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52話 類稀なる嗅覚

 時は少し遡る。


「アラフェルト、面白い奴がここ聖都に入った様だぞ。」


 一人の男がある一室で呟いた。

 男は揺らめく炎を身にまといながら椅子に腰掛けている。

 不思議な事に、その炎が触れた場所は燃えるこなく、炎は暖かな淡い光を放つのみであった。

 

「ほう、お前がそんな事を言うなんて初めてだな。

 強いのか?」

 

 アラフェルトと呼ばれた男が、部屋の隅にある本棚を見つめながら紅茶を手に答える。

 

「あぁ、お前より確実に上だ。

 だが我らに敵対はせぬだろう。

 あの者が一緒に着いておるしな。」

 

 炎を纏った男は淡々と述べると立ち上がった。

 

「ラヴァよ、お前と契約した私より強いと申すか?」

 

 アラフェルトは信じられないと言った顔で振り返ってラヴァを見た。

 

「アレは人知を超えているよ、少なくとも此方から手を出すべきではない。」

 

 ラヴァはそれだけ言って、小さな光の球となってアラフェルトの方へと飛び上がった。

 光の玉はアラフェルトの中へと入って消え、部屋にはアラフェルト一人が残った。

 

「信じられん・・・が、あやつの事だ、嘘は言っていないだろう。

 面白い、直に拝んでやろうじゃないか。」

 

 アラフェルトは一人残された部屋で、紅茶啜って本を一冊棚から取り出した。

 



 

 

 

 聖都アラムにある協会本部の二階。

 マリウスは真剣な表情で此方を見て、決闘を申し込んできた。

 二十代の後半といった容姿に、重厚な鎧を身に着けている。

 背中には大きな両手剣を背負っていた。


 大体、何故理由もなく見ず知らずの人と戦わなければならないのか。

 

 クロイツ支部長もそうだったが、協会の人間は皆こうも好戦的なのだろうか。

 

 しかしクラスSの人物がどんなスキルを持っているのかは気になる。

 下手に強い所為で危機感が無くなっている気もするが、別に戦うことが好きなわけではない。

 出来るなら断りたいが。

 

「私に戦う理由がないんですけど?」

 

 眉を寄せて嫌そうな顔をつくってみる。

 なんとか引いてもらえないだろうか。

 

「いや、君は実力を持っている。

 理由はそれだけで十分じゃないか。」

 

 マリウスは拳を握って熱弁したが、何を言っているのか意味がわからない。

 

 いやいや、どんな理屈やねん。

 意味わからんわ。

 

「じゃあ、私はこれで。」

 

 お辞儀をしてその場を立ち去ろうとしたが、マリウスに手を取られて拒まれた。

  

「頼む!勝っても負けても、今晩最高級のディナーをご馳走させてもらう!!」

 

 マリウスは頭を深々と下げてえらく必死だ。

 食べ物で釣られると思ってるんだろうか?

 物で釣られるのはリューネくらいだと思うけど。

 

 リューネなら酒で幾らでも釣れそうな気がする。

 そんな事を思っていたからだろうか。

 

「それは、勿論お酒も付くんでしょうね?」

 

 リューネの声が聞こえた気がした。

 あぁ、幻聴が聞こえるほど私も疲れてるみたいね。

 

 と、思いたかったのだが


「勿論だとも!」

 

 マリウスが答える。

 幻聴が他人に聞こえるはずもない。

 私は恐る恐る振り返ると、リューネとヴェラがそこに立っていた。

 

「なんでここにいるのよ!?」

 

 確か二人は宿でお酒を飲みながらまったりするとか言っていたはずだ。

 何故このタイミングで出てくるんだ!?

 

「美味しいお酒の匂いがしたのよ、私を甘く見ないでね?」

 

 何故どこか誇らしげなんだ?

 何もカッコよくないし、そもそもどんな嗅覚してんのよこの人は!

 

「私は関係ないじゃない!」

 

「やだわミレリア、仲間のためにも頑張ってよぉ。

 貴方なら大丈夫だから。」

 

 仲間のためって、自分のお酒のためだろう。

 

「そうだぞ、リュー姐の為に頑張れ!」

 

 ヴェラもリューネに続く。

 この女、最近リュー姐、リュー姐って、いつからリューネの舎弟みたくなったのよ。

 

「この通りだ!」

 

 マリウスも暑苦しく手を握って離そうとしない。

 あぁ、どうせまた根負けして引き受けちゃうパターンなんだろうな。

 

 まぁ、戦ったとしても簡単に負けるつもりはないけど。

 なんかもっとこう、違う見返りが欲しい。

 

「お姉ちゃん。」

 

 シャルが少し不安そうに私の裾をぎゅっと握りしめた。

 

 そんなシャルを見て気づいた。

 協会の人であればダルフに着いても有力な情報を持っているかもしれない。

 

 それなら、情報と引き換えに勝負を受けるのもいいかもしれない。

 何より、断った後のリューネとヴェラの対応が面倒臭そうだ。

 

「そうですね、ダルフという組織についての情報を持っていれば、その申し出受けてもいいですよ。」

 

「おい、ミレリア。」


 レイルが心配そうに見ているが、実際戦うこと事態は問題ないだろう。

 今必要なのは情報だ。

 

「ダルフ!?」


 マリウスは顔を上げて小さく驚き、周りを見渡した。

 この反応から何か知っていそうだ。

 

「わかった、決闘してくれるのであれば教えよう。

 ただ、今はダメだ。」

  

 急に小声になって私に聞こえる程度の声で話し出した。

 人に聞かれてはまずい内容なのだろうか?

 裏の組織というだけあって、やはり機密事項なんかもあるのかもしれない。

 

「それなら、夕食の時にでも聞くとするわ。」

 

 私はマリウスの申し出を了承した。

 そのままマリウスに案内されて協会内の裏手にあるコロシアムへと案内された。

 入り口は封鎖され、私達以外の人間は入ってこれないようだ。


 どうやらコロシアムでは定期的に武闘会などが開催されているようで、都度内装が変わるらしい。

 今は前回行った武闘会場のままになっており、中は荒野のバトルフィールドになっている様だった。


 地面には砂が敷き詰められ、ゴツゴツとした岩が置かれている。

 私は仲間を観客席に見送った後、コロシアムのバトルフィールドへと入場した。

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