61話 聖王
店を出ると、私達はまっすぐ皇宮へと案内された。
近くで改めて見ると、途轍もなく大きな建物だ。
「おっきいねぇ!」
シャルが上を見上げて呟く。
「おっきいわねぇ。」
兵士に案内されて入り口までくると、別の人がやってきて案内を交代した。
「ご足労いただき感謝いたします。
私、執事長を務めておりますラルゴと申します。どうぞお見知り置きを。
聖王様があなた方をお待ちです。
さ、此方へどうぞ。」
丁寧な物腰のラルゴと名乗った男性は、深々と頭を下げて私達を招き入れた。
服装も先ほどの兵士と違って高級そうだ。
ちなみに、昼間から早々と酒を飲んでいた三人は醜態を晒してほしくなかったので置いてきた。
酔った勢いでいらぬ発言をされて、聖王の機嫌を損ねるなんて事があっても嫌だ。
「ダルフを壊滅させたのが貴方の様な可憐な方だとは、露にも思いませんでした。」
「可憐だなんて、お世辞がお上手ですね。」
生まれ変わって始めて言われた気がする。
村にはそんなお世辞を言える様な人はいなかったし・・・。
「聖王様は何故私を?
ダルフの壊滅はそこまで大きな事なんですか?」
「ダルフはかなり手広く悪さをしておりました。
リーダーであるグランの実力は、悔しながら誰もが認めるほどでございます。
十分功績を称えられるに値する活躍でございますよ。」
「そうですか。」
私はシャルの敵討ちのつもりで乗り込んでいたし、クエスト自体は目的が同じだったから受けた程度だ。
そこまでされなくても良かったんだけど。
そんな事を思いながら、シャルの手を引いて宮殿を進んでいく。
しばらく歩くと大きな扉の前にたどり着いた。
入り口から真っ直ぐ進んで辿り着いたそこは、まさしく聖王の居座る謁見の間の様だった。
華やかな装飾に彩られ、金色に輝いている。
執事長のラルゴが扉を開き、中へと入る。
中央に赤い絨毯が綺麗に敷かれ、真っ直ぐ向こうへと伸びている。
その先には一人の男性が椅子に座っていた。
おそらく聖王その人だろう。
流石に世界の知識に疎い私でも名前くらいは知っている。
聖王ウルファ・レイゼルム、聖都アラムの領土を統べる存在。
まさか私がこんな場所に来る事になるなんて。
ほんの半月前には思ってもいなかった。
本当に、色々と変わっていくわね・・・。
私とシャルは案内されて王の鎮座する側まで歩み寄り跪いた。
礼儀とかはよくわかってないんだけど、大体こんな感じで大丈夫かしら?
シャルも私に習って膝をついた。
「頭を上げるがよい。
此度のダルフ壊滅に貢献したその功績、見事であった。
ここにその功績を称える。」
少しの間が空いて聖王はさらに続ける。
「しかし、本当の理由は別にあるのだ。
褒美の品は帰りにでもそこにいるラルゴから渡させよう。」
本当の理由?
厄介ごとは勘弁してもらいたが、一体・・・?
「やぁー、ご足労感謝するよ。
俺が君を呼んだのさ。」
王の後ろから一人の男性が歩いて来た。
外見からすると二十代後半と言ったところだろうか?
王よりも随分と若い、息子?
それにしては謁見の場での態度という者がなっていない。
仮にも目の前に聖王がいると言うのに、やけに軽い口調で入ってきた。
「ウルファ、面倒かけたな。
あとの事は俺がやるから、お前は下がってくれ。」
「はっ、アラファルト様。」
聖王は立ち上がり、やってきた男に頭を下げて椅子を譲って退席していった。
一体何者!?
聖王その人があんな態度を取るなんて。
チラリと後ろに控えていたラルゴを見たが、表情一つ変えずに佇んでいる。
「驚いた?驚いたよね?
聖王が頭を下げてるんだもん、ちょっと気になっちゃったでしょ?」
アラファルトと呼ばれた男は椅子に腰掛けてヘラヘラと笑う。
ちょっとどころの話じゃなく驚いてます。
最近驚き慣れて来たと思ってたけど、それでもこんな事は想定していない。
「別に緊張しなくてもいいし、何なら敬語も不要だよ。
俺はそう言うのは性に合わないからな。
別に悪魔の手先ってわけじゃないぜ?」
アラファルトは肩肘をついて足を組み、変わらない口調で続けた。
「では、貴方は何なんですか?」
「俺はアラファルト・レイゼルム。」
男は立ち上がって此方を見下ろした。
レイゼルム?聖王と同じだ。
やはり王家の一族か。
そして男の胸のあたりから一つの光が飛び出して来た。
その光は人間大に膨らみ、やがて人影が現れた。
「紹介しよう、彼は火の精霊王ラヴァ。」




