50話 温泉天国
アラムへと到着した私たちは、暑さによる疲労からまっすぐ宿へと向かった。
「ほんと暑いわぁ。
この暑さでみんなよく外を歩いていられるわね。」
私は宿へ入ると汗ばんだ身体で床に寝転んだ。
「今はアハラで一番暑い季節だから仕方ないって。
でも、この暑さもそのうち慣れるわよ。」
ヴェラが上から覗き込んで言った。
「そうだ、汗を掻いちゃったし、みんなでお風呂に行かない?
確かこの辺りの宿にはぬる目のお風呂があったはずよ。」
と言うヴェラの提案で、私達は大浴場に入る事になった。
レイルはこの暑さの中もう一汗掻いてくるそうだ。
「おっ風呂っ♪おっ風呂っ♪おっきなおっ風呂っ♪」
シャルは歌いながらスキップで進んでいる。
よっぽど大浴場が楽しみなようで、ヴェラにどんな物か聞くと大興奮で入浴の準備をしていた。
長い廊下を進んでいくと、大浴場と書かれた大きな看板が立てられていた。
看板のとなりに大きめの扉があり。
女湯と書かれている。
日本の銭湯を思い出すが、入り口の雰囲気はまるで違った。
中へ入ると広い脱衣所があった。
床は大理石の様な素材でできており、冷んやりとして気持ちがいい。
浴室への出入り口付近には水捌けの良さそうなマットが敷かれている。
壁側には石でできた長いベンチがあり、横に【保冷岩】と書かれている。
「保冷岩って書いてあるけど、あの椅子冷たいの?」
ヴェラへ聞いてみる。
「あぁ、そうよ。
冷気を蓄えて、冷たくなった岩で出来てるのよ。
お風呂で火照った身体を冷ますには最高よ。」
なんとも便利な物があったもんだ。
せっかくなので座ってみる。
「あ、冷た過ぎずで気持ちいかも。」
お風呂ではなく、外気ですでに火照っていた身体を冷ますにも最高だった。
「私お風呂じゃなくてここに座ってるだけでいいかも。」
「私も座るー!
あ、ホントだ。
冷たくて気持ちい〜。」
座ると言いながらシャルは私の横に寝そべった。
「でも!」
突然叫んで起き上がり、私を見た。
「お風呂はいるよー!」
シャルに引っ張られて椅子から立ち上がる。
よっぽどお風呂に入りたいようだ。
「ミレリアも一緒に入るわよぉ。
旅の疲れを癒さなきゃ。」
リューネはそう言って一人浴室へ入っていった。
いつの間にか服を脱いでいた様だが、全くタオルで身体を隠す事なく堂々と入っていく。
「あ、リュー姐一人で行かないでよ!
私も!」
ヴェラも服をそそくさと脱ぎ、タオルを肩に担いで駆けて行った。
二人とも自分の身体に自信があるのか、羞恥心と言うものを持ち合わせていないのか・・・。
というか、そもそも私はこの世界で大浴場になど入ったことがない。
あれがここのスタイルなんだろうか?
