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27話 夫婦の願い

 そのまま暫く、シャルロッテを抱きしめた。

 シャルロッテもしがみついて、顔を擦り付けて泣いていた。

 

 やがて落ち着きを取り戻した事を確認して話しかける。

 

「とにかく、村に向かおう。村の人達も絶対に心配してるよ。

 大丈夫、何があっても守ってあげるから。私、結構強いのよ?」

 

 シャルロッテは不安そうだが、私が絶対に守ってみせる。

 目指すはテグナムの村だ。

 元々の目的地でもあるし、シャルロッテを追いかけてきたという亜人もまだいるかもしれない。

 いたら捕まえて報復する。

 この子を庇った村の人達の事も気になる。

 

「うん。」

 

 シャルロッテが小さく頷く。

 

「じゃあシャルロッテ、不安かもしれないけどテグナムへ向かいましょう。」


 立ち上がって、シャルロッテの肩に手を当てる。


「あの、ミレリアお姉ちゃん。シャルって呼んで?

 お母さんも、そう呼んでたの。

 それと、せっかく可愛い服だけど、村まで行く間に汚れちゃうよ。」

 

 手をモジモジさせながら上目遣いで此方を見ている。

 ホント、この子はもうパーフェクト!

 可愛いぞー!

 


「わかったわ。よろしくね、シャル。

 ちなみに服は大丈夫よ、私が常に魔法で守ってあげるから!」

 

 この可愛さを引っ込めるなんて勿体ない。勿論ズボンとかも似合うだろうけど、暫くこの格好を見ていたいのだ。

 妹が出来たみたいで凄くうれしい。

 

「ミレリア、そんな事してて襲われた時に集中して戦えるの?」

 

 リューネも呆れながら此方を見つめてくる。


「大丈夫!暫くは、その格好を見ていたいの!

 本当に大変そうなら着替える事も考えるわ。だからそれまではお願い!」

 

 そこでふと気づく。

 別に律儀に歩いていく必要はないのだ。

 大分村にも近づいたわけだし、魔法使っちゃお。

 シャルの無事も村の人達に早く教えてあげたいのだし。

 

「私、気づいちゃったわよ。

 もうここまできたんだから飛んで行けばいいのよ!」

 

「はぁ・・・。

 最初の旅くらい目的地までしっかり歩くと思っていたのに。

 まぁ、この子の事もあるから仕方ないか。」

 

 リューネは溜息をつきあまり乗り気ではない様だが、諦めてもくれているみたいだ。

 

「え、空を飛ぶのか!?」

 

 レイルは一人はしゃいでいる。

 なんかここ最近、レイルのキャラが定まっていない気がするのだが、大丈夫だろうか?

 

「と、言うことで・・・

 シルフィー手伝って〜!」

 

 シルフィーにリューネとレイルをお願いして、私はシャルと一緒になってテグナムの村へと飛翔する。

 

【天翔ル風】(フライハイ)

 

 う・・・他人を飛ばすのって思ったより魔力を使うわね。

 少し魔力が抜けるのを感じたが、そこまで気にする程ではない。

 距離も短いし、とりあえず問題はなさそうだ。

 

 私たちは真っ直ぐテグナムの村へ翔んだ。

 あっという間にテグナムの村が見えてきたが、余計な注目を避けるため集団隠蔽魔法をかける。


【不可視ノ軍行】(インビジブルアーミー)

 

 私たちは姿を消して、一度村の外へ着地した。

 シャルだけを隠して村へ入ろうかとも考えたが、私たちがいれば何かあっても大丈夫だろう。

 

 シャルの手をしっかりと握り、魔法を解いて一緒に村へと入った。


「シャルロッテ!よかった、無事だったか!」

 

 私たちを見つけた中年の男性が駆け寄ってきた。

 それを皮切りに周りの人達も集まってくる。

 

「ありがとう、あんた達がシャルロッテを助けてくれたのか!?」

 

 次々と村人が集まり、私たちを取り囲んだ。

 暫く村人とのやり取りをしていると、そこへ一人の老人がやってきた。

 

「村長さん・・・」

 

