55話 クエスト受注依頼
「恐れ入った。俺もまだまだ未熟だったと痛感したよ。」
レイルに意識が失った後の出来事等を聞き終えて、マリウスが頭を下げてきた。
戦闘中に全く攻撃が通用しなかった事や、やられる寸前までの事は覚えているようで、潔く負けを受け入れてくれた。
「まさかあれ程の魔法を使えるとは思っても見なかった。
そして、俺は戦ってみてわかった事がある。」
「わかったこと?」
私はそもそもあまり動いてはいないのだけど。
何かあったかな?
「君の堂々たる態度、そして強さに俺は興奮した!
どうやら俺は君のことを好きになってしまったようだ。
俺と結婚してくれ!!」
「はぃ!?」
え、何?
今告白された!?
いやいやいやいや、会っていきなり告白してくるとか絶対無理なんですけど。
「考えてくれないだろうか?」
マリウスは真剣な眼差しで此方を見つめている。
「お前、何言ってんだよ!?」
レイルも驚いた様で、マリウスの肩を摑みかかる。
「君は、彼女の恋人か何かか?」
真剣な表情のままでレイルに問う。
「いや、そういうわけじゃないけど・・・。」
声を小さくしながら目を逸らし、レイルは黙り込むんだ。
レイル、弱いわね〜。
勇のか引くのかはっきりしなさいよ。
ほんとに押しが弱いんだら。
でもまぁ、それがレイルらしいと言うか何と言うか。
「なら、これは俺と彼女の問題だ。
俺は結婚を前提に「お断りします!」」
マリウスが皆まで言う前に話を終わらせる。
変な期待を抱かれても嫌だし、何より全くそんな気持ちは無い。
「そんなこと言わ「無理です。」」
「考え「嫌です!!」」
しつこい。
モジモジされるのも嫌だが、あまりグイグイ来られると余計に嫌だ。
駆け引きとかしないの!?ってなる。
まぁ、駆け引きされても無理なものは無理なんだけどね。
マリウスは私に悉く拒絶されて肩を落として息を吐いた。
「わかった、今日のところはこれ以上はやめておくよ。
でも、俺は君を諦めないよ!」
負けに関しては潔かったのに、しつこいわね。
「お姉ちゃんモテモテ。」
シャルは無邪気に笑っている。
ホントにこの子は悪気のない素直な子だ。
ませて無いって素晴らしいわね。
シャルにはこのまま上手に大人になってほしいものだ。
「とにかく、その話はお終い!
約束通り、ダルフに着いての情報を知ってるだけ教えてもらうからね。
あと、豪華なディナーも忘れずに。
そっちの紅髮のお姉さんは怒ると何するかわからないわよ。」
折角戦ったのだから、貰うものはしっかりと貰っておかないと損だ。
お金は持っているとはいえ節約できるならそれに越した事はないし。
「わかってるさ。
なんなら今ここで話そう。
ダルフについては協会も調査をしているところでね。
つい先日、ようやくアジトを突き止めたところだ。
しかし、ダルフのリーダーや幹部の実力が不確定要素が多過ぎて協会側も迂闊に手を出せていない現状にある。
リーダーはウルフィ種のグランと言うそうだ。
ある筋の情報ではグランはクラスSに相当する実力を持っているそうだ。
君たちは、何故ダルフの情報が欲しいんだ?」
何故かを詳しく説明する必要は無いだろうが、隠す理由も無いわね。
「理由は報復ですね。
ダルフのメンバーと思われる連中が、この子の命を危険に晒したんで、落とし前をつけて貰う為に探してるんです。」
簡潔だがこれが全てだ。
他に理由はない。
「そうか、つまり君はダルフの敵と言うわけだ。
それなら丁度いい、協会として君にクエストの受注をお願いしたい。」
「クエストですか?」
マリウスは大きく頷く。
「あぁ、ダルフの壊滅。
これがクエストの内容だ。
本来ならクラスA以上の者を多人数投入する予定だったが、君ほどの実力があれば我々としても是非お願いしたい。
君の思いとは一致しないかな?」
クラスA以上の者を多人数投入か、普通に考えればかなり規模の大きいクエストだ。
ダルフのリーダーがクラスS相当との情報もあるらしいし、未知数の敵に対しては妥当なんだろう。
クロイツ支部長がクラスS自体が数える程しかいないと言っていたが、それは協会が把握している人数だ。
世界にどれほどの実力者がいるかはわからない。
相手の出方次第ではクエストの内容もついでにこなす事は出来るし、おそらく壊滅にまで追い込む事になるとは予想している。
引き受けておいても悪くはないが・・・。
「ちなみに、そのクエストの期限と報酬。
それから、未達成だった場合のペナルティは?」
「クエストの期限とペナルティは無い。
ただ、早い方が助かりはする。
報酬は白金貨10枚だ。」
白金貨10枚ってなかなかの額ね。
ペナルティも無いなら受けるだけ受けておこうか?
「結果がどうなるかわからないけど、もし向こうが敵対するようなら壊滅させる。
そのクエスト、受注するわ。」
「そうか、助かるよ。
それなら、これを持って協会の依頼受付まで行って手続きを行ってくれ。
そんなに時間はかからない。」
そう言って、ビー玉程の小さな水晶を私に手渡した。
「これは?」
「俺からの紹介だという証明と、受注するクエストの内容が記録されている。
それを渡せばクエストとして正式に受け付けられるんだ。」
水晶ってそんな使い方もできるのか。
やっぱり便利だな。
「正直、君に目を付けられたダルフが可哀想にさえ思えてくるよ。
俺では全く敵う気がしなかった。」
マリウスは苦笑いを浮かべた後、私に感謝を述べてその場を立ち去った。
なんでも夕食の手配をするそうだ。
ダルフのアジト等、詳しい情報は受付で受け取れるようにしておくとの事。
この後クエストを受注してから夕食に備えた。
夜の席ではリューネが猛威を奮った事は言うまでもないが、私はマリウスにまた言い寄られて散々だった。




