ベランダからギャルが入ってきてくれたら
夢とはなんなのだろう。漠然とした、しかし、輝く夢には、何か理由がある。バカみたいな夢でも良い。でも、その夢を追うことで、人生が切り開かれていくことがよくある。
いや、むしろ、情けなくて、バカみたいで、ダサいと言われる、誰にも言えない夢だからこそ、内に秘め、大事にしていても良いのではないかと思うこのごろである。
中学生の僕は夢見た。ギャルの子が窓から入ってきて、Hすることを。枕に涙を溢しながら、モテない僕に、救いのギャルが来ないかな、と、寂しい夜にひとり空想に耽っていた。僕は女の子の「お」の字もないほど、女の子に縁がなく、でも、理想は高く、普通の子では嫌だった。クラスの中でひとり浮く、でも、あのカッコイイあのギャルの子が良かった。でも、僕にそんな子に話しかけられる勇気もないし、いつも、女の子からは嫌われものだった。だって、勉強も部活も全然ダメだし、女の子とお話しするのだって恥ずかしい。
次の日、クラスのヤンキー女に絡まれた。終わった。勉強も部活も出来なくて、おまけにヤンキー女に絡まれるなんて。クラスの男たちも、僕を助けるどころか、バカにし始めた。僕の中学生生活に悪夢が訪れるなんて。「消しゴム貸せよ!」とヤンキー女に怒鳴られる。「なんで勉強もしないのに消しゴムなんて貸さなければいけないんですか?」と聞くと、「はー、テメー、あたしたちにメンチきんのか?」怒られ、クラスのみんなからは、「ダサ」と呟く声が聞こえ、僕の中学生生活はとうとう終わりを迎えるのかと、この時は思った。
ヤンキー女に絡まれて、早半年がたった。もう慣れた。僕はまだ身長が低いし、体も小さいから、喧嘩では絶対に勝てない。壁にリンチされ、胸ぐらを掴まれながら嗅ぐ、いい匂い。俯き加減に丁度見える、A、B、C、D。サイズもよくわかるようになった。妄想だけど…。とうとう、女の子からも見向きもされなくなり、男たちからはバカにされ、もういっそのこと、ヤンキー女に絡まれていた方が幸せだ、とすら思うようになった。しかし、このヤンキー女たちも、なんかケバくなったよな。まあ、僕好みの姿になり、僕は悪い気はしないけどさ。匂いも、前より良くなった。まあ、これも悪くはない。
そして、ついにこの日が来た。あのクラスで浮くギャルの子が声をかけて来たのだ。「お前さあ、あんなのに絡まれてんの。マジ、ダッセー。お前、キモいからさあ、これでも喰らえ!」とフェロモンビンタ、パンチラキック、なかなか良い、そして最後に喰らった必殺技が「あたし、彼氏いるから。お前も頑張れよ!」。言葉を失った。帰って、布団を被って、泣いた、泣いた。でも、これでは、終われない。どうせい、もう学校のクズだ。あのギャルの子を、休みの日について行ってみよう。絶対、ものにしてやる。そう決意した。さあ、彼女をゲットするぞ!
休みの日になり、彼女をコッソリついて行ってみた。しかし、追跡は凄く上手く進み、かえって、ここまで具合が良いと怖いくらいだ。彼女の目的地についた。ギャルサーだ。そこには、僕好みのギャルたちがたくさんいた。みんな可愛い。
そこへ、リーダーらしきギャルの子が現れた。スッゲー美人だし、めっちゃ可愛い。胸もFはあるぜ。
しかし、僕にも隙があった。リーダーのスッゲー美人でめっちゃ可愛いギャルの子に睨まれた。他のメンバーがこちらを観ようとしたが、リーダーの指示でパラパラが始まった。ふと、息を吐き、我に帰った。そして、一目散に逃げ、家に帰り、布団を被り、あのスッゲー美人でめっちゃ可愛いギャルの子に興奮して、その日の夜は、熱く悶えた。
その夜、熱く悶えた。あのリーダーのスッゲー美人でめっちゃ可愛いギャルの子の睨んだ目つき。Fはあるあの胸。セーターからふっくら膨らんだあの胸。あのパンチラスカートから想像できる、ぷりっとしたお尻。そして、あの香水と共に香るフェロモン。何もかもが、僕の想像を掻き立て、僕の熱い思いがいっぱいに溢れた。身体中がキュンとして、たぎる思いは、一晩中止まらなかった。
休みが明けて、また、いつものようにヤンキー女に絡まれていた。胸ぐらを掴まれて嗅ぐいい匂いも、俯き加減で見下ろすA、B、C、Dも、何だか調子が乗らなかった。そう、あのリーダーのギャルの子が頭から離れず、僕は絡まれながら、彼女のことをずっと考えていた。僕と同じ中学生ではなく、女子高生だな。あんなに可愛いんだから、彼氏くらいいるんだろうな。すると、「テメー、今日なんなんだよ!調子狂うな!」と胸ぐらをヤンキー女が離した。「今日は許してやっからな」とヤンキー女は言い、今日のリンチはあっさり終わってしまった。何でなんだろう。ふと、我に帰り、そう思った。「テメー、リナさんところに行ったらしいな。お前、アレどんな女か知ってんのか?テメーがリナさんとなんか許さねーからな。噂になってるよ。」僕は一昨日のことがバレていて、ドキッとした。でも、それ以上は何も咎められることはなかった。