 シャルが老人の方を見る。

 この人が村長か、背は低く腰も曲がっている。

 お爺ちゃんと言った優しげな風貌だ。

 怪我をしているようで足には包帯を巻いている。


「シャルロッテ、無事じゃったか。皆本当に心配したんじゃよ。」


「ごめんなさい。でも、この人たちが助けてくれたの。」

 

 その後シャルが私たちの事を簡単に紹介してくれた。

 


「おぉ、旅の方、シャルロッテを助けてくれた事、感謝いたします。どうか皆さんでウチまで来てくだされ。」

 

 その場の流れで、私達は村長の家に招かれる事となった。

 家に着くと、村長の奥さんが出迎えてくれた。

 

 

 

 

「我々老夫婦が、シャルロッテの面倒を見ておりましてな。

 なかなか親の代わりはできませんが・・・。」

 

 そう言ってシャルを見つめた。

 

「そうだったんですか。

 道中彼女の身に起きた事は聞きました。

 原因となった亜人達は今どこに?」

  

 単刀直入に聞くと、村長は眉を寄せた。

 

「あやつらは今朝方、シャルロッテが帰ってこない事を確認した後、根城である聖都アラムへ帰って行きました。

 村の者が付いていながら、あの子を助けられずお恥ずかしいばかりです。」

 

 聖都アラム、そこに拠点があるのか。

 テグナムを経由して私たちが行く予定の場所だ。なんとも都合がいい。

 

「彼らは、シャルの事をどうするつもりだったのかご存知ですか?私たちが見つけた時には、魔物に襲われて危機一髪のところでしたが。」

 

 村長は首を横に振った。

 

「いいえ。ただわかる事は、目の敵の様に探していたと言う事実だけです。」

 

 やはり、亜人間での迫害だろうか?

 しかしこんな村にまで追ってくる程の事なのか?

 わからない。

 

 

「貴方方は、今日はうちに泊まって行ってはどうかな?あとで少しお話したい事もありましてな。」

 

 村長はそう言って、チラリとシャルの方を見た。

 彼女の前では話せない内容かな?

 では、お言葉に甘えて泊めてもらおう。

 

「わかりました。では、お言葉に甘えさせていただきます。」

 



 その晩村長の家で食事を摂って、シャルを寝かしつけてから村長と話をした。

 

「今回は、あの子を救っていただいて本当に感謝しております。

 話と言いますか、ご相談がありましてな。」

 

 前置きをして、村長は話し始める。

 

「相談と言うと?」

 

「はい、あの子を、シャルロッテを貴方方と共に連れて行ってやっては頂けないでしょうか?

 昼間はやってきた亜人の目的は分からないと言いましたが、奴らはシャルロッテの命を狙っておりました。

 その理由まではわかりませんが、同じ様な事があれば、我々はあの子を守りきる事が出来ないでしょう。

 亜人とは言え、あの子はこの村の家族じゃ。

 何とか守ってやりたいのですが、我々にはその力がありませんでした。

 無理は承知でお願いします。

 どうか、あの子を守ってやってください・・・。」

 

 村長と奥さんが深々と頭を下げた。

 本当にあの子を思っての頼みなのだろう。


「酷い話だ、あの子には何の罪も無いってのに。」


 レイルが怒りを表して呟いた。

 私もシャルを守りたい。

 それに、あんな幼い子供の命をねらうなんて信じられない。

 何とかしてあげたい。

 

「わかりました。ただし、シャルが嫌がった場合は無理に連れては行けませんよ?」


 本当にシャルの事を考えるなら、本人の意思も尊重しなくてはならない。

 シャルが着いてこなくても、安心して暮らせる様に出来る限りの事はしてあげるつもりだ。

 最終的にはシャルの意思に委ねようと思う。

 

「ありがとうございます。」

 

 村長夫妻は改めて頭を下げた。


 

 シャルがどんな答えを出すかはわからないが、朝起きたらしっかりと考えて決めてもらおう。

 子供に押し付ける選択でない事は十分理解しているが、それでも決めてもらわなければならない。


 

 その後、シャルと同じ布団に入って私は眠りについた。

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