23話 レイルの挫折
倒したライトブルから出た核石を回収して、再び歩き出した。
レイルは驚き納得出来ない様子であったが、まずは疲れる前に少しでも進みたかった。
話は歩きながらしようと言うことで、渋々納得してくれた。
「で、ミレリアは何時の間にあんな事が出来るようになってたんだ?」
荷物を背にして歩くレイルがここぞとばかりに質問する。
「昨日話したでしょ?二年前から私が不老になった事。
魔法が使えるようになったのも同じ頃よ。」
レイルの後ろにリューネと並んで、途中薬草などを見つけては回収し、【時空収納・箱】に収納しながら進む。
とっても便利。
「そもそも、なんでそんな事になったんだ?」
目の前に現れた岩の壁をよじ登るレイル。
「精霊と契約したら、八属性全ての上位精霊と契約できたんだけど、そのお陰で私も精霊になっちゃったの。」
レイルに続いて岩の壁を登る。
「はぁ?八属性全ての上位精霊って、そんな事あり得るのか!?上位精霊一体でも奇跡みたいなもんだぞ。」
振り返り、私の手を引きながらレイルは驚く。
リューネはトントンと岩を蹴って上まで跳んで登ってきた。
「ちなみにさ・・・ミレリアってクラスいくつなの?」
レイルは恐る恐ると言った感じで聞いてきた。
それを見て私はニヤリと嫌らしい笑みを浮かべる。
「知りたい?多分、自信無くすわよ。」
「あ、あぁ・・・。」
私は勿体ぶりながら登録証をレイルに手渡した。
レイルは想像通りの反応を見せてくれた。
「なんだよこれ、おかしいだろ!?
レベルとクラスが合致して無いじゃないか!どんだけ魔法とかスキルで補填してんだよ!?」
あ、なんかちょっと人格変わってません?
「魔力と魔法で100万近くあるかな?」
それを聞いてレイルは両膝をついて崩れ落ちた。
「なんか、自分が惨めだ...。」
だから言ったのに。
まぁこう言う反応を楽しみたかったのはあるんだけど。
私も性格が歪んできちゃってるかな?
「まぁ元気だしなさいよ。強くなって守ってくれるんでしょ?ほら、早く進みましょう。」
簡単に励まして歩き始める。
リューネはそんなやりとりを側から微笑ましく見ていた。
「レイル君、気を取り直して進みましょう。」
と、レイルの肩を叩く。
それから更に一時間ほど歩き、私たちは一回目の休憩を取った。
レイルはカバンから水筒と保存食を取り出して食べる。
私とリューネは【時空収納・箱】からお茶とお菓子を取り出して二人で食べた。
それを見ていたレイルは保存食をポロリと手から落とす。
「あ、レイル勿体無いよ。」
レイルの反応をわかっていながらぶっきら棒に言った。
「な、なんだよ今のは!何処から出てきたんだ!?」
「何処って、【時空収納・箱】から出しただけよ?
時空収納魔法よ。荷物を持とうかって聞いたでしょ?」
レイルはただ呆然と首を傾げる。
「そんな魔法あるなんて普通わからないだろ。二人がやけに軽装だったから、心配して余分に荷物を持ってきたのに・・・。」
またもがっくりと肩を落とした。
気を遣ってくれるのはとてもありがたいが、話はちゃんと最後まで聴くものだ。
まぁ、私も少し意地悪だったけど。
「リューネさんも使えるのか?」
「いいえ、私はそう言うのは不得意だから持ってもらってるわ。」
精霊に、だけどね。
どうやらレイルには精霊達は見えないようだ。
先程からリューネの荷物を取り出すためにクロノア達が出てきているが、目に入っていない。
「ねぇ、クロノア達ってレイルには見えるようにならないの?」
小声で聞いてみる。
「どうだろう?今まで僕らを認識できた人間がミレリア以外に居ないから何とも言えないけど。
彼が精霊と契約する時に、ミレリアが干渉すれば見えるようになるかも?」
「干渉するって、どうやって?」
意味はなんとなく理解できる。
おそらく契約を交わす際に、私がサポートして儀式を行うようなイメージだろう。
だが、やり方はよくわからない。
「そうだね、儀式を行う時にミレリアの魔力を少し分けてあげればいいと思うよ。
相手に触れて、触れた箇所から魔力を流し込むようにイメージするんだ。
ただ、普通の人間にあまり多くの魔力を与えちゃダメだよ。魔力の器が壊れちゃうから。
ゆっくり、少しだけ分け与えるんだ。」
なるほど、魔法を使う時のように集中するだけで魔力を渡せると言うことか。
でも、魔力の器が壊れるってどう言う意味だろう?
