59話 悲劇の終幕
精霊・・・?
闇の精霊の様にも見えるが、何だか雰囲気が違う。
なんだか嫌な感じだ。
「やっぱり、悪魔憑きだったのね。」
リューネが納得したような顔で頷いた。
「悪魔憑き?あれは悪魔なの?」
「ええ、最上位の中級悪魔のようね。
悪魔と契約すると、どうなるかわかる?」
悪魔と契約?
確か前に聞いたような・・・。
・・・・!
「マイナスのエネルギーが許容値を超えると、自分を保てなくなる。」
「正解。」
そう言う事か。
ここ数年で力を得たというのは悪魔との契約のおかげ。
何となく繋がってくる。
グランの使っていた魔法は悪魔の力によるものだったのか。
「それに、おそらく核石も大量に取り込んでいるようね。」
リューネがグランを見つめて話す。
核石と悪魔によるマイナスエネルギーの増加、それによる人格崩壊。
悪魔と契約したのがいつなのかはわからないが、シャルがテグナムに逃れたのは一年前だったはず。
それも父親が殺された事が原因だ。
少なくとも力をつけた後の出来事のように思える。
「まあ悪魔と契約してる時点で精神的に追い込まれてたわね。
悪魔は憎悪や悲しみの感情に惹かれてやって来るから。」
チラリとシャルを見たが、怯えた顔をして悪魔を見つめている。
グランを連れてきた時も緊張していたが今ほどでは無かった。
「悪魔を払えば少しはまともになるの?」
「多少は変わるんじゃ無いかしら?」
とは言った物の、悪魔ってどうやって払えばいいの?
『嫌な感じがすると思ったら、低俗な悪魔がいるじゃないですか。』
スッとわたしからレムが飛び出してきた。
普段あまり出てこないのに。
『げっ!?精霊のクソ野郎じゃねぇか。』
悪魔がレムを睨みつける。
「珍しいわね、自分から出てくるなんて。」
『何やら魂がざわつく様な気配がしたので、気になって出てきたんです。
我々精霊、特に光を司る精霊は悪魔と反発し合うので。』
相変わらずの真面目さんな雰囲気。
もっと笑顔を作った方が可愛いと思うんだけど。
それはそうと、
「反発って、どういう事?」
精霊と悪魔は正と負のエネルギー同士だから仲が悪いってこと?
『なんと言うか、絶対に相容れない関係ですかね。
見ただけで憎悪の対象となるほどです。
忌々しい・・・。
ミレリアは何も感じませんか?』
見ただけで憎悪の対象になるって相当ね。
さっき悪魔を初めて目にした時に、嫌だと感じたのはその所為か?
私も精霊化しているからだろう。
グランと対峙した時、あそこまで怒りの感情が出てきたのもその所為だったのかな?
「なんとなく、わかったかも。
レムはあの悪魔の払い方とか、倒し方ってわかる?
話しの感じ、今にも逃げそうなのよね。」
『私は光の精霊ですよ?
あの様な雑魚、今すぐ葬って差し上げます!』
レムは眉を寄せて悪魔を睨みつけた。
『まずはあの男から引き剥がします。
ミレリアも魔法は覚えておいてください。
【救済ノ光】』
レムが発言すると、グランと悪魔が同時に光に包まれて行く。
『くそっ!』
悪魔は光の中を飛び回った。
光は次第に二つに分かれて、グランを包んでいた光が消えた。
悪魔は光に囚われた様にその中を飛び回っている。
『そしてこれで終わりです。
【断罪ノ光】」
悪魔の頭上に巨大な雷の槍が出現した。
槍は光を放ったかと思うと、悪魔を一瞬にして貫いており、槍の残した光の軌跡には悪魔の影も形も残っていない。
一瞬の出来事だった。
『スッキリしました。
私はこれにて。』
「あ、ありがとう。」
レムはアッサリと私の中へ帰っていった。
しかしレムのおかげで悩んでいた悪魔対峙もなんとかなった。
「さて、改めて話をしましょうか。」
グランに目線を写して話しかける。
「お、俺は・・・フォクシズが憎かった。」
あら?さっきと違って喋り始めたわ。
「なぜ憎むの?命を狙うほどに・・・。」
「始めは殺すつもりなんて無かったさ、ただ奴らの強さが気に食わなかっただけだ。」
それからグランは人が変わった様に質問に答えた。
フォクシズに対する劣等感を抱いていた彼は悪魔との契約により魔法とスキルを獲得した。
悪魔と契約した事で核石の吸収も可能となり、大量に吸収したそうだ。
シャルのお父さん、クリストを超える力を手にした事で彼を手にかけた。
この頃には既に自制心は無かったそうだ。
それから組織を拡大してながらフォクシズの絶滅を謳い、クリストの娘であるシャルに追っ手を差し向けたそうだ。
負の感情に飲まれていたとはいえ、もともとの責任は本人にある。
理由を聞いても弁明する余地などなかった。
「本当に、すまなかった。」
一通り喋り終えると、グランはシャルへ頭を下げた。
今までの行動を考えると、本音かどうか疑う所だが、それはなんとなく本心からの言葉だと感じた。
「いや!絶対に許さない!」
シャルは話を聞き、泣きながらもグランの謝罪を受け入れようとはしなかった。
父を殺されたのだ、私も許せるとは思っていない。
「それは当然だろう、だから俺は、俺の罪を受け入れる。
連れていってくれ。」
グランは協会の人たちに顔を上げて、縛られた両手を前に差し出した。
グランは連行され、ダルフのメンバーはその殆どが集まっていた協会の人たちに捕まった。
それを見届けながら、シャルは私に抱き付き顔を埋めて泣いた。
今まで抑えていたのだろう声を張り上げて。
私はそんなシャルを抱きしめる。
でもこれで、起こり得た悲劇は減った筈だ。