来週、また、コッソリとギャルサーに行った。そしたら、丁度よく、隠れるスペースがあった。「リナさんっていうんだ。」心でそう呟いた。そして、ギャルサーがはじまり、パラパラがはじまり、少し遅れてリナさんが現れた。「カッコイイ!」僕の心も踊った。イテテ、ずっと隠れてたから、身体中が痛いや。ギャルサーが終わった。そして、片付けがはじまった。「ヤベー!バレる!」そう思った矢先、「ここはあたしがやっておくから。」リナさんがそう言って、そうこうしているうちに片付けが終わり、解散となった。そして、ここにはリナさんと2人きりになった。「おい、お前何しにきた。」リナさんに声をかけられた。バレていたのか。「お前、うちらを潰しにきたのか?」そう、言われて、2人きりで話しがはじまった。
「うちらはさ、ここにしか居場所がないんだ。お前、うちらのことは潰さないでくれ。ここにしかないんだ。頼む。」早速、お願いをされた。僕はそんなつもりはないことを伝えた。「色々とあってな、うちらはこうなったんだ。いや、ギャルには誇りはあるぜ。でも、本当はうちらが、うちらでいられる場所がほしいんだ。でも、ないんだ。家でも、学校でも。」やっと2人きりで話しが出来たというのに、彼氏いるの?とか、とても聞けないや。なんだか、深刻そうだ。「いや、でも、迷惑なのも仕方ないんだ。うちらが悪いんだ。」「そんなことないよ!」と思わず、声を粗下てしまった。「うち、本当は社長になりたいんだ。本当だったら、もっと勉強すべきなんだよな。」なんだかわからないけれど、僕はリナさんのことがとても愛おしく感じた。「お前、苛められているんだろ。苛められているなら、勉強で見返してやれよ。」そう言われた。2人で、黙りこんでしまった。沈黙の時間がしばらく続いたあと、僕は言った。「僕はリナさんのことが好きですよ。」「お前、ふざけたこと言ってんじゃねーよ。」「僕はギャルのリナさんが好きなんだ。よくわからないけれど、僕の好きなのはギャルのリナさんなんだ。」「そうか、そんな風に思ってくれるのか」また、沈黙の時間がはじまった。
そして、「お前、また来るのか。悪いが、ここにはもう来ないでくれ。その代わり、これを渡す。いつでも、相談しろ。」とその場でペンで書いたリナさんの連絡先を渡された。そして、何もなく、2人はその場を後にした。
やった。あのリナさんの連絡先をゲットした。字が丸くて、これがギャル文字ってやつか。でも、何を相談しよう。しかし、リナさんはいい匂いだった。もう、抱きつきたいくらいだった。彼氏いるのかな。そうだ、今日は親がいなくて、家でひとりだ。家でひとりの時、何したら良いか相談してみようかな。早速、メールアドレスを入力して、「家でひとりで暇な時、どうしたら良いですか?」そうケータイに打って、送信した。すぐに返ってきた。「テメー、暇してる暇あんなら勉強しろ!」と返ってきた。でも、勉強といっても何をして良いかわからない。返信を迷っていた時に、また、メールが届いた。「お前、家どこだ。」迷ったけれど、住所を送った。「今から行く。待ってろ。」しばらくして、リナさんが家についた。原付バイクで飛ばしてきたらしい。玄関を開け、そこにはいつものリナさんがいた。早速、僕の部屋に案内し、入ってもらった。「お前、勉強してる感じがどこにもないな。少しは勉強しろ。お前、布団カバーくらい洗え!くせーぞ。」僕は、家にある麦茶とお菓子を用意した。「悪いなー」そう言って、リナさんは座った。僕はリナさんが向き合うのが恥ずかしかった。一緒に窓を見た。こっちの方が、なんだか落ち着く。しかし、こんなに明るいところでリナさんを見るのははじめてだ。凄く綺麗。沈黙の時間がまたはじまった。前とは違い、心地良かった。リナさんが切り出した。「うち、いや、あたし、勉強しようと思う。会社作って社長になりたいんだ。だから、お前も、勉強しろ。女に苛められているなんて情けないぞ。見返してやれ。」うん。リナさんの言葉に、自然と頷いた自分かいた。また、沈黙がはじまった。勇気をださないと。僕はリナさんに後ろからハグした。「お前、苛められる理由がなんとなくわかった。好きにしていいぞ。」僕はリナさんの胸に手を回した。人間の温もりがした。僕は顔を胸に押し立てた。泣きそうだった。凄く感動した。いい匂い。「胸だけか。お前も脱げ。お前、わかってんだろうな。好きにしろ。」昼間の明るい部屋で、これぞとばかりに愛し合った。はじめての人間の、いや、リナさんの味。今まで惨めだった僕が満たされた気がした。
「僕はベランダからギャルが入ってくるのが夢だった。」「ベランダからは無理だが、また連絡しろ。それからお前、ちゃんと勉強するんだぞ。」その後、リナさんは大学に進学して、僕も高校生になり、今、受験勉強を頑張っている。必ず合格すると約束した。
自分が上手くいかないと思っている時に、実は周りでは様々な出来事が起こっていたりする。上手くいかないと思っているのは自分だけであって、実は勇気を持って行動に出ることで、何かを変えることが出来ることを書いていて、再確認しました。勿論、タイミングというのもあります。しかし、勇気を持って、ジャストタイミングで行動すれば、必ず何かが起こります。それが、奇跡を起こす人間の力なのでしょう。