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序章 絶対に認めない!

序章を二話分に区切りました。

内容は変えておりません。

「ミレリアー!そろそろ起きて水汲んできてー!」

「はーい」

 母の声で目を覚まし、眠い目を擦って背伸びをする。

 ベットの横にあるカーテンを開いて朝日を部屋へと入れた。

 そのまま数秒外の景色を眺めて、徐に布団から抜け出した。



 私はミレリア=ファレノイア、この世界に生まれて16年が経つ。

 住んでいるクリュート村は、町から離れたど田舎だ。

 大きなレス湖に沿って家々が建ち並ぶ小さな村で、周辺は森で覆われている。

 森の奥には雲で頂上が見えない程の大きな山があり、山から流れ出た川がレス湖を満たしている。


 そして、とにかく何もない。

 電気、水道、図書館に映画館。ショッピングなんて以ての外。近代的な文明は何もない。


 挙句に少し森を進むと可愛い動物達・・・なんてものはほとんど見当たらない。イノシシを大きくしたような魔物に、スライムやゴブリンなんかもウロついている。


「はぁ.....」


 まぁ、こんな説明で察するかもしれないけど、私は転生者です。


 日本の平凡な家庭に生まれ、普通の高校と大学を出てOLになり、収入も少ない趣味を嗜める程度だった。

 25歳をすぎてそろそろ結婚もしたいなー、なんて思ってた矢先ですよ。

 落ちちゃったんです。

 マンホールに(泣)........


 しかも、ご丁寧にコーンや看板が立てかけてあるにも関わらず・・・。


 ぼーっと空を見て歩いてた私が悪いんだけどね。


 で、気が付いたらここで生まれてました。

 赤ちゃんでしたよ。歩けない、喋れない。言葉も分からない。

 そこまで沢山じゃないけど、前世では転生物の小説やら漫画やら読んでたよ?

 普通この手の展開って、女神さまとか神さまが出てきて『若くして死んでしまった貴女に〜』とか言って、スキルとか特殊能力的なものを授けてくれたり、来世で優遇してくれたりして、転生も10歳前後で丁度いい体を作っておいたよ。的なのがあるでしょう!?


 あれかな?

 死んで転生できただけでも感謝しなよ。的な?


 なんて・・・考えたところで今日も一日は過ぎていくのよね。

 そんな心の問答をやめて、そそくさと着替えて水桶を両手にレス湖へと向かう。


 さっきも少し説明したけど、この世界には魔物がいる。

 少し期待をしていたのだけど、勇者とか魔王とかは存在してないみたいで、代わりに精霊や悪魔なんかはいるみたい。

 魔法やスキルもあって、その点では異世界!ってところは実感できてるかな。


 悲しいのは、私は全てにおいて平凡なこと。

 前世をそのままに引き継いだ感じで、得意な属性魔法ありません。

 全てにおいて常人レベル。

 ステータスなんかもあるんだけど、これも普通。

 普通って言っても難しいよね?


 ちなみに、これが先月の誕生日に協会で確認したステータス。

―――――――――――――――――――――

(ミレリア=ファレノイア)

年齢:16歳

性別:女

クラス:H

体力:108

精神力:108

魔力:108

攻撃力:52

防御力:58

総合:434

スキル:なし

潜在スキル:寝坊(0)、微運(5)

――――――――――――――――――――


 寝坊って潜在スキルだったの!?ってのは流石に驚いたよね。

 協会っていうのは世界保安協会。

 ラノベやゲームで出てくる組合とかギルドって言えばわかってもらえるかな?

 依頼人が協会を通して、冒険者や協会員に依頼を出す。

 その達成報酬を協会が仲介して支払う。

 よくあるやつですね。


 少し脱線したけど私のステータスについて。

 体力〜魔力に関しては縁起の良さそうな数字だった。

 微運て、すごく微妙だよね。

 確かに実感する瞬間はあるにはある。

 買い物の時に小銭がちょうど足りるとか。食べたかった物が丁度その日の食事で出たりとか。

 うん。すごく微妙だよね。

 これスキルなくても全然起こるんじゃない?


 ちなみに、16歳の一般女性平均のステータスがこちら。


――――――――――――――――――――

クラス:H

体力:105

精神力:105

魔力:105

攻撃力:55

防御力:55

総合:425

――――――――――――――――――――


 普通具合がわかっていただけましたでしょうか?

