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38話 紫色の暖簾

 太陽の照らす町並みを、馬車は悠々と進んでいる。

 昨日見た夜の風景とは違い、遠くまでを見渡せるザスタイルの街はさらに広大に見えた。

 

 十分程で馬車は目的地へと到着した。

 ガネットが開いた扉を潜って馬車を降りる。

 目の前には紫色の長い暖簾が掛けられた、いかにも怪しそうな店があった。

 このあたりの雰囲気にそぐわない其れは、お世辞にも立派な建築とは言えないありさまだった。

 

「此方が換金所になります。

 近寄り難い見た目ですが、案内所で把握している中で最も信頼の置ける店です。」

 

 私だけ感覚が違うんじゃないかと少し戸惑ったが、やはり近寄り難いみたいだ。

 だっておかしいもの、紫の暖簾に骸骨が描いてあるし。

 入り口の左右におかしな水晶玉まで置かれてる。

 どう見ても怪しい、少なくとも換金できる場所とは思えない。

 

「店主はいるか?」

 

 ガネットは躊躇なく暖簾を潜って中へと入って行く。

 

「皆んなも一緒に来る?」

 

 換金だけなので、無理にこの中に入れる必要もない。

 

「俺はいいや、ここで待っとくよ。」

「私も遠慮しておくわ。」

「私はお姉ちゃんと行く!」

 

 レイルとリューネは外で待っておいてもらい、シャルと二人で中へ入った。

 

「お邪魔しま〜す。」

 

 暖簾を潜ると、中は思ったよりも小綺麗な店舗だった。

 

 店の奥には大きめのカウンターが一つあり、壁際には棚が並んで様々な商品がおかれている。

 高い場所に取り付けられた窓から入る光を、シャンデリアの様に店の中央に取り付けられた水晶が反射して店内を照らしている。

 

 店の中央は特に何も置かれておらず、広々とした空間が造られていた。

 

「わ〜、お店の中綺麗!」

 

 シャルが思わず感想を述べる。

 外とのギャプがある分、余計にそう感じるのだろう。

 

「えぇ、私もビックリしたわ。」

 

 ガネットはカウンターまで進み店主を呼んでいる。

 

「は〜い、今行きますよ。」

 

 店の奥から男性の声が聞こえた。

 

「おぉ、ガネットさんじゃありませんか、今日は何のご用件で?」

 

 店の奥から店主と思われる小太りの男性が顔を出して、ガネットを見て話しかける。

 どうやら顔見知りの様だ。

 

「案内所の仕事でお客さまをご紹介しに来た。

 換金のご希望だ。」

 

 店主は私を見てお辞儀をした。

 

「所長自らご案内とは、大切なお客さまですな。

 丁重にご対応致しましょう。」

 

 店主はガネットを所長と呼んでいた。

 

 あの人所長さんだったの?

 案内所で一番偉い人じゃない!?

 

「あぁ、ヴェラ様のお客様だ。くれぐれもよろしく頼む。」

 

 そう言ってガネットは私とシャルを紹介した。

 

「ガネットさん所長さんだったんですね。」

 

「きちんと自己紹介をしておりませんでしたね。

 私は公爵様より案内所の所長を仰せつかっております。

 店の外にて待機しておりますので、ご用をお済ませください。」

 

 そう言い残してガネットは店の外へと出て行った。

 

「ヴェラお嬢様のお客様とは、大変光栄です。

 換金とのことですので、早速お品を拝見いたします。」

 

 店主は改めてお辞儀をして、此方に向き直る。


「換金したいのは核石なんですが、数が多いのでここへ出してもいいですか?」

 

 私は広々と空間を開けられた部屋の中央を指差した。

 

「勿論ですとも、その為の場所でございます。

 どんな物を持ち寄られるかわかりませんので、スペースを広く取っております。」

 

 なるほど、流石は換金屋だ。

 しっかりと考えられている。

 確かに広いスペースが無ければ仕入れることもできない場合もあるか、暖簾で隠した入り口を広く作ってあるのはその為だろう。

 しかし、外のセンスはどうかと思うけど。

 

「じゃあ出しますね。」

 

 私は【時空収納・箱】(リアルボックス)から集めた核石を半分取り出した。

 全部換金してしまうのは勿体ない。

 シャルの強化にも使えるし、装備を揃える際の材料にもなるからだ。

 詳しい数を数えてはいないが、【狩人の祭り】(カーニバル)とザスタイルまでの道中で集めた核石は少なくとも千個以上あるはずだ。

 約50個で大金貨二枚の値がついたのだ、集めた核石の半分で少なくとも十倍は欲しいところだ。

 

 よく考えたら200万円相当になる訳だからかなりの大金になるわね。

 全部売れば400万円以上、やっぱり【狩人の祭り】(カーニバル)はカーニバルだったんだわ!

