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45話 父として

 ヴェラが部屋に来る前に、その人はやってきた。

 

 産業都市ザスタイルの領主ジェイス=フローレス公爵。

 ヴェラが旅立つことを認めさせる相手だ。

 

 だが、私達だけでどうしろと?

 肝心のヴェラ本人は未だに姿を見せていない。

 

「ヴェラのお友達なんだって?

 娘をよろしく頼むね!」

  

 いつお友達になったかわからないが、そう言う設定なのか?

 

「初めまして。

 ミレリア=ファレノイアと申します。」

 

 椅子から立ち上がり礼を返す。

 

「いやいや、畏まらなくて結構。

 冒険者である君たちにそう言うのは窮屈だろう。

 普段通りにしてくれたまえ。」

 

 すごく気の良さそうな人だが相手が相手だ、そう言うわけにもいくまい。

 普段通りは難しいな・・・。

 

「お気遣いありがとうございます。

 ところでお嬢さんは?」

 

 公爵は私の対面に置かれた椅子に座った。

 

「今娘は身支度中だ。

 私もこう見えて多忙でね。

 なかなか話をする時間もないので、娘には悪かったが早々と話を進めさせてもらった。」

 

 公爵はそう言って手を叩いた。

 

 すると白い仮面をした人物が公爵の後ろへと現れて跪いた。


 どこから出てきたのよ!?

 

「彼は私の側近でね。

 主に情報収集をしてもらってるんだ。

 今回の要件も既に承知している。

 君たちも試させて貰ったが、実力は申し分なかったのでね。

 娘にも家を出る許可を与えたんだ。」

 

 こんな隠密なんて本当にいるのね。

 なるほど、全部筒抜けだったわけだ。

 

 でも、私達っていつ試されたの?

 

「君たちにも大変失礼な事をした。

 待たせている間に仕掛けさせた攻撃が、全く通用しないとは恐れ入ったよ。」

 

 ん?

 私達攻撃されてたの?

 

 ふと周りを見渡す。

 ふむふむ、なるほど。

 

 後ろの床や壁にクナイや針みたいな物が突き刺さっている。


 

 怖いわよ!!

 


 練習がてら【時空結果・身】(オーラゲート)を使ってなかったら大惨事じゃないのよ!

 

「こう言う事は少なくとも怪我をしない範囲でして欲しいわ!

 もしこの子を傷付けてたらこの屋敷ごと吹っ飛ばしてたわよ!」

 

 とりあえず、気付いてたけど無視してたテイで行こう。

 シャルは何の事か全くわからずに戸惑っている。


「はっはっは、そうならなくて良かったよ。

 しかし娘の身を任せる此方の身にもなってくれ。

 何処の馬の骨とも知らない輩に簡単に預けられると思うかい?」

 

 公爵は調子を崩す事なく続ける。

 

 確かにそれは分かるけど、ここまでする?

 普通の冒険者ならどうなっていた事か。

 

「まあ、君なら問題ないと判断したわけさ。

 それに、非礼を心からお詫びする。

 殺すつもりは毛頭なかったが、大変申し訳なかった。

 だから、屋敷ごと吹っ飛ばすのは無しにしてくれ。」

 

 冗談を織り交ぜてはいるが、真面目な顔で謝罪された。

 

 くぅー。

 しっかり此方を認めて信頼を寄せられ、謝るところはしっかり謝られちゃったら公爵なんて人相手にこれ以上怒れないじゃない。

 

「此方も被害はないので、何もしませんよ。

 でも、他にもやり方はあったと思いますけどね。」

 

「君の寛大さに感謝するよ。

 時間も惜しいものでね、怪我も最終的にはしっかり治療するつもりだったさ。」

 

 公爵は胸に手を当てて軽く頭を下げた。

 

「はぁ。

 しかし、そんなに簡単に家を出る事を許していいんですか?」

 

 公爵の娘が旅に出るなんて、そんなに簡単に許されるものなんだろうか?

 

「君たちの様な人が一緒なら構わないさ。

 実は私も、昔は親の反対を押し切って家を飛び出したもんでね。

 娘のワガママとは言えとやかく言える立場じゃないのさ。」

 

「そうですか。」

 

 なんだかよくわからないが、ややこしい話にならずに済んだ様だ。

 実害はないが、やり方は好きになれないけど・・・。

 

 

「と言うことは、私達はヴェラの身支度を待ってればいいんですか。」

 

「そうだね。

 不束な娘だが、よろしく頼むよ。

 これは君たちと娘への支援と、無礼を働いた謝罪の代わりだ。

 受け取ってほしい。」

 

 扉から一人の執事の様な人が現れて、私の前のテーブルに袋を置いた。

 

「金は入り用だろう。

 娘が散財するとこまるが、君が管理してやってくれ。

 白金貨50枚ほど入れてある。」

 

 その金額を聞いて私達は三人まとめて目を見開いた。

 

 白金貨50枚って、そんなにほいほい渡せる額じゃないわよ!?

 

「流石に多すぎじゃないでしょうか・・・?」


 大金すぎて逆に受け取り難い。

 

「いやいや、多くて困る事はない。

 無理に使えとは言わないから、必要なだけ使うといい。」


 そこまで言うなら、せっかくだし貰っておこう。

 不要なら使わずに返せばいいだけだ。

 しかしなんとも気前のいい親だろう。



「さて、私もあまり長々と話をする時間がない。

 申し訳ないがそろそろ席を外させてもらうよ。」

 

 公爵は立ち上がり私を見る。


「重ねてになるが、娘をよろしく頼むよ。」

 

「わかりました。」


 私の答えを聞くと、公爵は部屋を出て行ってしまった。


 

 あれほどの側近が控えているのだ。

おそらく娘の性格も近況もしっかり把握している事だろう。

 親として娘を守りたいと言う気持ちはよく分かった。

 

 ヴェラが旅に加わることはあまり乗り気ではないが、ここまで来たらもう成り行きに身を任せよう。

 

 随分と人数が増えたわね。

 でも、なる様にしてみるしかないか。


 私の座右の銘は"今日も一日何とかなる"だもの。


 どんなに辛くて嫌な日でも、その日その時は過ぎていき、いつのまにか受け入れる時が来る。

 そんな時間は案外あっけなく終わっていく。

 どうせダメなら受け入れて、別の楽しい事を考えて過ごす方が気持ちは楽だ。


 なんだかんだで何とかなるもんよ。

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