32話 疲労困憊
「はぁ・・・終わった・・・・・・。」
私たちは魔物約千二百匹を倒し切った。
重力魔法によるサポートと各々の実力により、負傷する者はいなかった。
だが、思った以上に魔力を使用した。
始めの切欠はレイルだった。
レイルは潜在スキルの【闘志】により、戦闘中の能力を瞬間的に上げる事ができた。
これにより、敵へ攻撃する刹那に発動する付与魔法の発現に成功していた様だ。
魔法は火の魔力を剣に纏うもので、魔法名を【焔】と言った。
それをスキルと併用し、攻撃の瞬間のみ発動する【朧焔】を用いて魔物を倒していたのだが、100匹あたりから魔力切れを起こした。
魔力の総量が少ないレイルの考え抜いた先頭スタイルだったのだが、魔物の数が圧倒的に多すぎたのだ。
魔法を使っていく毎に魔力の総量も少しずつ増えていくそうなので、今後に期待している。
まぁそんな訳で途中から地道な斬撃で敵を倒していたのだが、剣を振るう回数が増える毎に動きが鈍っていき、最終的に倒した数は150匹に届かない程度だった。
シャルはと言うと、【植物召喚・草槍】により、合計150匹程度の魔物を串刺しにしたあと、思いついた様に新たな魔法を試していた。
風の魔法を短剣に纏わせる【暴風ノ刃】で、刀身から渦巻く小さな竜巻を作り上げたのだ。
魔法で切り上げた敵は、錐揉みに回転して吹き飛んでいった。
小さな身体からは想像が出来ないような凶悪な斬撃だった。
50匹程度を薙ぎ倒しその魔法の効果を確かめた後、更に別の魔法を発現した。
【一薙ノ鎌風】によって、シャルの眼前にいた約150匹の魔物が真っ二つに切り裂かれた。
広範囲の強力なカマイタチのような魔法だったが、思った以上に魔力を消費したようで、シャルはその魔法を最後にしゃがみ込んだ。
シャルは約350匹を倒したのだ。
残った魔物は最初に私が倒した100匹を除いて、約600匹だった。
折角だからと色々な魔法を試してみた。
まずは火属性魔法【灼熱ノ業火】により魔物を焼き払い、水属性魔法の 【氷結ノ海波】で連なった魔物の群れは瞬時に凍りつき砕け散った。
これで合計200匹程度を倒した。
続いて風と闇の魔法を複合した【晦冥ノ黒風】が暗黒の嵐を起こし、雷を伴う風の刃が広範囲の魔物を襲った。
残った魔物を木属性魔法【巨木ノ行進】で一掃し、全ての魔物を制圧したのだ。
しかし、常時発現していた【重力結界・極】の影響もあり、私は魔力を半分以上消費したのだ。
わざわざ効果範囲を外して魔法を試した事が間違いだった。
威力を落として広範囲に発動させておけば、おそらく最初に使用した【灼熱ノ業火】だけで片が付いただろう。
それ程までに強力な魔法だった。
リューネは二人に被害が出ないように立ち回ってくれていたので、遠慮なく魔法を使う事ができた。
これからは調子に乗らずに、最低限の魔法を使っていこうと思う。
周辺には広範囲に渡って核石が散らばっている。
なんとかして集めないと流石に勿体ない。
『どう、面白かったでしょ?』
全部が終わった頃にクロノアが顔を出した。
今更出てきていいご身分だこと。
クロノアを見て、手伝わせれば良かったと後悔したが後の祭りだ。
「面白いどころか、かなり疲れたわよ・・・。」
レイルとシャルを確認してから呟いた。
せめて核石の回収くらいは精霊達にやってもらおう。
「クロノア、核石の回収を手伝って・・・。
数が多すぎて大変なのよ。」
クロノアは"オッケー!"とポーズをとって、ダグリーを呼び出した。
お前がやるんじゃないんかい!
『ダグリー頼むよ!ボクは集めたりする魔法は使えないからさ。君は凄く得意だよね?』
『仕方ないわね〜。ま、このダグリーちゃんなら余裕よ!』
口車に乗せられて、ダグリーは核石を集めるべく魔法を発言する。
『ミレリアも見て覚えなさいよね!
いくわよ・・・【結合】・・・からの、【闇ノ掌握】!』
全ての核石が黒い光の線で繋がり、それらが一箇所に纏まっていく。
やがて核石は積み上がり、石の山を作り上げた。
「ありがとう!流石はダグリーね!」
『核石の持つ負のエネルギー同士を一つに繋げて、中心に引き寄せたのよ!ま、私にかかればこんなもんね。』
ダグリーは鼻高々に無い胸を張った。
『じゃ、後の回収は自分でやってね。』
そう言い残してクロノアとダグリーは私の中へ帰った。
クロノア、結局何もしてないわよね?
なんかあの子に遊ばれた気分だわ。
【時空収納・箱】で集まった核石を収納し、次の行動を考えた。
レイルもシャルも疲労困憊といった様子だ。
出発してすぐの出来事だったため、ほとんど進んでいないのだが、二人が回復するまで休憩を取るとしよう。
私は【岩石創造】で家を作り、【時空収納・間】から寝具を取り出して二人を休ませた。
私も流石に疲れた。
「はぁ、当分狩人の祭りはお断りだわ。」
「あらあら、相当疲れたみたいね。」
笑いながらリューネが隣に腰を下ろす。
「まぁ、魔法を無駄撃ちして試してた私が悪いんだけどね・・・。」
こんなことになるのならあんな事をするんじゃなかったと改めて思う。
「ところで今更なんだけど、あれだけ沢山の魔物を倒しちゃって良かったのかしら?
魔物って世界に充満する負のエネルギーを元に出来てるって言ってたわよね?
一度にたくさん倒して、世界のバランスみたいな物は大丈夫なの?」
核石を収納している時にふと思ったのだ。
こう言ったエネルギーというのは、バランスを取り合って世界が成り立っているような気がした。
「全く問題ないわよ。
魔物を倒しても、世界からそのエネルギー自体がなくなるわけじゃないの。
核石を取り込んだりしてもそれは同じ、世界という器に入ったエネルギーの総量自体は変わることはないわ。」
なるほど、上手に世界の中で巡り巡っている訳だ。
それを聞いて少し安心した。
世界の敵として認識されたくはないから。
今回はリューネが戦闘を促した様なものだから、もしそんな事を言われても理不尽でしかないのだが。
「そっか、なら安心ね。とりあえず、私も休んでくるわね。」
それだけ告げて、私はシャルの布団に潜り込んだ。
リューネは周囲を警戒しておいてくれる様で、私も安心して休むことができそうだ。




