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47話 手綱を取る者

 馬車の中、一人で酒盛りをしているリューネ。


「どこに行ったのかと思えば、なに一人で昼間っから始めてんのよ・・・。」


 なんか何時もの事になりつつあるが、世界を見守る者が聞いて呆れる。

 それに私の監視をする気が本当にあるんだろうか?

 

 お酒を飲むために山を出る口実を作っただけなんじゃ・・・?

 

「あら、遅かったわねぇ。

 仲間も増えたんでしょ?

 さ、盛大にやりましょう!」

 

 手に持つ酒瓶とグラスを高らかと掲げた。

 

「いいね!

 こんな昼間っから宴だなんて、今までは考えられないわ。

 是非やるわよ!」

 

 ヴェラがリューネの前に駆け寄り手をとった。

 まさかのタッグが完成してしまった。

 

「お、お嬢様!?」

 

 ほら、執事の人が戸惑ってる。

 

「今日から私はお嬢様ではなく、冒険者として生きていくの。

 言葉も態度もそれ相応に改めるわ。

 今まで世話になったわね。」

 

 なんかこれを機会に変わったみたいに聞こえるが、なんとも都合のいい纏め方だろうか。

 まぁ、私は別に構わないけど。

 

 だが飲んだくれが増えるのは別。

 馬車が酒臭いとか絶対酔うから!

 

「貴方とは気が合いそうね。」

 

「よろしく頼むよ!」

 

 リューネとヴェラは硬い握手を結んでいる。


 飲むのは荷台でさせよう。

 座席ではお断りだ。

 

「さあ、みんな行くわよ!」

 

 ヴェラの号令で全員馬車へと乗り込んだ。

 

「あれ、馬車の手綱は誰が握るの?」

 

「ん?私は無理よ。」

 

 ヴェラが手を挙げる。

 

「馬は乗れるが馬車は初めてだな。」

 

 レイルが続く。

 

「私もやった事ないよ。」

 

 シャルは仕方がないよね。

  

「あら、お姉さんもできないわよぉ。」

 

 うん、酔ってるしね。

 

 そして全員の視線が私に集まった。

 私が出来るわけないじゃない!

 

「無理よ!」

 

 これ、馬車無意味なんじゃないだろうか・・・。

 

「お姉さんにはわかってるわ。

 ミレリアちゃんなら出来るって事。」

 

 ウインクしたってやった事ない物は無理だろう。

 私も万能じゃないんだけど。

 

「いやいや、無理よ。」

 

「出来るわよぉ。

 ねぇ、焦らさないで早くしてぇ〜。」

 

「変な声出すな!」

 

 酔っ払いって面倒くさいわぁ。

 

「リューネが面倒くさいから、とりあえずやるだけやってみるわ。」

 

 馬車から降りて控えていた執事の人に簡単に説明を受け御者席に腰掛ける。

 

 なんで私が御者をしなきゃ行けないのよ。

 

「お姉ちゃんが外に座るなら、私も一緒に座るー。」

 

 シャルも降りてきて、私の横に腰かけた。

 

「貴方はなんていい子なの!?」

 

 思わず抱きしめる。

 

「よーし、出発よ!

 下手でも文句言わないでよね!!」

 

 そう言って馬車を動かした。

 

 思ったよりも簡単に馬車は進む。

 馬もしっかりと調教されているのだろうか、ゆっくりとしたペースで走り始めた。

 

 舗装された街道は揺れが少なく、日差しを浴びて座る御者席は思ったよりも快適だった。

 雨が降れば雨よけも設置できるようになっているし、席には柔らかい敷物までしてある。

 

 酒臭そうなキャビンより、こっちでシャルといる方がいいわね。

 私が後ろに乗る前には、走り始めてすぐに乾杯を交わした二人を荷台に追いやるとしよう。

 

「ね、思った通り貴方なら出来るじゃない。」

 

 リューネが顔を出して言う。

 

「おかげさまで思ったより簡単だったわ。

 でも、全員に覚えてもらって交代制で行くわよ。」

 

 装備屋に注文した物はまだ直ぐには出来ないし、今のうちに聖都アラムへ向かってしまおう。

 

 出来た頃に魔法で移動して取りに行けばいいのだし。

 

 ただ、その前に一つ調べておかなければならい。

 シャルを追ってきた者たちについてだ。

 こんなに直ぐに出発になるとは考えてもいなかったので、全く情報を集めていなかった。


「ヴェラ、一つ聞きたいんだけど。」

 

 キャビンに聞こえるように声を上げる。

 

「なぁに?」

 

 御者席の方へヴェラがニュッと顔を出した。

 そのまま窓の隙間から這い出して隣へと座る。

 

「貴方器用なことするわね。」

 

 たしかに窓は大きく開くようになっていたが、別に通路ではない。

 わざわざ隣に来なくてもよかったんだけど。

 

 ヴェラを見ると、顔を赤くして目が座っている。

  

「ちょっと、貴方今飲み始めたばっかりじゃないの?

 なんでそんなに酔ってんのよ!」

 

「えぇ、まだ酔ってないわよぉ。

 へへへ。

 それよりぃ、話ってなぁにぃ?ふふっ。」

 

 完全に目がイっちゃってる。

 飲めないなら飲むなよ!


「亜人がいる組織って知らないかしら?

 ウルフィ種がいるらしいんだけど。」

 

 街の北門付近まで来たが、一旦止馬車を止める。


「ウルフィ種がいる亜人の組織?

 私はわかんないわよ〜、そう言うのはガネットが詳しいわねぇ」


 初めからガネットに聞いとけば良かった。

 

「ちょっと情報収集だけしてくる!

 みんなはここで待ってて。」



 

 ヴェラとリューネの事をレイルに任せ、三人を残してガネットの元へ向かった。

 シャルは私と行きたいと言うので連れてきたのだ。

 

 ガネットが今どこにいるかわからないが、とりあえずさっきまでいたヴェラの邸宅へと向かう。

 

 魔法でガネットの目の前に移動するなんて事は出来なかった。

 わたしが場所を感知できる何らかのマーキングをしておけば出来そうな気はするのだけど、それはまた別の機会に試してみる事にした。

 

 いきなり中に現れると不味いので邸宅の外に移動する。

 

 使いの人へ確認したところ、ガネットはまだ邸宅内にいるようだった。

 

 取り次いで貰うようにお願いし、庭でガネットを待った。

 

「お待たせ致しました。

 何か忘れ物でしょうか?」

 

 ガネットが早足でやってきた。

 

「いえ、ちょっと調べ物があって。

 ガネットさんが知っていれば教えて欲しいんですが。」

 

 私は事情を説明して、亜人のいる組織について知っている事がないか尋ねた。

 

「なるほど、恐らくウルフィ種を中心に構成されたダルフという組織ですね。

 闇市など裏取引について手広く手掛けていると聞いております。

 なんでもフォクシズに対して強い敵対心を抱いているとか。」

 

 ヴェラの言った通り、ガネットから情報を得ることができた。

 なんでも聖都アラムに拠点を置いているらしい。

 それ以上の情報はなかったが、行き先は明確になったし、組織の名前も覚えた。

 

 話を聞いていたシャルは複雑な表情をしているが、前のように怯えている様子ではなかった。

 

「大丈夫よ。

 シャルは私が守ってあげるから。」

 

「うん、ありがとう!」

 

 ガネットにお礼を言って、レイルたちの所へ戻った。

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