35話 商業都市ザスタイル
テグナムの村を出発してから四日目の夜、私たちは商業都市ザスタイルへ到着した!
「大きいわねぇ!」
ここザスタイルは聖都アラムに隣接する商業都市だ。アラムとの流通拠点であり、隣国との取引も盛んに行われている。
総人口は五百万を優に超える。
都市の中心地には一際背の高い建物が立ち並び、都市の領主や貴族達の邸宅も連なっている。
そこから高級店が連なり、それを囲むように市場や住宅街が広がりを見せている。
街に入るや否や観光用の商店が出迎える。
夜だと言うのにどこも人だかりができていて、街行く人の数もこの世界で見た中では一番多い。
ここだけでもメルトクロードより賑わいを見せていた。
雑貨屋・道具屋・武器屋と、様々な店舗が立ち並び、道を挟むように小さな商店がずらりと列を作っている。
日本の祭りで見られる屋台を思い出す。
私たちは現在この街に大きな用事は無い。
しておきたい事と言えば・・・。
「とりあえず今日泊まる宿を探して、明日は大量に手に入った核石の換金と、必要な装備を揃えましょう。」
「それとお酒ね。」
私の提案にリューネが付け加える。
リューネからお酒は切り離せそうもないわね。
「はいはい。」
私たちは街の案内所に向かった。
この街には東西南北の四箇所に大門があり、その側に案内所があった。
私たちは南門から街へと入り、一番近い案内所を目指す。
シャルはテグナムへ行く途中にこの街に立ち寄ったことがあるそうで、思った程驚いたりはしていなかった。
もっとはしゃいでいる姿も見たかったのだけど、別の街まで楽しみは取っておこう。
「いらっしゃいませ」
案内所へ入ると、職員の男性が近づいてくる。
あれだけ沢山の人で賑わっているだけあって、夜の案内所も割と沢山の人が列をつくって並んでいた。
「こちらの番号札を持ってお並びください。」
薄い円形のプレートを手渡され、そこには数字が刻まれていた。
167番か、今何番まで呼ばれてるんだろ。
「130番の方此方へどうぞ。」
カウンターは五箇所設置されており、それぞれ女性の職員が対応を行なっている。
一人当たり五分程度として、三十分もあれば順番が回ってきそうだ。
「お姉ちゃんお腹すいちゃったよ・・・。」
シャルが側でお腹を押さえながら呟く。
「もうちょっとだけ我慢して、保存食で今お腹を膨らますより、宿屋で美味しい料理を食べたくない?」
するとシャルも納得して頷く。
「我慢する・・・。」
暫くして私たちの順番になった。
「今日はどう言ったご用件でしょうか。」
受付嬢が尋ねる。
「宿屋と、核石を換金できる場所を知りたいんですが。
それと、装備を揃えられる場所も。」
とりあえずそれくらいかな?
必要になればまた来ればいいし。
「畏まりました。
失礼ですが、協会の登録はされておりますでしょうか?」
協会の登録って、何か必要な事があるの?
「はい、一応この子以外は登録してます。
あの、案内に協会の登録って関係あるんですか?」
身分確認みたいなものだろうか?
「はい、ご希望される内容にも寄りますが、ここザスタイルは様々な施設や商店があります。
冒険者の方や商人の方には、金銭や実力に見合った店舗をご案内させていただいております。」
なるほど、聞こえはいいが結局のところ、実力や権力を持っている者に良い店を紹介してくれると言う事だ。
逆にそれが伴わないものはそれ相応の場所しか案内してもらえないってところか。
「なるほど、じゃあ登録証の提示が必要なんですね?」
「その通りです。代表者一名様のご提示をお願い致します。」
ん〜、他人に見られるのかと思うと気がひけるが、良い店を紹介してもらおうと思ったら私の登録証が良いのよね・・・。
背に腹は変えられないか。
私はポーチから登録証を取り出して受付嬢に手渡した。
「ご確認致します。
えっ!?・・・・」
登録証を見た受付嬢が驚嘆し、私とカードを交互に見つめる。
どこ行ってもこんな反応されるんだろうなぁ。
「申し訳ありません、暫くお待ちください!」
受付嬢は登録証を持って、奥にある事務所のような所へ走っていった。
「なぁ、ミレリア。
別にお前のを見せなくても良かったんじゃないか?」
レイルがコソコソと耳元で囁く。
「でも、あの言い様だと多分紹介される店のランクが変わるわよ。」
私も小声で囁き返すと、レイルはなるほどと納得して首を振った。
「お姉ちゃん、どうしたのかな?」
不安そうにシャル此方を見る。
「大丈夫よ、待ってればすぐにわかるわ。」
私はこの展開を知っている。
協会に登録した際にも同じような展開だったのだし、恐らく似たようなものだろう。
お、受付嬢が帰ってきた。
「大変失礼致しました。只今担当の者が参りますので此方へどうぞ。」
私は登録証を返却してもらい、カウンター横のソファーに案内された。
どうやらまだ待たされるようだ。
「お姉ちゃん、お腹が・・・。」
「俺も流石に腹が減ってきたな。」
二人が空腹を訴える。
まぁあれだけ歩いたし、普段ならとっくに夕食を終えている時間なので無理もない。
「本当だね、早く終わらせてご飯に行きたいね。」
私やリューネは特に問題ないのだが、シャルに話を合わせる。
すると、奥から一人の女性が歩いてきた。
スーツの様な黒い服に身を包み、短めの髪を綺麗に纏めて眼鏡をかけている。
ザ・秘書、と言った風貌の女性だった。
「失礼いたします。ミレリア様御一行でいらっしゃいますか?」
真面目そうな口調で確認をとる。
「そうですが。」
私が答えると、女性は深々と頭を下げて続ける。
「お待たせして、大変申し訳ありませんでした。
お部屋を変えてお話をしてさせて頂けませんでしょうか?」
「それは構いませんが、時間がかかりますか?
夕食がまだなので、早めに用件を終わらせたいのですが。」
レイルとシャルをを見ていると、あまり長引かせるのは申し訳ない。
「それでしたら、お食事を取りながらと言うのは如何でしょう?
すぐに準備いたしますが。」
食事まで準備してくれるなんて、何か嫌な予感がするなぁ。
まぁ聞くだけならいいか、早く食事にもありつけるわけだし。
「じゃあ、それでお願いします。」
「やったー!ご飯ー!!」
シャルが喜んでくれるなら私は十分だ。
とりあえず、こんなVIP待遇をしてくれるには裏があることは間違いない。
私くらいは気を抜かずにいよう。




