球から見た月よりデカい気がするのですよ。
ファンタジー世界だし、ホントにうさぎとか住んでたりして。
……………………。
…………月が綺麗ですね?
うわぁ! 恥っず! そして臭っ!
わたしは一人(一匹)でいったい何を言ってるんですか!?
今のは無し無し! 記憶から消去するのです!
つい出来心で作ってしまった黒歴史に、わたしは羞恥のあまり、頭を抱えて地面をゴロゴロとのたうち回るのですよ。
……あっ、ついでに土泥迷彩つけとこうっと。




