↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
わたしの異世界奮闘記  作者: 和島 逆
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/98

44.放心

 昼過ぎに、ミズリの街に到着した。


「いよっし、まずは昼メシだな! お前ら、何が食いたい?」


 さも当然のように誘ってくるローガンさんに、なんと言って断るべきか迷ってしまう。角が立たないようにさりげなく、かつ上手に別行動を取るためには……。


「いや、ここで別れよう。俺はユキと二人きりがいい。むしろ他の人間はいらない」


 大真面目な顔で告げるディーンにずっこけた。


 もう少しマシな言い訳はないものか!

 そしてなんか照れちゃうだろ!


「へえぇ。お前ら、やっぱりそういう関係……」


 ニヤつくローガンさんに、真っ赤になって否定した。


「違います! 私たちは別にっ」


「ならメシぐらい一緒に食っても構わないだろ。なあ、お坊っちゃん?」


 ローガンさんの言葉に、セオさんも笑顔で大きく頷いた。


「そうですよ! 昨日の野宿では本当にお世話になりましたし、食事ぐらいご馳走させてください」


 さあさあ!とセオさんに腕を引っ張られる。


 しまった、断りそこねたー!

 隣でディーンが眉根を寄せていた。ごめんてー。


「特に希望がないなら、オレのお勧めの店でいいな。よっしゃ、ついてこい!」


 意気揚々と先導してくれるローガンさんの後に続き、昼を過ぎた時間でも混んでいる店に入った。


「何でも好きなものを注文してくださいね!」


 セオさんの言葉に、一生懸命メニュー表を眺める。今こそ修行の成果を試す時……!


 ……うん、やっぱりよくわかんない。


 例によってパスして、ディーンにお任せした。

 しばらくして運ばれてきた料理に、全員無言になって食べる方に集中する。


 温かい野菜スープがしみるー。お肉挟んだパンもおいしー。

 くうぅ。ほくほくじゃがいもに、溶けたバターが合うわぁ!


 文明のありがたさを感じながら、黙々と平らげる。

 お腹がいっぱいになると、野宿の疲れも吹き飛んだ気がした。


「ごちそうさん。これからオレだけ別行動でも構わねぇか? 黒花の換金がたまっててよ、軍支部に行かねぇと」


 お前らは図書館にでも行っててくれ、と言ってローガンさんは立ち上がる。

 私たちの返事も待たずに、さっさと出て行ってしまった。


「……ね、黒花の換金って何?」


 険しい顔をして見送るディーンをつつくと、こちらに視線を寄こした。


「黒花の核のようなもの……俺たちは『種』と呼んでいるがな。それを持って支部で報酬を受け取るんだ。種の数だけ、黒花を駆除したという証明になるからな」


 ……種?

 私は目をぱちくりさせた。


「以前、俺が黒花を倒した時。花の部分と茎を両断すると、茶色く朽ち果てていただろう? 他の部分が朽ちても、種だけは真っ黒なままでそこに残っているんだ」


 そういえば、黒花を倒した後でディーンは何やら調べているようだった。あれは種を回収していたのか。

 しかし、気になるのは……。


「……種からまた黒花が生えてきたりしないの?」


 怯えながら尋ねると、ディーンは笑ってかぶりを振った。


「それはない。便宜上『種』と呼ばれているだけだ」


 なぁんだ、と安心する。

 持ち運んでる最中に、にょきにょき黒花が生えてくる光景を想像してしまったのだ。そこではたと思い当たる。


 もしかして駆除師が敬遠される理由って、種を持ち歩いているからだったりして……。


 確かめたわけではないが、なんとなく納得してしまう。


「それじゃ、ボクらも行きましょうか~」


 セオさんが立ち上がった。


 お店を出てから、「ごちそうさまでした」とセオさんにお礼を言った。そしてそのままの勢いで別れることにする。


「──じゃっ、私とディーンはこの辺で!」


「ええっ!? 一緒に図書館に行きましょうよぅ! トキメキ体験を共有しましょうよぅ!!」


 私の腕に抱きつき、引き止められた。

 ディーンが無言でばりっと引き離す。すると、セオさんはディーンに矛先を変えた。


「一緒に行きましょうよ~! ひとりじゃ寂しいじゃないですかぁ!!」


 言いながら、ディーンの腰にしがみつく。

 ディーンもぎょっとして引き剥がそうとするが、セオさんは気合いと根性で離れなかった。


「離しませんよー! 一緒に行くって言ってくれるまで離しませんよー!」


 その情熱は一体どこから来るんだ。

 別にひとりで行けばいいじゃん……。


「──わかった! わかったから離してくれ!」


 珍しくディーンが降参した。

 やるな、セオさん。



 ◇



「ジャジャジーン! ここが、かの有名なミズリ図書館でーす!」


「図書館では静かに!!」


 入った瞬間に施設の人から怒られた。

 セオさんはしゅんとする。やっと静かになってくれたか……。


 図書館内は、静謐な空気で満たされていた。

 きょろきょろと見回すと、背の高い本棚がぎっしりと並べられている。その量に圧倒された。


「……お二人は、何か読みたい本はありますか?」


 反省したのか小声で問いかけてくれるセオさんに、私も小さな声でささやき返す。


「私は絵本が読みたいので。ディーンと行くから、セオさんは専門書を読んでていいですよ?」


「いえいえ、ボクも付き合いますとも。最低一週間は滞在するつもりですから、遠慮しないでください」


 いや、別に遠慮しているわけでは。


 セオさんは案内板を確認すると、嬉しげに私たちを絵本コーナーに連れて行ってくれた。ディーンは完全にあきらめた表情をしている。

 セオさんみたいな人、苦手なんだね?


「さあ、ユキコさん! 好きな本を選んでくださいね」


 満面の笑みを浮かべる。


 絵本コーナーにはたくさんの子どもがいるので、大人の私が交じるのはちょっとだけ恥ずかしい。

 とか思っていると、慌てた様子でお母さんらしき人々が寄ってきて、自分の子どもの手を引っつかんで連れて行ってしまった。セオさんをギロリと睨むおまけ付きで。


「……なんか、警戒されてません?」


「ええ、まあ。お年頃ですしね~」


 さして気にした風もなく答える。


 お年頃っていうか、セオさんの風体が怪しいからだと思いますよ……。

 言えない言葉を飲み込むと、気を取り直して本棚を物色した。


 パステルカラーの可愛らしい絵柄に惹かれ、一冊手に取ってパラパラめくってみる。クマの親子が虹色の湖を探しに行くという、ほのぼのした内容の絵本だった。


 読める、読めるぞ……!


 会心の笑みを浮かべる。

 勉強の成果を自慢しようと、得意気にディーンを振り返ろうとしてはっとした。


 ディーンが放心したように、子どもたちの姿を目で追っていたから。その表情は、どこか寂しげで──


「……ディーン?」


 腕をそっとつかんで見上げると、ディーンは驚いたように私を見た。すぐに取り繕ったように笑顔になる。


「良い本があったか? 窓際の席で座って読めるみたいだぞ」


「うん……」


 まだ本を物色しているセオさんは置いて、二人で閲覧席まで移動する。絵本を読みながらちらちらとディーンを見るが、ディーンはぼんやりと窓の外を眺めているだけだった。


 なんだか、胸の中がもやもやする。


 ディーンは……何を考えているんだろう……?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。