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8話 選択肢

 闇魔法を禁止された私は、その後火や水の簡単な魔法を試してみた。


 火の玉を飛ばすファイヤボールに、水を出すだけのウォーターだ。

 それらはあっさりと使うことができ、魔法を使うと言う感覚はなんとなく掴めたと思う。

 魔法が使えた事に舞い上がって、他には出来ないかと色々と試しているといつのまにか昼になっていた。


 リューネと一緒に昼食をとった。

 リューネ曰く、私も精霊化しているため食事や睡眠は不要とのことだったが、食事や睡眠も楽しみの一つとして行っておいた方がいいとの事だ。


「楽しみの一つでもないと、長い時を生きていくなんて出来ないわよ。」


 とはリューネの言葉だ。

 確かに食べる楽しみも、眠る喜びもなく只管に世界を見守るだけなんて、気が狂ってしまいそうな気がする。


 今はリューネ特性チョコレートミルクを頂いている。

 やっぱりこの味は最高だ。

 リューネに感謝!

 そう思って見つめていると、リューネは不思議そうに首を傾げた。


「どうかした?」


「美味しい飲み物に感謝してたとこ。」


 答えて一口啜る。


「あぁ、そうそう。さっき貴方の今後を考えて神さまと話をしていたのよ。」


 リューネもカップに口をつけ、チョコレートミルクを飲んでから此方を見た。


「どういうこと?」


 さっきのは私の事を話していたのか。


「貴方は精霊化したじゃない?

 だから、昨日も言ったけど不老の存在になってるわけ、不死ではないけれどね。

 今までの生活を続ければ、すぐに周りが貴方のことを不思議に思い始めるはずよ。

 だから、その対策を考えてたわけ。」


 そうか、老いることのない身体になったのなら成長も止まってしまったという事だろう。

 今の姿のまま暮らしていけば十数年、早ければ数年もすれば皆何かしらの疑問を抱き始めるはずだ。


「それで、いくつかの選択肢を話し合ったのだけど。」


 そう言って、リューネは神様と話し合った末の選択肢を提示した。

①受け入れてもらう。

今の暮らしを続けて、機会を見て周りに自分のことを伝える。

②村から出る。

時々顔を見せに村へ帰る程度にして、世界を転々とする。

③存在をなかった事にする。

神の力を借りて、世界から私という存在を一旦忘れさせる。


①の場合だと、周囲の反応は保証できないし、周りの変化をただ呆然と見守ることしか出来ない。

 親しい人達の生き死にを、延々と感じていくこととなるだろう。

 一緒に生活をしている分、辛いことも増えるはずだ。


②の場合は、①の事を考えるとそう言った辛さは軽減するだろう。時々顔を出す程度なら幻惑魔法を使って、姿を変える事で周りに怪しまれずに接する事が出来るようだ。

 幻惑魔法も万能ではないため、徐々に姿を変えたりして何年も騙し通すなんてことは難しいらしい。


③はそのままの意味で、皆が私の存在を忘れる。私の存在が急に無くなった違和感なんかは、どうとでもなるそうだ。


 現実を突き付けられた様で言葉に詰まる。

 不老の所為で、こんな選択を迫られるなど考えてもいなかった。


 不老という意味をしっかり理解してみると当たり前のことかも知れない。

 しかし選択を迫られてその事実に直面すると、簡単には答えを出せなかった。


「答えは、今すぐにとは言わないわ。

 ただ、理解して頂戴。

 貴方は、もう元の暮らしにだけは戻れないのよ。」


 淡々と、リューネは現実を突きつけてくる。

 黙ったまま、私は頷いた。


 さっきまでの浮かれた気持ちが嘘の様に無くなっている。

 私の頬には一筋の雫が伝っていた。







 運命とは、こうも残酷なものだったのか。

 十六年と言う短い時間ではあったが、それなりに思い入れはある。

 優しい母に、逞しい父。

 愛情を注がれて育った村。


 これらに対して、なんらかの答えを出さなくてはならない。

 リューネが提示した以外の選択肢もあるのかもしれないが、すぐに解決するような案は出てこない。



 カップの中身を空にした後、私はリューネに別れを告げて一旦家へと帰った。


 少し疲れた。

 本当に色んな事が一変に起きて、そのどれもが信じられないような事ばかり。


 私はきちんと心の整理をして、現実と向き会って選択する事ができるのだろうか。

 しばらくは、今の生活がある事の幸せを実感したい。

 

 答えを出すために、今を大切に生きていく事を心に決めた。

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