記録.5 こんな状態だったとは
「なあ、なぜ俺はここにいる」
状況に適応できていない俺はリコルの方へと視線を向ける。
「それは、あなたが王さまになったからですよ?」
どうやらリコルは状況に完璧に適応しているようだ。流石と言ったらいいのか、それにしても何をすればいいのか見当がつかない。
「なあ、リコル。俺は何をすればいいんだ?」
「んー。そうですね。まずはこの国の状況を前王の側近らしき人に聞いてみてはどうですか?」
そう言って、少し離れたところにいる先日の儀式の時に前王の隣にいた人へと彼女は視線を向けた。
「お、おい。そこの……えーと、そう、お前だ」
少し離れたところにいた彼が俺の視線に気がついた。
「わたくしでしょうか?」
そう言って彼は俺の側へと近づいてくる。しかし、本物の王との対応にかなりの差がある。やはり俺のことはただの一般人としか思っていないようだ。
「お前の名はなんだ?」
「代々王家に仕えております、エドワードでございます」
「そうか、エドワードこの国の状況を教えてはくれないか?」
エドワードは懐からメモ帳のようなものを取り出した。
「国の食料の生産が悪く農業を見直す必要があること、あなたへの信頼度の低さといったところでしょうか。資金面については問題はないのでご心配なさらないでください」
「なるほど」
つまり、農業を良い方向へ導き、信頼を勝ち取ることがこのチュートリアルのクリア条件といったところか。だが、コンティニューができるわけがない。慎重にいかなければ。
「なあ、リコルどうしたらいいと思う?」
「多分これは一宇、あなたが自らの力でクリアしないといけないことだと思います」
リコルは真面目な表情でそう言った。
「手伝ってはくれるか?」
「ええ、もちろん!」
リコルは真面目な表情から笑顔に変えてそう答えてくれた。
「とはいえ農業ってどうすればいいのか」
「まずは農場へ行ってみませんか?」
リコルがそう提案してきた。
「そうだな、行くか」
「はい!」
しばらく時間が経ち用意が整ったので出発する。
城から農場はそう遠くないところにあるらしい。
馬車に乗り農場へと向かった。
車内から街並みを見るとやはり綺麗だ。
国の税金は主に食料を他国から買うために使っているのだとか。自国内である程度確保できるようになれば国の財政は更に安定するのだろう。
そうこう考えているうちに農場へ着いた。
人の気配はしない。
「なあ、リコルここが本当に農場だと思うか?」
「い、いいえ、そうとは思えません」
まさか、誰も人がいない状態でただの荒地になっているとは、想像もできないかった。
まずは人材を確保するところから始めないといけないのか。運が良ければこんなことしていないのかもしれない。本当にやっていけるか心配だ。
いやぁ、大変そうですねー