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10話 メルトクロード

 風を切って私は飛行している。

 かなりの速度で移動しているはずだが、風圧などは感じない。

 身体の表面を纏った風の魔力が、身体に触れる風を受け流しているのだ。

 二時間程で大きなメルトクロードの街並みが見えてきた。

 私は周囲の視線を避ける為、隠蔽魔法で身を隠して町中心部の路地裏へと降り立った。

 人目がない事を確認し、魔法を解く。


 早く、お父さんを探さないと。

 そう思い、まずは商人の屋敷を探し始める。

 ここメルトクロードは大きな街だ。

 王国とその南にある街や村の街道が交わる貿易拠点であり、街は賑わいを見せている。

 商人だってそれなりの数がいるだろう。


 私はクリュート村から鉱石を買い付けている商人について、手当たり次第聞き込みを始めた。


「あぁ、それならすぐそこの屋敷だよ。ヴリーズと言ってな、最近じゃぁ悪い噂が後を絶たない商人だよ。

 昔はそんな事はなかったんだがなぁ。嬢ちゃんも気をつけたほうがいいぞ。」


 意外とあっさり情報を掴むことができた。

 まぁ、もちろん幸運を使っていたわけだが。


 早速教えてもらった屋敷へと向かった。

 ヴリーズという商人の屋敷は中々に大きな建屋で、敷地も横に100mくらいは広がっていた。

 私はここへ来るまでに、ヴリーズの素性をある程度聞き込みをしながら掴んでいたのだが、レイルが言っていた通り金の亡者である事が分かった。

 自分に必要な物は有効活用して、要らなくなったら金を巻き上げて突き放す。

 人間としてクズのような男であることがわかったのだ。

 昔は違ったと人は言うが、今では闇での商売も営んでいるなんて噂もある程だ。


 屋敷の門の前に、門番が二人立っていた。

 それはどう見ても、衛兵と言うよりは柄の悪いゴロツキの格好をしていた。

 私は幻惑魔法で姿を変えて、門番二人の前へと歩みを進める。

 隠蔽魔法を使ってもよかったが、ドアの開閉時や物音を立てた時に警戒されることも面倒であったため、正面から乗り込むことにしたのだ。

 まぁ精霊と化してリューネ達に近し存在となった私に、何かをできる人間なんてほとんど存在しないだろうし。何かあっても力押しでも突き進むだけだ。


「お兄さんたち、ちょっと聞きたいことがあるのだけど。いいかしら?。」


 幻惑魔法はリューネをイメジして、色香を漂わせる女性の姿を作り出していた。

 まずは真実を確認する必要がある。

 できる限り情報を引き出すのだ。


「なんだ姉ちゃん、俺たちと楽しい事でもやりたいのか?」


 私を見て、へへへと笑う門番達を厭悪を抱いたが、それを押し殺す。


「質問に答えてくれたら、そう言う事も考えてもいいかな。」


 私がそう答えると、門番二人に気持ちの悪い笑みが浮かぶ。


「いいぜ、あんたみたいないい女ならどんな質問にも答えてやるさ。だから、仕事が終わったら俺たちに付き合ってくれよ。」


 どこの世界も男はこうなのだろうか。

 鉄板過ぎる展開に、呆れと怒りの感情が込み上げてくる。


「助かるわ。最近ここに、クリュート村の炭鉱売りが来たらしいのだけど、貴方達知らないかしら?」


「なんだ、大旦那が見限った村の奴だな。ここだけの話にしといてくれよ。

 あいつはあの村の最期の交渉のために、大旦那が捕まえてるらしいぜ。

 あいつらが売りに来る鉱石は、うちの店での需要はほとんどなくなっちまったからな。

 最後に一儲けさせてもらうって話しらしぜ。

 それにしても馬鹿だよな。商売する時は裏切られる事も想定しとけっての。

 俺が知ってるのはその程度だぜ。なぁ、約束忘れるなよ。」


 男はそう言って、舐めるような目つきで此方を見てニヤニヤと笑った。


 聞いてもいない事までペラペラと、馬鹿はどちらだ?

 恨みを買うなら、復習される事も想定しとけっての。

 田舎の村だと思って甘くてみたわね。


 

 とにかく、父が消息を絶った原因はここで間違いなかったようだ。

 あんた達は完全な黒よ。

 救いようのない、救うつもりも起きないこの世の汚物。

 沸々と怒りが込み上げてきた。




 これから私が、あんた達全員を不幸のどん底にたたき込んでくれるわ。

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