 そんな平凡なスローライフへ向かって、私は日々を送ってます。


 "ゴゴゴゴゴゴ‼︎‼︎‼︎"


 レス湖へと向かって歩いていると、突然地面が小刻みに震えた。


「えっ!地震!?」


 この世界に生まれてからは地震なんて体感したことがなかった。

 小さな横揺れが三十秒くらい続いた。

 その後大地を蹴り上げるよな大きな縦揺れの地震。

 揺れと恐怖でなかなか身体が動かせない。


「あれ?・・・えっ?」


 と、パニックになりながら必死に建物から離れて座り込んだ。

 大きな縦揺れは数秒ほどで止まったが、また起るかもしれないと身構える。


 だが、妙な事にやけに静かだ。

 地震が、ではなく村が異常なまでに静かなのだ。

 まるで何事もなかったかのように、いつもの静かなの朝と同じ様子だった。


 ガチャ。


 少し離れたところにある家の扉が開いて、中から七十を過ぎたであろうお爺さんが出てきた。

 この村の村長である。

 

「村長さん!地震大丈夫だった!?怪我してないですか?」


 私はそう言って村長の下に駆け寄ったが、特に普段と変わらぬ様子だ。


「おはようミレリア。はて、地震?

 二十年近くそんなもの起こってないと思うがなぁ?」


「えっ?」


 あれだけの揺れに気づかなかった?

 それは流石におかしい。


「ついさっき、すごい縦揺れがあったじゃない!」


 思わず声を張り上げた。

 ん?と村長は首を傾げる。


「たく、何朝から騒いでんだよ。」


 後ろから聞き慣れた声が聞こえて振り返る。

 幼馴染のレイルがあくびをしながら歩いていた。

 レイルは私より二つ年上で、この村の子供たちの兄のような存在だ。

 そして村長の孫でもある。

 面倒見がよく、村の子供たちとよく遊んでやっている。

 髪と瞳は濃い茶色。背丈はそれほど高くはないが、すらりとした体型をしている。

 文明の発達していないこの世界の村々では、肉体労働は必須だ。

 レイルも体を鍛えているのがわかる程度に筋肉が付いている。

 実はこのレイル、なかなかに秀才くんでありステータスも平均より高い。

 クラスはFである。


 クラスって言うのは体力、精神力、魔力、攻撃力、防御力の5つの合計値と、スキルや潜在スキルを値として換算した時の総合計でランク付けした物のこと。


 十段階で評価され、クラスIから始まり最高がSとなる。

総合値からの判断は

I・・・〜200

H・・・200〜500

G・・・500〜1000

F・・・1000〜2000

E・・・2000〜5000

D・・・5000〜10000

C・・・10000〜25000

B・・・25000〜50000

A・・・50000〜100000

S・・・100000〜


 

 協会の依頼で生活をしている冒険者などは別だが、Eより上は一般人では稀なのだ。

 ちなみにCから先は体力などのステータスよりもスキルに依存しているみたいで、私の持っている《寝坊》なんてのは値に換算してもゼロ。

 なのでクラスにも全く影響を与えない。

 一つのスキルを換算しただけで十万を超える物まであるらしい。


 そんな超絶優秀なスキルは、一世代に一人持っているかどうからしいけど。

 大気や空間、時を操るものまであるらしい。


 私の持ってる微運なんて値に換算するとたったの5だ。

 平凡な私にはこの程度で十分って事なのかな?


 一般人で、特にスキルを有していなければクラスG程度が基準になる。

 レイルは18歳でクラスF。スキルを除くステータスもオールマイティに高いらしい。


 正直言って羨ま・・・好きじゃない。


 なんで異世界転生した私が、こんな小さな村でさえ優劣を感じなければならないの?と思えてくる。

 ただの独りよがりなんだけどね。


 そんなどうしようもない気持ちになりながら、レイルに咎めるような視線を投げつけて言葉を返す。


「あんな地震があったのに騒がしいとかそんな場合じゃないでしょ!」


 レイルは続けざまにあくびをした。


「何言ってんだよ、そんなものいつあったんだ?」


「えっ?・・・。」


 村長に続いてレイルまで地震に気づかなかった?

 

「おまえ、まだ寝呆けてるんじゃないか?」


「レイルにいわれたくないわよ!」


 何故あくびを連続してるような奴に寝呆け云々いわれなきゃいけないんだろうか。

 私は腹を立てながら足早に家へと向かった。


 母さん大丈夫かな?まぁ村長もあの歳でピンピンしてたし、村を見渡しても崩れた家もないようだから大丈夫だと願いたいが・・・

 なぜ二人ともあの揺れに気付かなかったのだろう?

※作中で表現している微運とは、運に恵まれないと言う意味ではなく、微妙な運という意味で用いています。

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