49話 暑さに負けず
「お姉ちゃんどうしたの?」
私は自分のステータスを見て、叫びたい気持ちをグッと堪えていたがシャルは何かを感じ取った様だった。
「何でもないわよ。
レベルが凄く上がっててびっくりしただけ。」
誤魔化しながら思ったが、ステータスは次から誰もいない場所で確認しよう。
「幾つになってたんだ?」
レイルは興味深かそうに質問する。
「48だった。」
レイルには申し訳ないけど、レベルまで抜いちゃった。
「あれだけ魔物を倒してたもんな、簡単に抜かれるよな・・・。」
レイルは肩を落としながらもその事実を受け入れる。
しかし、これで一つはっきりしたわね。
馬車の運転がすんなり出来た事。
意識してなかったけど、絶対スキルの所為よね?
そもそもリューネに促されて私がする事になったわけだが、恐らくこうなるって知ってたわね。
値だけ見ればそんなに強いスキルではないけと、普通の人からすれば有用なスキルだろう。
実際使い所さえあれば腐る事はない。
旅に有効なスキルが獲得できた事を素直に喜ぶべきなんだろうか・・・?
「お待たせしました。
追加のパンケーキです。」
モヤモヤとした気持ちになっていた所に、食後に頼んだパンケーキがやってきた。
生クリームと蜂蜜がたっぷりと乗った、シンプルかつ魅力的な一品だ。
「これですよコレ!美味しそう。
いただきます!!」
三人揃ってパンケーキを頂いた。
「美味しい!」
やっぱり食べるって幸せよね。
「あまーい!」
シャルもつられて声を上げる。
ほっぺたを抑えて喜んでいた。
「冒険の自炊も良いけど、店でのデザート付きの食事もやっぱり捨てがたいな。」
レイルも噛みしめる様にパンケーキを頬張っている。
それから雑談を交えて食事を終え、私たちはリューネとヴェラの下へと帰ったのだが、キャビンの中には酔い潰れたヴェラが転がっており、リューネはご機嫌そうにお酒を飲んでいた。
「あら、帰ったのね〜。
こっちも楽しくやりあげたわよ。」
キャビンの中は既にお酒の匂いが充満している。
これはしばらくキャビンは使わない方が良さそうだ。
レイルには荷台に篭ってもらおう。
「楽しく盛り上がったならよかったわ。
キャビンの換気をするから、しばらくお酒は控えてよ?」
もう攻め立てるだけ無駄であることは承知している。
好きなようにやらせるしかないのだ。
「は〜い。じゃあ、お姉さんも少し寝ちゃおっかな。
レイルは私たちに襲いかかったりしないでなね。
ヴェラったら無防備だからお姉さん心配だわ。」
リューネにからかわれてレイルは顔を赤くした。
「な、そんな事しないですよ!
俺は荷台で稽古をしてますから。
ゆっくり休んでて下さい!」
そう言って自分から荷台へと入っていった。
「リューネ、シャルも居るんだから変なからかい方しないでよ。」
まったくこの人は、子供の前で何を言いはじめるのやら。
「襲われる?」
「シャルは気にしなくていいのよ。」
そして改めて、私たちは聖都アラムへと向かった。
旅は何事もなく順調に進み、二日後の昼前にはアラムへ到着した。
流石7聖都の一つと言うだけあってアラムは広大だった。
アラムに近づくにつれて、中央あたりに大きな建物が見えた。
ヴェラ曰く、アラムの皇宮との事だった。
遠目に見たかぎり、インドの宮殿の様なつくりをしている様だった。
火の精霊王が住まうとされるだけあって暑い。
まさしく赤道に近い国々の様な乾いた暑さに包まれている。
「それにしても一気に気温が上がったわね。
暑いわ・・・。」
日本の夏の様なジメジメした暑さではないが、ザスタイルに比べて一気に上がった気温に体が付いていかない。
「お姉ちゃん、喉乾いたよぉ。」
水筒を取り出してシャルに渡す。
「そうだ。いいこと思いついた!」
魔法で冷やせばいいのよ。
そう思って水魔法を思い浮かべて発言する。
「【霧雨】。」
細かい霧状の水が私たちの周りに降り注ぐ。
これで涼しくなるはずよね。
途端に霧は気化して消え失せ、濛々とした空気に包まれた。
乾いた空気は一気に水分を含み、ジメジメとした暑さに変わったのだ。
「お姉ちゃん、もっと暑くなってきたよ・・・?」
シャルが項垂れる。
「ミレリア、急に暑くなってきたぞ!?何かあったか?」
レイルもキャビンから顔を出した。
アラムまで目と鼻の先にある場所は、一時の間異様な暑さに包まれたのだった。
「ごめん、無駄な事しちゃったみたい・・・。」
考えなく魔法を使った事に反省する。
炎天下で水撒きなんかしたら、そりゃ湿度は一気に増すわよね・・・。
もう少し考えて魔法を使わなくちゃね。
暑さに負けそうになる気持ちを押さえ込みながら、私たちは聖都アラムへと足を踏み入れた。




