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14話 選択の答え

 久しぶりに見るステータスだが、運を呼ぶやつはどうなってるかな?

 

―――――――――――――――――――――

(ミレリア=ファレノイア)

年齢:18歳

性別:女

クラス:SS

レベル:18

称号:運を呼ぶ者、精霊王

体力:1280

精神力:9,600

魔力:267,108

攻撃力:166

防御力:180

習得魔法:火(80,000)水(80,000)、木(80,000)、風(80,000)、地(80,000)、光(100,000)、闇(100,000)、時(100,000)

スキル:幸運(フォーチュン)(150,000)、不運(アンラッキー)(150,000)

潜在スキル:運呼(777,666)

総合:2,056,000

――――――――――――――――――――


 見えてない。

 私には見えてないわよ。

 

 目をそらしたいが、やっぱり変わらず残っているし、字面がアウトだ。

 総合が200万を突破している。

 よく見ると、見慣れないスキルが...。

 不運(アンラッキー)って、いつの間に増えたのか。

 それを見てふと思い返す。

 そういえばあの商人、とことん付いてなかったよなぁ。

 まさか、これの所為?

 不幸のどん底に叩き落とす!ってかなりの憎悪を持って念じてたからなぁ。


 幸運と同様に優秀そうだ。

 幸運はイメージを持って念じると、自分の助けとなることが起こる。

 不運も同じだ要領だとすると、イメージして念じることで、対処に働きかけるものだろう。

 あの時は、ヴリーズに対してどんな不幸を与えるのか特にイメージをしていなかったが、かなりの効果だ。

 私が手を出さずとも、勝手に傷ついていったのだから。

 もし憎悪に任せて殺してやるつもりで念じていたらと思うと、少し怖くなる。

 なんでこんなスキルが増えているんだろう?


 実際、スキルが増える事について漠然とした答えは既に持っているのだが、それはあのスキルを認める事と同義だ。

 どうしてもこれだけは認めることは出来ない。

 ため息をついて再び水晶をしまい込んだ。


 まぁ兎に角、今回の出来事は最悪の事態にならなくてよかった。



 ミズキが戻って二日後には、父も元気な姿で帰ってきた。

 母も泣いて喜び、いつもの明るさを取り戻した。

 レイルも私を心配し、"よかったな"と頭を撫でてくれた。

 村を出発する時のレイルを思い出し、少し恥ずかしくなり頬が赤く染まる。

 その気持ちをぶんぶんと頭から振り払った。

 

 その夜、父の無事を祝って村の集会所で宴が開かれた。

 私も参加したが途中で抜け出して、村から少し離れた湖の畔へと向かった。


 寝転んで夜空に浮かぶ月を眺めた。

 

 この世界の月は大きい。

 地球で見ていた月の倍以上だ。


「本当に、月並みな話だわ。」


 二年前に迫られた選択を思い出して呟く。

 今回の一件を経て、私はその選択に一つの答えを出そうとしていた。


 すると、突然頭の中に声が響いてきた。


『やぁ、調子はどうだいミレリア。元気でやってるかな?』


 何とも軽い口調の、幼い少年の声。


「この声、神さまなの?」


 その声は二年前に話をした相手だった。

 一度夢であっただけだが、ハッキリと声を覚えている。


『そうだよ、君に伝えたい事があってね。少しだけ思念を飛ばしてお邪魔させてもらったよ。』


 このタイミングで話しかけてくるなんて、何処かで見ているんじゃないだろうか?


「何の用です?」

『実はね、この前話してたスキルについてなんだけど、改名出来るかもしれない方法があってね。君、相当気にしてただろ?』


 二年も経ったけど、"この前"ですか。

 長く存在してると二年なんてこの前みたいなものなのかな?

 そんな事より、スキルの改名ができる!?

 何という吉報だろう!


「本当に!?」


 私は期待に胸躍らせた。


『あの時言った様に、僕の力では魂へ刻まれたスキルの書き換えは出来ないし、あくまで可能性がある程度だよ?

 方法は、スキル自体を君の力で書き換えるんだ。

 スキルを別のスキルへと成長させればいいのさ。』


 スキルの成長?

