41話 武器の声
チャクラムを棚へ戻して扉を閉めた。
「な、魔法だけじゃねぇのか!?
なんて力を持ってやがるんだ、チャクラムであの首を切り落とすなんて・・・。
それにどう言う原理で手に戻ってくるんだよ・・・。」
親父さんは驚きながら納得できない様子で首を振った。
「手に戻すのは魔法を使ってるけど、詳しいところは秘密って事にしといください。
あと、鉄球も今みたいに投げて使うつもり。
石とかで試してみたけど、当たると砕けて衝撃も逃げちゃうの。
だからある程度投げやすくて、頑丈な物が欲しいわ。」
私の思いは伝えられたと思う。
あとは作ってくれるかが問題なんだけど。
「俺は勘違いしてたよ、嬢ちゃんの動きを俺は目で追えてなかった。
剣でも普通に扱えそうだな。」
あれ、さっきまでど態度が全然違うぞ?
「あのチャクラムであれだけの威力を見せられちゃあ俺も腕がなるってもんだ。
今までチャクラムを本気で作った事がねぇから時間はかかるだろうが、きっちり作ってやるよ!
あと鉄球ってのも作ってやる。
お前の戦い方を見てみたい。」
急に掌を返して親父さんはやる気を見せてくれた。
実力を認めてくれたようで良かった。
「さっきは悪かったな。
武器の事を考え過ぎて、お前の短剣の声に耳を傾けてやる事もしなかった。
武器は持ち手をちゃんと見てるってことだな。」
親父さんは申し訳なさそうに軽く頭を下げた。
「武器の声?」
黙って見ていたレイルが口を開いた。
レイルの言う通り、親父さんは短剣の声と言った。
武器の声が聞こえる?
「あぁ、俺には武器の声が聞こえるんだ。
最初は何なのか分からず戸惑ってたが、スキルのお陰で武器の声が聞こえてると分かったときは喜んだもんさ。
それで、どう使われてるのかお前たちの武器が教えてくれたのさ。」
「そんなスキルがあるのか・・・。」
そう言ってレイルは腕を組んだ。
武器の声が聞こえるなんて、何だかロマンチックだ。
武器職人ならではだろうか。
しかしこれで納得がいく。
私の武器の使い方を知っていたわけだ。
「それで武器の使い方がわかったのね。」
親父さんは頷き、私たちの方へ歩いてくる。
「そうだ。
あの武器が教えてくれたから知ってたんだ。
だが、あの短剣は嬢ちゃんを悪く言ってなかった。
大切にされてるってな。
俺がその使い方を気に入らなかったから武器の声を無視したんだ。」
親父さんはレイルの下まで歩み寄った。
「お前の武器はお前と離れたくないと言っていた。
昔からの仲なんだろ?
手放す必要はねぇ、俺があいつを鍛え直してやる。」
レイルは目を大きく開いて親父さんを見る。
「本当か!?
ありがとう。俺もあの剣を手離したくは無かったんだ。」
親父さんは仏頂面の口元を少し上げてレイルを見た。
そしてシャルの方へと振り向いて言う。
「亜人のお嬢ちゃんにはあの短剣じゃダメだ。
回数は少ないみたいが、そこの嬢ちゃんみたいな使い方をしてたらそもそも剣の意味がねぇ。
普通に使うにしてもリーチが短過ぎて戦闘では話にならん。」
親父さんの迫力に負けて、シャルが少し泣きそうになる。
「親父さん、もう少し優しく話しをしてあげてよ。」
私はシャルの頭を抱きしめて親父さんを睨みつけた。
「あ、あぁ・・・すまん、少し興奮してしまった。
お嬢ちゃんすまんな。
安心しろ、別の武器を選んでやるから。」
子供の扱いに慣れていないのか、シャルの様子にあたふたしている。
可笑しな人だけだ、別に悪い人ではなさそうね。
少なくとも武器に対しての愛情は十分に伝わってきたわ。
親父さんに武器を売ってもらえることになり、私たちは一旦店の方へと戻った。
「まずは亜人のお嬢ちゃんから武器を選んでやろう。
他の二人はこれから作る事になるからとりあえず後回しだ。」
そう言って親父さんは武器の並べられた店内を歩き回る。
シャルを見ながら合うものを探してくれているようだ。
「これなんてどうだ?」
親父さんが持ち出したのは一本のレイピアだった。
レイピアは細い刀身を持つ、突く事を主とした片手剣だ。
突きが主体ではあるが、両刃が付いており切る事も可能だ。
柄から刀身に至るまで美しい白銀色をしており、手の甲を覆う湾曲した金属板が取り付けてある。
その湾曲した金属板から刀身の反対側へ向かって鍔が伸びる。
鍔は刀身の方向へ湾曲しており、横から見ると丸で三日月の様だった。
更に柄頭には綺麗な花の模様が刻まれている。
「すごく綺麗!」
シャルがレイピアを眺める。
「このレイピアは通常のものより少し軽く仕上げてある。
レイピアは見た目よりも重量があるからな。
だがこいつの重量は普通のレイピアの半分くらいだ。
リーチが少し長めだから慣れるまでは苦労すると思うが、攻撃の速さやリーチは他の剣よりも上だ。」
「持ってみてもいい?」
シャルはレイピアに興味を持ったようだった。
親父さんからレイピアを受け取り、間近で眺めている。
「本当に軽い!
お姉ちゃん、私これがいい!」
輝く目で私を見詰めている。
私はこの子がいいのならそれでいい。
「わかったわ。
親父さん、これをこの子にください。」
親父さんは頷いて、レイピアをシャルから受け取り鞘に収めた。
鞘は全体を漆黒に染められ、鯉口の周りを刀身と同じ白銀色の金属で装飾されている。
その少し下の方に、柄頭と同じ花の模様が小さく取り付けてあった。
親父さんは鞘に収めたレイピアをシャルに渡して此方を向いた。
「さて、次は二人の武器の話だな。」




