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序章ー2

 家に着くと煙突から煙と共に美味しそうな匂いが漂ってきた。

 どうやら母は朝食の用意をしているようで、窓から調理場に立つ姿が窺える。


 何のんきに朝食なんて作ってるのよ。

 まさか本当に皆んなして地震に気づかいていないわけ?


 母へ先ほどの地震について確認をしてみたが、村長やレイルのように何も気づかなかったそうだ。

 私の気の所為だったんだろうか?

 そんなはずはないと思うのだが・・・。


「それより水は汲んできたの?」


 と言う母の問いに慌てて水を汲みに行った。

 その後村の人たちにどことなく聞いてみたりもしたが、皆んな同じ様な反応だった。


 何だったのかと考えながら、納得のいかない気持ちで湖の畔を歩いていた。

 モヤモヤしながら歩いて行くと、足元の地面が崩れた。


「ひゃ!」


 ドスンと勢いよく尻餅を着く。

 崩れた地面は思ったよりも深く、穴は二メートル弱くらいはあった。

 特に怪我はしなかったが・・・。


 なんでこんなところに穴があるのよ!?


 ふと、村の子供たちが落とし穴を作ったと自慢げに話していたことを思い出した。

 危ないから埋めておけと言ったのに、どうやらそのまま放置していたようだ。


 落ちた瞬間は流石に焦った。

 マンホールに落ちた時の嫌な記憶が脳裏を掠めたからだ。

 安堵すると同時に怒りが込み上げる。


「あいつら、帰ったら絶対にお仕置きね・・・。」


 立ち上がって落とし穴から這い出そうとしたとき、私の下から光の玉のようなものが浮かび上がった。

 直径五センチ程度の光の玉で、周囲が淡くぼやけている。


 もしかして、これは精霊だろうか?

 実際に見たことはないため確証はないが、不思議な雰囲気を感じた。


 精霊とは、この世界のあらゆる物質や生物に宿るエネルギーの様な物だと言われている。

 人の姿をしていたり、植物だったり動物だったりと姿形は一つではないらしい。


 目の前に現れた光の玉は、フラフラと穴から飛んで出て行こうとする。


「あっ、待って!」


 光の玉を追って穴から這い出す。

 それはそのまま森の方へとゆっくり向かっていった。


 私は光の玉を追いかけて森へと入った。

 幸それ程速くないため、見失うことなく着いていくことができそうだ。

 二十分くらい走っただろうか、森の奥へと進むにつれて樹々の感覚が狭まり、背の高い木々が増えてきた。

 魔物もいるから一人で森に入るなと、昔から散々言われてきたた。

 その為これ程遠くには来たのは初めてだ。


 流石に疲れが出始め、徐々にスピードを落として駆け足をやめた。

 すると、光の玉もこちらのペースに合わせるように速度を落としてゆっくりと進む。


 もしかして着いて来させようとしてるのだろうか?

 都合のいいことを考えながら、暫く歩調を落として光の玉を追いかけた。

 

 更に十分程たった頃、少し開けた場所に出て言葉を失う。

 そこには幹の太さが直径三メートルはあろう巨木が、ひっそりと佇んでいた。


「でかっ!」

 

 こんな巨木があるなんて、今まで聞いたことがなかった。

 村の近くにこれほどの巨木があれば、誰か知っていても良さそうなものだ。


 先ほどの光を目で追いかけると、その巨木の前で移動する事を止めてフワフワと浮かんでいた。


 ゆっくりと光に向かって歩みを進めた。

 光の目の前で止まり、そっと手を近づける。

 

 フッと光が動き、慌てて手を引っ込めた。

 光はフルフルと震えたかと思うと、私の胸のあたりを目掛けて飛んできた。

 避けようとしたが、光は私の胸に当たって消えていった。


「なっ!?」


 一瞬何がなんだかわからなくなって、ぶつかったあたりを見回すが何もない。

 そのまま周囲に目を向けてみたかが、巨木以外に何もなかった。


「なんだったの?」


 精霊に遊ばれた?


 物語に出てくる精霊は人を騙して遊んだり、気づかない人にちょっかいを出したりする者もいる。

 急な静けさを感じて、なんとも言えない不気味な気持ちになった。

 今の光って、毒とか攻撃の魔法とかじゃないわよね・・・。

 不安が過ぎる。


 私は無我夢中で来た道を引き返して走った。




 村まで近づいてきた時、少し離れた場所で何かが動く気配がした。

 嫌な予感と共に其方を見ると、体長二メートルはあろうイノシシ型の魔物【ライトブル】が立っていた。


「嘘でしょ!?」


 慌てて走る速度を上げて逃げ出した。

 ライトブルは樹々に囲まれた走りにくい地形を意に介さず突き進んでくる。

 五十メートル近くて離れていたその距離はみるみるうちに縮まって、すぐそこまで迫って来た


「いやぁぁぁ、助けてー!!!」


 涙で視界が滲む。

 人生を諦めかけていた時、目の前の茂みから別の影が飛び出した。


 村の人だ!