風船を膨らましすぎて破ってしまうようなものかな?
レイルを風船に例えて、破裂した姿を思い浮かべて、ぞっとなり頭を振った。
そうなったら嫌だから、クロノアの言う通り少しだけ魔力を渡して試してみよう。
理不尽な力を前に打ちひしがれているレイルに提案してみる。
「レイル、貴方って精霊と契約を交わしてるの?」
まずはそこからだ。
「いや、前に儀式をしたときは精霊が現れてくれなかったから、契約できてないんだ。
そういえば、最近は儀式をやった記憶がないな。」
ならばやり方は知っているのか。
それなら、これから試してみるのも良さそうだ。
「なら丁度いいから、今から一回儀式をして見ない?出来るかどうかわからないけど、紹介したい友達もいるし。」
それから事情を説明して、レイルに儀式をして貰うことになった。
『我、この身を悠久の糧として汝らの力を求める。契約の元、物質に宿るその理を切除しこの身に顕現せよ』
レイルが契約の呪文を唱えるのに合わせて、背中に手を当てて魔力をゆっくりと流し込んだ。
レイルの周りに小さな光が現れたのが分かる。
光は一つ、赤く小さな光だった。
それはレイルの周りを飛び回り、やがてレイルの中へと入っていった。
契約の儀式は終了した様だ。
「やったよ、ミレリア。契約できたみたいだ!」
「良かったわ。じゃあ、後はもう一つの方が上手くいったか試してみましょう。
みんな、出てきて。」
私は精霊達を呼び出した。
彼らは私が呼ばない限り基本的にはあまり外に出てこないのだ。
私の呼び出しに応じて、八人の精霊達が次々に現れた。
「これが・・・ミレリアの契約した精霊達か!?」
この反応をみると、どうやらレイルにも精霊達が見えるようになったようだ。
上手くいってよかった。
レイルには黙っていたけど、私も幸運を使っておいたのだ。
普通このスキルは他人に対してはあまり効果を及ぼさないのだが、私の事情が関わる事にだけは効果を発揮してくれる。
今回は上手く作用してくれたみたいだ。
とりあえず、皆んなに自己紹介をしてもらう。
「はじめまして、僕はクロノアよろしくね。」
「ダグリーよ!ヨロシク!」
「レムと申します。お見知り置きを。」
「えっと、アースです。」
「シルフィー・・・・・zzzZZZ」
「リーフです。宜しくお願いします。」
「・・・ミズキだ・・・・」
「フレイアです。」
「レイル・テイラーです。よろしく。
精霊と話が出来るなんて、夢みたいだ!」
なんだか感動してくれたみたいで此方も嬉しい。
これでレイルも仲間はずれにならなくて済むわね。
するとレイルの中から先ほどの小さな光が飛んできて、フレイアの周りをクルクルと回りはじめた。
赤い光だから火の精霊なのだろう。同じ属性の上位精霊に挨拶といったところだろうか?
ん?自我の無い精霊が挨拶?
私の疑問を晴らすように小さな光が眩く輝き、フレイアの半分ほどの精霊が姿を現した。
それは子供と言うより赤ちゃんのような姿をしていた。
「フィルー」
赤ちゃん精霊はそう言って飛び回っている。
「どうやら、ミレリアの魔力に惹かれて自我を持った精霊が宿ったみたいですね。生まれたてのようです。」
フレイアが静かに言った。
なるほど、そんな事も起こるのか。
それにしても・・・
「「「可愛い〜!」」」
女性陣が満場一致する、可愛い仲間が増えたのだった。




