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44話 ジェイス=フローレス

 武器と防具の注文をして、私達は装備屋を後にした。

 

 外で待機してくれていたガネットと合流し、ヴェラの元へと向かう。

 

 リューネはまだ帰って来ていない。

 

 どうせ高級なお酒やおつまみを散策しているんだろう。

 彼女ならほっといても問題ないだろうし、あとでひょっこり現れそうだ。

 

 そのまま放っておいてヴェラの元へ向かう事にした。

 

 シャルは新しく手に入れたレイピアを嬉しそうに腰に付けた。

  

 専用のベルトをラプラに用意してもったが、バックルに花の模様をあしらった可愛らしいベルトだった。

 

 だが、身長の低いシャルでは腰にさしたレイピアは地面スレスレだった。

 

「やっぱりちょっと長すぎるんじゃない?それ。」

 

 そう言うとシャルはレイピアを抜いてみせた。

 

「大丈夫だよ!ほら、ちゃんと出し入れできるよ!」

 

 レイピアはベルトから簡単に外せるようになっており、抜刀する際は鞘ごと取り外して簡単に行うことが出来る様だ。

 

 ラプラが教えてくれたが、このレイピアは【雪月花】と言う銘が付けられているらしい。

 

 名前の通りの姿と美しさだ。

 実際私も羨ましく思う程の一振りだ。

 

「ま、貴方が気に入ってるならいいわ。」

 

 嬉しそうに笑っているシャルが可愛らしい。

 これだけ喜んでくれたら十分だ。

 

 

 

 馬車に乗って十分程で公爵家の屋敷へとたどり着いた。

 

「こちらが公爵沙様の邸宅になります。

 ご案内致しますので、此方へどうぞ。」

 

 ガネットの案内で公爵家へと足を踏み入れる。

 

 この都市を統治している公爵の邸宅というだけあってかなり広い。

 

 おそらく都市の中心に建てられているその場所は、周辺に所狭しと建ち並んだ建物とは訳が違う。

 

 こんな場所にもかかわらず大きく取られた敷地には、綺麗に手入れをされた広漠たる庭が設けられている。

 

 私たちは大きな邸宅の一室へと案内された。

  

 昨夜食事をした場所もそうだが、こう言った高級な場所へ来るのは生まれて初めてである。

 

 メルトクロードのあの商人の屋敷とはえらい違いだ。

 

 あの時は商人の屋敷ですら贅沢さを感じたが、公爵ともなると隅々まで統率された気品を感じる。

 途中見かけたメイドや執事の様な人たちも、商人のところにいた柄の悪い連中とは訳が違った。

 

 レイルとシャルには大人しく成り行きを見守るように言ってある。

 どんな話になるのかわからないが、まぁ一悶着くらいはありそうだから、私の幸運で切りぬけようと思う。

 

 

 ヴェラを待ちながら、出された紅茶を頂いた。

 オータムナルの様な深いオレンジ色をしており、程よい甘みと滑らかな舌触りが口の中に広がる。

 

「美味しい。飲みやすいわ。」

 

 転生前はアールグレイが好きだったが、ダージリン様なこの独特な風味は中々に美味しい。

 似たような植物があるのだろう。

 

 異世界でもこう言う物を味わえるのはやはり面白い。

 

「うぅ、美味しくない・・・。」

 

「貴方にはちょっと早かったかもね。」

 

 シャルも私に続いて紅茶を飲み、予想していなかったであろう味に舌を出している。

 

 子供だと飲みにくいかもね。

 

「俺もなんというか、あまり得意じゃないな。」

 

 レイルもシャルに続く。

 確かに少なからず渋みはあるので、苦手な人も中にはいるだろう。

 

 私は結構好きなんだけど。

 

「しかし、ミレリアはなんでそんなに落ち着いてるんだ?

 俺はメチャクチャ緊張してるんだが。」

 

 レイルは落ち着きなくあたりを見回している。

 

 客室は豪華に彩られており、中央に水晶を埋め込まれた大きなシャンデリア。

 

 天井も高く椅子やテーブルに使われている物も全てが高級そうだ。

 

 私が落ち着いてるのは何が起きても何とかなると思ってるから。

 幸運使ってるしね。

 

 しかし、考えてみると確かに気を抜き過ぎな気もする。

 これから先いつ誰に狙われるかもわからない。

 幸運が発動しない場合もあるかもしれないわけで、少しは危機感を持っていた方がいいのかも。

  

 待ち時間も退屈だし、練習がてら魔法を使おうかな。

 

【時空結果・身】(オーラゲート)

 

 私は呟くように魔法を発現した。

 

「ん?」


「なんでもないよ。

 私が落ち着いてるのはみんなが居るからよ。

 一人よりも心強いわ。」

 

 レイルが私の方を向いたが気を逸らすせる。

 私は【時空結果・身】(オーラゲート)を二人にも纏わせた。

 これ魔法の便利なところは、触ると認識した物以外がすり抜ける事だ。

 

 これなら不意な奇襲が起きても大丈夫!

 これを意識して発現させておけば、全員の危険をかなり少なく出来るはずだ。

 

 しかし、思ったよりも他人に使うには魔力を消費するみたいだ。

 自分に使う倍くらいの魔力を使ったと思う。

 

 魔力量が多い私なら特に問題は無さそうだけどね。

 一度発現させればかなりの時間を維持できるし。

 発現後に追加で魔力を取られたりはしない。

 

 しかし、物理的な攻撃はいいが魔法攻撃に対してどこまで耐えられるのかは分からない。

 

 今後検証する必要がありそうね。

 

 それから待つ事15分、ようやく部屋の扉が開いた。

 

「大変お待たせいたしました。」

 

 ガネットが扉を開けて部屋の入り口でお辞儀をする。

 ヴェラを連れてきたようだ。

 

 コツコツと足音を鳴らしながら近づいてくる。

 

 扉の向こうからヴェラではなく男性が入ってきた。

 

「初めまして。

 私はこの家の主人、ジェイス=フローレスだ。」

 

 ハッキリとした口調と、堂々たる態度でその人は現れた。

 

 家の主人ってことは、ヴェラの父である公爵その人か。

 前置きなくやってきたなぁ。

 

 ヴェラはどこへ行ったんだ?

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