「お姉ちゃん行かないの?」
いつの間にかシャルも服を脱いで浴室へ向かうところだった。
「今行く。先に入ってて!」
浴室へ駆け込んでいくシャルを見届けてから服を脱ぎ、タオルで髪をまとめる。
どうしようか迷ったが、結局身体にもタオルを巻きつけて浴室へと入った。
そこは石畳が敷き詰められ、とても広々としていた。
高い天井に大理石の様に艶のある壁、真ん中に一際大きな浴槽があり、その左右にそれよりも少し小さい浴槽が並んでいた。
浴槽は石造りで、まさしく温泉と言う雰囲気を漂わせる。
横を見ると、シャルが身体を洗っていた。
その奥でリューネとヴェラも身体を流していた。
乾燥した外の空気の所為か、使われているお湯の成分の所為なのかわからないが、立ち込める湯気がやけに多い。
別に前が見えないと言うわけではないが、離れているリューネやヴェラの身体を上手に湯気が隠している。
シャルの隣に座って汗を流す。
「凄く広いわね。この雰囲気はなんだか落ち着くわ。」
洗い場を見ると、親切なことにシャンプーや石鹸もしっかりと置いてあった。
せっかくなので纏めた髪を一旦ほどき、頭からお湯を被る。
使わせて頂きます。
「私は先に使っちゃうよー!」
シャルはさっさと身体を洗って浴槽へ向かって行った。
「走らないの!転けるわよ。」
そんな私の声も虚しくシャルは濡れた床で滑ってこけた。
「いたたた・・・。」
「ほら、言ったそばから。
気をつけなさいよ。」
お尻をさすりながら起きがり、シャルは返事をして浴槽へ歩いて向かった。
それを見守って、髪を洗うためシャンプーを手に取る。
後ろからドボーンと言う音が聞こえた。
おそらくシャルが飛び込んだんだろう。
どうやら時間も早いため、私達以外の客はいない様だから大目にみようか。
「冷たーい!!!」
後ろから聞こえた声に驚いて振り返ると、浴槽に入ったと思ったシャルがお湯から這い出してきた。
もしかして、と思ったが身体を流し終わったヴェラがシャルに向かっていった。
「何やってんの。
そこは水風呂よ?
入る前に手で温度を確認しなかったの?」
やはり水風呂だったのか、湯気でよく見えないが各浴槽の横に看板が掛けてある。
おそらく温泉について書いてあるんだろうが、シャルはまったく見ずに入った様だ。
私も身体を流して浴槽へ向かう。
看板を読んでみたが、どうやら真ん中の湯船が通常の温度。
触ってみると若干熱めのお湯だった。
その横に35度程度のぬるま湯と、反対側に水風呂が設置してある様だった。
汗を掻くが、せっかくならぜんぶ浸かりたい。
リューネ皆んなが入っている真ん中の湯船に入った。
「お、やっと来たわね。」
ヴェラが大の字で浮かんでいる。
大きなメロンを二つ浮かべて、ぷかぷか漂っている。
「あんたはもう少し慎みをもったほうがいいと思うわよ?」
「見られて恥ずかしいもんでもないしー。
でも、リュー姐は凄いわよ。」
そう言われてリューネの方を見た。
確かに凄い。
ヴェラよりも大きな物を湯船に浮かばせている。
何が凄いって、堂々と湯酒を楽しんでいるところだ。
「もうどうしようもないわね。」
「あー、昼間っから温泉に酒って、最高よねぇ。」
お酒の味を楽しんでいる様だ。
「ねぇ、リュー姐はどれくらいなの?
私Eなんだけど、私より絶対大きいわよね?」
バシャバシャと泳いでヴェラはリューネに近寄っていく。
「ん?これの話かしら?」
リューネは自分の胸を両手で持ち上げる。
ヴェラってEもあるのね、デカすぎやろ。
自分の胸と見比べて少し肩を落とした。
「Gくらいだったかしらねぇ。」
そう言って、グイッとコップに入ったお酒を飲み干す。
肩凝りそー!
大きすぎて逆に大変そうなんですけど。
リューネはいつも鎧姿だから、あまり胸の大きさが分かりにくいのよね。
でも、マジマジと見るとほんとデカイわ。
「あら〜、ミレリアのは見た目通り可愛いわね。
小ぶりなのも十分魅力的よぉ?」
リューネはニヤリと笑って、私に抱きついて胸を鷲掴みにした。
「ちょ、やめてよ!
なんで揉むのよ!!」
人の気にしている話題に入らないでほしい。
それにあんたらみたいな化け物と比べないでほしいわ。
「私もおっきくなるかなぁ。」
シャルもつられて膨らみかけの胸を見て呟いた。
「貴方は十分可愛いわよぉ!」
リューネを振りほどいてシャルに抱きつき水しぶきを上げる。
それがかかったヴェラとリューネが負けじとお湯をかけてくる。
そんな遣り取りを繰り返し、しばらくお風呂場は彼女たちのお湯掛け合戦の戦場と化したのだった。




