21話 旅立つ理由
その日の内に、私が旅立つ事は村中に知れ渡った。
リューネを一旦家に送ろうかと聞いたが、少し村を見て回りたいと言うのでそのまま村を案内した。
行き交う人に注目されながら、点々と村を歩く。
リューネほどの美人だと、男勢の視線が集まるのも無理はないと思う。
集会所の近くへ差し掛かると、そこにレイルがいた。
そう言えば、レイルの事を忘れていた。
早朝に話を有耶無耶にしてからと言うもの、旅立つ準備でバタバタと慌ただしかった。
ここまで来たのだ、しっかりと話つけよう。
「リューネ、少し話をして来てもいいかな?」
リューネは悟った様に頷く。
「彼がそうなのね。
私の事はいいから、行って来なさい。」
そう言って、私の肩を叩いてくれた。
私はレイルの元へと向かった。
「ミレリア!」
私に気づいてレイルが駆け寄ってくる。
「レイル、今朝はごめんね。少し話をしましょう?」
「あぁ。」
レイルは頷く。
私は湖の畔へと向かった。
やはり、ここが一番落ち着く。
他人に目を向ける事なく、穏やかな水面を眺めることのできるこの場所は本当に良いところだ。
腰を下ろすと、隣にレイルが座る。
「お父さんとお母さんに話をしたの。明日の朝、村を出る事にしたわ。
貴方は、本当に付いてくるの?」
今度は逃げずに受け止めるつもりだ。
「ああ、一緒に行かせてくれ。」
直ぐにレイルは答えた。
私もしっかりと向き合わなければならない。
一緒に居ても居なくても、別れの時は来るだろうから。
「そっか。本当のところ、私は貴方と一緒に行きたいと思ってなかったわ。
別に嫌っているわけじゃないから、そこは間違えないでね。」
「じゃあなんで?」
本当の事を言ってどう思われるかわからないが、レイルなら変な捉え方をしないと思う。
覚悟を決めて話す。
「色々あってね。私は老いることのない身体になってしまったの。
親しい人と暮らしていても、一緒に寿命で死ぬ事がない。
信じられないわよね、でも本当なの。そうなってから二年が経った。あまり実感は湧かないけど、私の成長は止まっているみたい。
まだまだ先の事だけど、別れの時が来る。
貴方は老いて死に、私は見届ける事しかできない。
私が貴方と一緒に居たくない理由はそれ。
失う苦しみを感じたくなかったの。」
言葉にすると、抑えていた気持ちが湧き上がり涙となって流れ落ちる。
レイルは湖の方へと視線を変えた。
「そうか。凄い話だな。
確かに信じられない様な話だけど、その涙だけで俺は信じられるよ。
それに、やっぱりお前のそんな顔は見たくないな。」
自分を納得させる様にレイルは言葉を紡ぐ。
私は彼の言葉に流れる涙を拭って笑いかける。
「ありがとう。」
「じゃあ俺は、少しでもミレリアの涙が流れない様に努力するよ。
強くなって、側で守る。
それに、もしかしたら俺もお前と同じ様になれるかも知れないしな。
可能性はゼロに近いかもしれないけど、ミレリアがなれたなら俺だってなれるかもしれない。」
立ち上がって拳を握り、自らを奮い立たせようとする。
そう簡単に不老にはなれないだろが、その気持ちは嬉しかった。
それに、ここまで言ってくれるレイルの事を拒む理由はもう無い。
「じゃあ、期待せずに待ってるわ。」
私がそう言うと、レイルが手を差し出して来た。
私はその手を掴み、立ち上がって固い握手を交わした。
「二人旅なんて、なんかロマンチックだな!」
あ、レイルにはまだ言ってなかったんだ。
勘違いされたままも申し訳ないので、今のうちに言っておこう。
「二人旅じゃなくて、三人だから。」
"ん?"とレイルが目を見開いたが、これはもう決まった事なので仕方がない。
あとでリューネの事は紹介しておこう。
それに、私を側で守るって気負ってくれることは本当にありがたいのだが、その点もしっかりと理解してもらわないといけないし。
レイルには後出しみたいで悪いけど、守る側は私やリューネになるのだから。
これからしっかりと強くなって貰おう。
その後リューネを紹介したのだが、彼女を見てカタコトになり緊張していた。
あれだけ私に色々言っておきながら綺麗な人を見るとすぐに態度に出るなんて、結局のところ男ってやつはこう言うもんなのか、と少しレイルに対する評価が少し下がったのだが、元聖騎士と言う肩書きに自分の着いて行く意味を見失っている姿を見てちょっとだけスッとした。
レイルが私と共に旅に出るという事について、レイルの父は特に反対をしなかった。
「しっかりと強くなって、側で守るんだぞ!」
と彼を後押しをしていた。
こうして翌日、私たちはとうとう村を旅立つのだ。
この夜、家族で最期の晩餐とばかりに豪華な食卓についた。
父と母、二人の手料理に舌鼓を鳴らして家族団欒を楽しんだ。
もちろリューネも一緒だ。
「お二人の料理、とても美味しいです!」
黙々と食べ、グイッと酒を飲んでいる。
「お、リューネさんいける口だね、綺麗なお嬢さんに褒めてもらえりゃあ本望だよ。」
父も美人を前に上機嫌で飲んでいた。
「あ、そうそう。レイルも私たちと一緒に行くことになったから。」
私は何気なく二人に伝えておいた。
「なに?」
酒を飲んでいた父の手が急にとまる。
あれ?なんかメンドくさそうな雰囲気...。
「母さん、ちょっと出てくるぞ。」
そう言って家を飛び出していった。
母は呆れた顔で見送っている。
何となく察しはついたが、とりあえず目の前のご馳走が最優先だ。
いつも美味しいが、今日のは格別!
「お父さんも、色々と思うところがあるのよ。」
母が仕方なさそうに父を庇っている。
私は気にしてないから大丈夫。
どうせあれだ、漫画でよくある男同士の友情を確かめる儀式的な事をしているに違いない。
案の定、小一時間ほどして父とレイルが二人で帰ってきた。
お互い顔を腫らしている。
そして、食卓に着くと二人して飲み比べをはじめたのだった。
その後リューネに回復魔法で二人を治してもらい、何があったか聞いてみたのだが...。
「男二人で腹を割って話しをしてただけだ。」
と、お互いに語ろうとはしなかった。
話し合いで顔が腫れるわけが無いだろう。
まぁ、何となくわかるけどね。
前世からそうだったが、男の友情って奴は全く理解が出来ない。
何だかんだで、仲の良さそうな事で良かったよ。
次回でやっとのこと旅立ちます!
新たな展開にご期待ください。




