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3話 変わりゆく世界

 スキルを手に入れてから5日が経ったのだが、特に不幸な事が起こったりはしなかった。

 だが、世界の変化について感じる事はいくつかあった。


 それはスキルを手に入れた翌日のこと。

 私はレイルに誘われて剣術の稽古をしていた。


「なぁミレリア、お前って今レベルいくつなの?」


「ん?今はレベル7だったと思うわよ?」


 不意に質問されて、何となく当たり前のように答えた。


「相変わらず普通だなぁ。俺はこの前20になったぞ。」


 レイルは気分の悪くなるようなドヤ顔で自慢してきて、私は顔をしかめた。


 しかしなんだろう?レベルの事をさも当たり前のように話しているし、この前ってどういうことだ?


「この前っていつ?」 


 とりあえず聞いてみる。

 昨日新たに追加されたステータスなのに、この前という表現はおかしい。


「んー、5日くらい前だったんじゃないかな?」


 5日前!?そんなはずはない、だって昨日の朝までは少なくともそんな項目はなかったのだから。


「1つ聞きたいんだけど、レベルって項目はいつからあったかしら?」


「いつからって、最初からあっただろ。

 お前最近までステータスの確認をしたことがなかったのか?」


 不思議そうにレイルは此方を見つめる。

 不思議なのは此方も同じなのだが・・・。


 新たな項目を受け入れたのではなく、元からあった事になっている様だ。

 世界の変化とは、元からこの世界にあるすべてのものに影響を与えているということか?

 新たに書き加えられた理や概念を肯定させて、さも当然のこととして世界に順応させているかの様だ。


 そして、世界へその波紋を生んだ要因である私は、その影響から外れている?

 あとで他の人にも聞いて確認してみることにしよう。


 ステータスの項目が追加されたにもかかわらず、協会なんかも特段騒ぎ立てたりする様子は見受けられないし、村はいつもと変わらず穏やかだ。

 何となくだが、そういった認識で間違っていないような気がする。


 そう考えてみると何故か納得してしまうのだけど、なんて都合のいい事だろう。

 まぁ大きな変化ご起こる度に人々が混乱して、世界中が騒がしくなったりするよりは良いのかもしれないけど。


「ステータスなんてそんなにしょっちゅう確認しないわよ、誕生日の時にするくらいだし。」

 

 レイルにも適当に胡魔化しておく。


 レイルは「そんなものなのか」と納得したようで、ステータスについてはそれ以上触れることはなかった。


 その日はそれ以外で特に変わった事は起こらなかったが、翌日以降は日を追う毎に新しい変化があった。


 まず、山から大きな影が飛び出すのを見たという村人がいた。

 それを聞いた人々は、山に住んでいる竜が長い眠りから目覚めたのだと騒ぎ立てた。

 今まで竜が住む山なんて事は聞いた事がないし、お伽話にもそういった存在について語られたものは無かった。


 次の日にはクラスの評価基準が変わっていたが、これも人々は当たり前と言った感じだった。


 一昨日は何もなかったが、昨日はステータスに魔法の項目が追加されていた。

 魔法自体は元々存在するのでそこまで不思議に思わなかったのだが、話を聞いているとどうやら魔法の理が変化しているのがわかった。


 魔法を使用するプロセスが大きく変わっていたのだ。

 前に魔法について教わった内容だと、まず身体を巡る魔力に意識を集中し、魔法による事象をイメージしながら言葉に乗せて発する事で発現させるというものだった。

 事象をイメージして言葉にするという部分が呪文の詠唱にあたるのだが、発動するための条件が変わっていた。


 変わってしまった内容はと言うと、魔法を使うためには精霊の加護が必要で、精霊と契約をすることで魔法を行使出来るそうだ。

 精霊は万物に宿っていて、目には見えないらしい。

 色々なものに触れて、見て、感じることで精霊との繋がりが出来るんだとか。

 契約のやり方は簡単。

 六芒星を描いて、その中心で目を閉じ精霊に語りかけることで契約の儀式を行うことができるらしい。

 この時、繋がりを作っていた精霊が応じてくれると、契約することが出来る。


 なんと言うか、変化が劇的で付いて行けなくなりそうになる。


 神さまが異世界からの転生を拒んでいたわけだ。

 作られた世界がこんなにも変貌していくなんて、その心境は私では計り知れない。

 この変化はいつまで続いていくんだろうか…

 