 誰かが気づいてくれたのだとそう思ったが、それは人ではなく別のライトブルだった。

 あろう事かそのライトブルも、此方へ目掛けて突進を開始した。


 終わった・・・。

 私の歩むべくスローライフは今まさに終わりを迎えるのだ・・・。

 思い返せば、前世から全然運がない。

 なんで穴に落ちて死んで、また穴に落ちた挙句に魔物に殺されるのだ。


 微運ってなによ!


 全くごく普通の小ラッキーじゃないの。

 せめてこういう時に私を助けてみなさいよ!


 どうしようもない不満と絶望感に、涙で滲む視界がより一層掠れてくいく。

 その所為で、足元の木の根に引っかかり転倒した。


「ひゃ!」


 そして転ぶと同時に、また穴に落ちた。

 それと同時にドゴッ!という鈍い音が頭上から聞こえた。


 先程穴に落ちた時と同様に地面が崩れた様だ。

 だが今回は転けたままの体制で落ちたため、所々ぶつけてしまった。

 周りには子供が落とし穴を作るときに使ったと思われる枝や布が土に埋まっているのが見える。

 あいつら懲りもせずにこんなところにまで作っていたなんて。

 また怒りが込み上げそうになるが、ライトブルが気になってそれどころじゃない。


 だがやけに穴の上が静かだ、何かが動く音も聞こえない。


 恐る恐る穴から顔を出してみると、二匹のライトブルがお互いの牙てま頭を貫いて倒れていた。


 どうやら奇跡的に助かったらしい。

 ふとみると、木の陰からレス湖が見えていた。

 いつの間にかこんなに近くまで帰ってきていたようだ。

 まぁ、あれだけ走ったら着くわよね?


「あぁ、生きててよかったぁ。」


 安堵のため息を漏らし、私は生を噛み締めた。

 物凄い幸運だった。

 こればかりは素直に喜べる。


 微運、やるわね!

 もう馬鹿にしたりしないわ!


 その後すぐに村の人を呼んで、倒れたライトブルを回収してもらった。

 あとで血抜きをして肉を頂く予定だ。


 村に帰るなり大人達から咎められたのは言うまでもないことだけど。


 恐怖ですっかり忘れていたが、あの光の玉のことを思い出す。

 私は不安に駆られながら協会へと向かった。


 協会ではステータスの確認に合わせて、自分の状態異常なども確認できる。

 協会の受付で事情を話して、また叱責された。


「あれほど勝手に森に入るなって言ったでしょ!

 でも、そういう光の話なんて聞いたことないわねぇ。」


 と、受付のお姉さんも首を傾げた。

 心配だからとすぐにステータス確認用の鏡の前へと案内してくれた。

 この鏡の前に立つと、自分のステータスを確認できる。

 どうやら他人には本人の許可がないと見ることは出来ないらしい。

 なんでも神聖な魔法が込められてるとか、簡易型の水晶なんかもあるそうだ。


 恐る恐るステータスを確認する。

―――――――――――――――――――――

(ミレリア=ファレノイア)

年齢:16歳

性別:女

クラス:S

体力:108

精神力:108

魔力:108

攻撃力:52

防御力:58

総合:778100

スキル:なし

潜在スキル:寝坊(0)、運呼(777666)

――――――――――――――――――――


・・・・・・・・・・・・


 ナンデスト!?


 状態異常の表示はないけど、クラスS!?

 別の異常事態が発生してるわ!

 それに運呼ってなによ!

 換算した値が縁起のいい数字と不吉な数字が混ざっちゃってるんですけど!

 大体なんて読めばいいの!?

 合わせ技でなんで漢字で表記されてるわけ!?

 この世界っぽくカタカナ、横文字でいいじゃない!

なぜか寝坊も微運も漢字で表記されてたけどさ。


 それにしても、このスキルは・・・


(・・う・・ん・・・・・・)


 嫌!絶対に読見たくない!

 クラスとか能力なんてこの際どうでも良い!!

 この文字を読んでは・・・。


 仮にも私は女の子なんですけど!

 

 こうして、私の過ごしてきたスローライフは幕を閉じた。

 この日から世界の歯車は回り始める。




 でも、だけど・・・


 こんなスキル名は、絶対に認めない!

一読頂けた皆様へ

どんな作品か気にして頂きありがとうございます。

目を通して頂いただけでも嬉しく思います。

少しでも楽しんで読んで頂けるように書いていきたいと思いますので、これからもよろしくお願い致します。


面白いかも?と思われた方はブクマも宜しくお願いします!

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