57話 初めての屈辱
「フォクシズだと?」
ボスと呼ばれた男が低い声を上げた。
恐らくあの男がグラン。
ダルフを纏める者だ。
「クリストの娘だと思うが、協会に入っていくのを見かけたらしい。
人間の仲間を連れていたそうだ。」
「何、まだ死んでなかったのか!?」
別の仲間が口を挟む。
「リンケル、てめぇ殺したんじゃなかったのか?」
グランがその男を睨みつけた。
リンケルは慌てて椅子から降りて床に伏し、頭を下げてグランに弁明する。
「すいやせん!
最後まで確認すべきでした。
すぐに探し出して殺してきやす!!」
グランは黙ってリンケルへと近づき手を伸ばした。
いつの間にかグランの手にナイフが出現した。
リンケルの髪を引っ張り上げてナイフを顔に近づける。
「わかってんな、次はねぇぞ?」
「はいっ!」
顔を強張らせてリンケルは頷いた。
他の仲間たちはその様子を平然と見ている。
話から、あのリンケルって亜人がサクタスの村でシャルを追いやったに違いない。
クリストとはシャルの父親のことか?
その辺は後で聞いてみればいい。
この話を聞いているだけで話し合いの解決は無理だと思うし、しようとも思えない。
今潰しておかなくては、シャルが安心して過ごすことが出来ない。
同じような被害者も増えるだろう。
「レイルはそこにいて。」
レイルに呟くと、私は魔法を発現した。
「【影ノ支配者】」
黒い影が放たれて亜人たちに巻きついて拘束する。
「なんだ!?」
亜人たちは突如襲いかかった攻撃にその場に転げた。
だが、グランだけは今の攻撃を交わしたようだ。
クラスS相当と言うだけはある。
素早い動きで影を交わす。
「【集】」
グランが何かの魔法を発現すると、グランを追っていた影は一箇所に固まってしまった。
「【散】」
さらに魔法を発現すると、影は消えて無くなった。
何をしたのかわからないが、やはり只者ではいようだ。
「誰だ!何処にいる!?」
何処にいると聞かれてノコノコと出て行くわけが無いじゃない。
まぁ、魔力や物理攻撃が通用しない状態だから出ても大丈夫だと思うけど。
捕らえるまで念には念を入れよう。
「そこか!【魔弾】!」
グランから魔力の塊がマシンガンの様に私へ向かって撃ち込まれた。
「隠れても匂いでわかるんだよ!」
亜人ではあるが獣の様な嗅覚も備えていると言う事だろうか?
魔力の弾丸は私に通用しなかったが、場所はわかる様だ。
隠れる意味も少なくなったわね。
「【氷結ノ海波】」
発現と同時にグランの身体が凍りつく。
前に【狩人の祭】で使ってみた広範囲攻撃だが、範囲を絞れば魔力の消費も少なかった。
「なんだと!?」
首から下の殆どが凍りつき、グランは身動きが取れなくなった。
「【散】・・・・。
くそ、何故効かない!?
【解】!【破】!・・・。
なんでだ!」
先ほどの様に魔法を消し去ろうとしているのか?
しかし上手くいっていないようだ。
これなら姿を出しても問題なさそうだ。
レイルはそのままに隠蔽魔法を解除して、グランの前に姿を現した。
「貴方達の組織は、今日で終わらせてもらうわ。」
「なっ!?お前の様な小娘の仕業だったか!
てめぇ、タダで済むと思うなよ!」
身動きのとれない体で何を勇んでいるのか。
もう勝負は決している。
「この状態で何が出来るの?
私に攻撃は効かないわよ。」
「なら食いやがれ!
【魔弾】!【爆】!【斬】!!」
私の周囲が爆発し、魔力の弾丸と斬撃が襲いかかってきた。
しかしそれらは【不可侵領域】によって全て無効化された。
「何故だ!?」
グランはそれを受け入れられず叫ぶ。
周りの仲間は影に口まで覆われており喋る事も出来ない状態だ。
誰の助けもない。
「無駄だって言ったでしょ?
さ、大人しく捕まりなさい。」
「黙れ!これならどうだ!
《強奪》!!!」
私の言葉を聞かずにグランは再び叫ぶ。
無駄なのに。
すると固まっているグランの足元に大きな布が出現した。
見たことのある色合いだ。
「ミレリア、マントが!」
待機していたレイルが痺れを切らして叫んだ。
マント?
言われてふと身体をみると、羽織っていたマントが無くなっている。
「なんで!?」
【不可侵領域】を発現しているのに!?
「スキルは効く様だな!
《強奪》!《強奪》!!」
グランは立て続けにスキルを放った。
私が身につけている装備が次々にグランの足元に移動していく。
そして白い上着が地面に落ちた。
「え?」
自分の装備を確認する。
「えぇぇぇぇぇ!!!!!」
いつのまにかズボンと下着だけになってしまっていた。
何も通用しないと思って完全に油断していた。
まさかこんな屈辱を受けるなんて・・・。
「やめてぇぇぇぇぇぇ!!!」
「いい眺めだな!屈辱を味あわせてやる!!
《強奪》!!!」
ズボンまで剥がされてしまい、もうどうしようも無くなった。
身体を隠してしゃがみこむ。
「これ以上はダメェェェェ!!!
レイルも見るなぁ!!!!」
不味い!肉体的なダメージはないが精神的にこれ以上は本当に不味い!
「これで仕上げだ!」
「【火衣】!!!!」
「《強奪》!」
スキル発動前に私の魔法が発現し、体を炎の衣が包み込む。
私の怒りを体現するが如く、赤と青の炎が揺らめいていた。
グランのスキルは発動せず、これ以上衣服を剥ぎ取られる事はなかった。
「よくもやってくれたわね・・・。」
「なに!炎を纏うだと!?
《強奪》が効かない!?」
「そのスキルも万能じゃ無い見たいね。
例えば、目に見えてる物しか盗めないとか?」
「ぐっ・・・・・・。」
グランは冷や汗を流しながら歯ぎしりした。
体を固められてスキルも封じられ、成すすべがなくなったのならそれも無理はない。
「もう謝ってもゆるさないわよ。
覚悟しなさい!!」