 今日は人目につかない場所にこっそり隠れて、契約の儀式を行ってみた。

 教えてもらったとおりに六芒星を地面に描き、目を閉じて語りかけるように唱える。

 せっかくなので、ここ数日使わなかった幸運を使ってみることにした。


⦅我、この身を悠久の糧として汝らの力を求める。契約の元、物質に宿るその理を切除しこの身に顕現せよ。⦆


 日本人気質の所為だろうか、言っててものすごく恥ずかしい!

 誰かの前でやっても、当たり前と認識されていれば何も思われないのはずなのだが。

 とにかく恥ずかしい。


 唱え終えると、周囲からザワザワと話し声が聞こえ始めた。


『ねぇどうする?』

『私は・・・力を貸してあげようかな・・・。』

『私もー。』

『・・・・・俺も。』


 ん?これって精霊の声?

 でも精霊って目には見えないのよね?

 あ、この契約の儀式によって声だけは聞こえるのかも?

 新たな出会いの予感に心臓が脈打つのがわかる。

 興奮する気持ちに我慢ができず、そっと目を開いてみた。


 フッと白い光で視界が覆われて、トンネルから抜け出た時のように目が眩む。

 一瞬目を閉じて、改めて見渡す。

 そこには真っ白な風景の中に、色の違うの8つの光が浮かんでいた。

 赤、青、緑、黄、茶、白、黒、紫と、それぞれが淡い光を放っている。

 よくみると、光の中心に影が見える。

 さらに目を凝らして見ると、それらは人の形をしている。

 大きさは小指大で、それぞれ幼い顔つきをしている。

 まさしくファンタジー。

 呆気にとられながらそれらを見つめていると、紫の光を放っていた一人が此方に近づいてきて首を傾げた。


『もしかして君、僕らのこと見えてる?』


「えっ?あ…うん。」


 私も驚いて、それ以上の言葉がでなかった。


『へー、君面白いね。普通の人間は僕らのことなんて見えないはずだけど。』


 そう言って此方をジロジロと見詰めてくる。

 この紫、すごい顔が近いんですけど!

 やっぱりこの子達が精霊なんだろうか?想像通りで物凄く納得できる。


『うん、面白うだ。君に力を貸してあげるよ。』


 紫の精霊がそう言うと、それに続いて他の全員も私に力を貸してくれると宣言した。


 どうやら契約を交わしてくれる様だ。


「ありがとう。それから、よろしくね。」


 彼らは浮かび上がり、光の玉となって私の中へ入るように消えていった。

 その後視界が暗転したかと思うと、元いた場所の光景に戻った。


 今の出来事も、幸運が力を出してくれていたのだろうか?

 普通は見えないって言っていたし。

 身体の感覚は別に普段と何も変わらなかった。


 だが、後で確認したステータスを見て、ハッキリとした変化を感じ取った。


―――――――――――――――――――――

(ミレリア=ファレノイア)

年齢:16歳

性別:女

クラス:SS

レベル:7

称号:運を呼ぶ者、精霊王

体力:108

精神力:4,649

魔力:237,108

攻撃力:52

防御力:58

習得魔法:火(80,000)水(80,000)、木(80,000)、風(80,000)、地(80,000)、光(100,000)、闇(100,000)、時(100,000)

スキル:幸運(フォーチュン)(150,000)

潜在スキル:寝坊(0)、運呼(777,666)

総合:1,869,641

――――――――――――――――――――


 なんかもう驚きを通り過ぎて呆れてしまう。

 たった数日でどうしてこんなことになってしまったのだろう。

 称号にクラス、習得魔法に総合値。

 ツッコミどころしかないじゃない。

 内容としてはすごく嬉しい。


 でもそれ以上に、怖い………。

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