 

 取り出した核石は正に山の様に積み上がった。一つが直径十センチもないくらいだが、流石に500個以上も集まると大きな物となった。

 

「なっ!どこから出てきたのですか!?

 それにしてもかなりの数ですな!これで全部ですかな!?」


 店主はいきなり目の前に積み上がった核石を眺めながら驚いた。

 

「核石は魔法で収納していました。

 これで手持ちの半分くらいですね。後は今のところ取っておきたいので、売りたい物はこれで全部です。」

 

「収納魔法ですと!?

 初めて拝見いたしました。ヴェラお嬢様のお客様なだけあって、かなりの実力をお持ちの様だ。

 便利な魔法もあるんですなぁ。」

 

 これだけ大きな街で換金所をやっている店主ですら、収納魔法は見た事ない様だ。

 自覚はないが、難しい魔法なんだなと改めて思う。


「えぇ、重宝してます。」

 

 店主は核石を一個一個手に取って眺めている。

 

「いや〜、どれも見事な核石だ。

 ほとんど傷がない!

 普通これだけの数の核石を持ち運ぶとなれば、相当丁寧に扱わないとすぐに傷がつくものですが・・・。

 これも魔法で収納しているお陰なのでしょうな。

 これだけの数をどうやって集められたのか、お聞きしてもよろしいでしょうか?」

 

 店主は真面目な顔で質問する。

 

「昨日魔物の集団に出くわしまして、仲間は【狩人の祭り】(カーニバル)って言ってましたけど。

 それを倒して手に入れました。」

 

「なんですと!魔物の力が強まってきた今、【狩人の祭り】(カーニバル)なんて名ばかりでただの厄災だと聞いております!

 それを倒したと言うのですか!?

 どれほどの規模の【仲間】(パーティ)で挑んだと言うんです?」

 

 店主は驚きながら質問をして続ける。

 

 なんだか、話に熱が入ってきたな・・・。

 早く終わらせて次に行きたいのだけど。

 

「えっと、四人です・・・。」

 

「四人!?

 そんなバカな!?

 それ程の実力を持っておいでなのですか!?」

 

「えぇ・・・まぁ・・・・・・。」

 

 不味い、なんか押されてきた。

 

「貴方方はとんでもない方だ、これだけの数の核石を前にしなければ信じられないが、ヴェラお嬢様のお客様と言うだけあって普通の方ではない事は十分に理解致しました。」

 

 そう言って、店主は落ち着きを取り戻し核石を一通り確認した。


「核石の数は通常のサイズが503個、そして中サイズが31個あります。これだけの品質の物を提供くださった貴方方に嘘の値は付けられませんな。

 通常サイズを大金貨40枚、中サイズを大金貨61枚。

 全部で大金貨101枚で買い取らせてください。」

 

 その数字を聞いて私は耳を疑った。

 前回メルトクロードで売った時の倍の値段だ。

 

「そんなに高いんですか!?前は52個で大金貨2まいだったんですけど!?」

 

 流石にもらいすぎじゃ無かろうか。

 

「普通の換金所ではその程度でしょう。

 しかし、物の質、お客様の質を考慮すると、私はこれだけ出しても惜しくはありません。

 この商売は信頼が全てです。

 貴方方が常連様になって頂ければ、これからのお付き合いで十分に私の利益にも繋がると確信を持っております。

 ですので、今回私の利益はそれ程求めない値をつけさせていただきました。」

 

 真面目な顔で包み隠さず思ったことを伝えてくる。

 先程迄は勢いに負けていたが、この店主の商売のやり方には好感を持てる。

 此方にも十分に利益があり、正直に話をしてくれた事で確かに信頼も生まれる。

 上客を確保する上では成功すれば間違いなく向こうの利益も上がるだろう。

 

 悔しけど、また利用したいと思う自分に気付く。

 

「商売上手ね。これからも宜しく頼むわ!」

 

 私は店主と握手を交わし、お金を受け取って店を出た。

 

 私の初めて出来た行き着けの店は、紫色の怪しげな暖簾をはためかせている。

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