 簡単に言ってるけど、そんな事が出来るのか?


「スキルの成長って、どうやればいいの?」


『スキルは魂と直結しているから、君自信が魂と共に成長する必要があるだろうね。

 心の成長を糧として、魂と共にスキルも成長するだろう。

 簡単な事ではないよ。

 少なくとも、君が今まで通りの生活をしていれば、人間の寿命程度の時間では起こり得ないだろう。』


「そう...。」


『幸運を祈ってるよ。』


 それだけ告げて、神さまは思念を切った。

 やはり、そう上手くは行かないか。


 期待した分、その反動で脱力も大きい。

 だが、可能性が開けた。

 これを切欠に、村を旅立つ決意は固まった。

 


 今回の事件で、この世界に有る負の部分を垣間見た。

 人の世が続くかぎり、それは決して無くなる事のないものだと理解はしている。

 しかし、力を持たない者が、力在る者に全てを奪われるなんて理不尽を許す事はできない。

 平凡な自分であれば、無関心を決め込むだろう。

 しかし、それらを少しでも減らす事の出来る力を得てしまった。

 私はこれから先の、生きる意味を見つけなければいけない。


 それに、旅をして様々な経験を積めば、それだけ心を鍛える事もできるはずだ。

 それは魂を成長させ、スキルを成長させる事に繋がるかもしれない。

 この村へは、定期的に帰ってくればいいのだ。

 それほどの寂しさは無い。


 そうと決まったら、早く準備をしよう。

 寂しさ以上に、レイルへ抱いた気持ちが本物になってしまう前に。

 私の心が揺らがぬ様に。


 

 



「ここに居たのか。」


 するとそこへ、レイルがジョッキを両手に持ってやってきた。


「急に姿が見えなくなったから探してたんだが、皆んなと飲まないのか?」


 私の隣へと腰を下ろし、ジョッキの一つを差し出した。

 体を起こして、私はそれを受け取った。


「少し、一人になりなかったの。月を見てぼんやりしてただけ。」

「そうか、邪魔したな。俺は皆んなの所に戻ってようか。」


 レイルは昔からこうだ、揉め事なんかは無理矢理にでも介入して解決しようとする癖に、人の気持ちを無理に引き出そうとはしない。

 それがレイルの良いところなのだが。

 その内誰かに騙されるんじゃないかと心配になる。


「いいの、気にしないで。そろそろ戻ろうと思っていたし。

 それより、今回はありがとね。

 お父さんの為に町へ行ってくれて。」


 それを言って、レイルに抱き締められたことを思い出してしまい、必死に頭から振り払う。


「そんな事当たり前だろ。お前の親父さんの為だ。

 それに、俺は何もしてないよ。結果的にはただ着いて行っただけさ。」


 レイルは照れ隠しするようにお酒を飲んだ。


「それでも、貴方は身体を張って助けに行ってくれたわ。」


 私も同じように、お酒を飲む。

 少しの沈黙が二人の間に流れたが、別に嫌な沈黙ではなかった。

 お互いに湖の方を眺めていたが、レイルが沈黙を破る。

 

「あの時、お前の顔を見て思ったよ。お前の泣き顔は見たくないって。

 だからミレリア、お前の事をずっと側で守らせてくれないか?」


 ゆっくりと、優しさの篭った口調でレイルは呟いた。

 一瞬、何のことだか分からなかった。


 あれ?これって、告白されてる・・・!?

 少し遅れてそれを認識すると、私は返す言葉を見失ってしまった。

 心臓の鼓動が聞こえてくるほどの静寂を感じる。

 声がでない。

 無言で答えを待っているレイルの顔を見ることもできなかった。



 あぁ...よりにもよって何で今なのよ。

 私の決意が揺らぐ。

 レイルの気持ちは嬉しい。

 ただ、私では彼の気持ちに応えることが出来ない。

 一緒に老いる事もできないし、成長しない身体で子を授かる事が出来るのかも分からないのだ。

 私では、彼を幸せに導く事が出来ない。



 思いが錯綜し、堪え兼ねてその場を走り去ってしまった。


 家のベッドで、私は一人泣いた。

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