記録.4 俺にできるわけない
「リコル、本当にやらないといけないのか?」
「ええ、チュートリアルみたいなものですから」
事の発端は数時間前のことだった。
「あなた方には王に謁見してもらう、私も詳しくは聞かされていないが今すぐ王の元へ行ってもらう」
階段を降りてきたくらいの高そうな男兵士がそう言った。
しかし、急に王に会うのは意味がわからない。
「わ、わかりました……」
馬車に乗せられ街中を移動した。基本石造りの綺麗な街並みをしている。
馬車に乗って数十分後、城に到着した。
「城ってやっぱでかいなー」
「そうですね」
リコルは微笑を浮かべてそう言った。
城門を潜り抜けしばらく城内を歩いた後ついたのは服が大量に並べられた部屋だった。
「あなた方にはまずここで着替えていただきます」
見るからに執事と思われる男が言った。
強引に着替えされられると俺の想像するような王族の格好に似ている服に着替えされられた。
リコルに関してはきているのが大変そうな赤を基調とした綺麗なドレスを身に纏っている。
これから何が行われるのか想像もできない。
「準備が整いましたので謁見の間へ案内させていただきます」
執事についていくと大きな扉の部屋の前で止められた。どうやらここのようだ。
「では、陛下へ粗相のないようにお願い致します」
と言われても俺は一般人だったんだそのような教育を受けたことはもちろんあるわけがない。
重たい扉がゴゴゴと音を立て開いた。
俺たちは中へゆっくりと入っていきほど良さそうなところで止まり跪いた。
「面をあげよ」
王と思われる声がそう言ったので顔を上げた。
視界に映ったのは随分と年老いた王だった。
「これより王位継承の儀を執り行う!」
隣に立っている男がそう口にしたのは理解できた。
しかし、なぜ俺なんだ。疑問の檻に閉じ込められているような気分だ。
「ちょっと待ってください!なんで俺なんですか?」
「勇者よこの街をただしか方向へと導いて欲しい。そして、あいにく我には息子がいない。よって伝承の通り其方を国王に任命する!」
なんで、そうなるんだよ。王が訳もわからないことを口走った。俺が勇者だって?そんなわけがない。
「俺が勇者なのですか?」
「ああ、そうだ。世界の果てより来たるものが勇者であると伝承にある。よって其方が勇者だ」
王はそう言った。理解できてる訳じゃない。どうしたらいいのかもわからない。
儀式が終わり気がついたら夕方になり太陽は沈みかけていた。
「なあ、リコル。なんで俺にできるわけがないことをやらせるんだ?」
リコルに目をやると何かを考えているのか外を見ていた。それから彼女はこっちをみて
「仕方ありません。これも試練なので」
俺にこんなことが務まるとは思わないがやらなければ国が滅んでしまうかもしれないし……。
何からやればいいんだろう。本当にこんなことできるのだろうか。
いや、俺にできるわけがない。
今日はもう寝ることにしよう。もしかしたらこれは夢で朝起きたら何もありませんでした!ってなるかもしれないし。まあ、ないだろうけど。
「リコルどうしたらいいかな?」
「頑張るしかありません!」
少し間が空いてから彼女はこう答えた。
無理な気しかしないな。
王様になっちゃった!僕なら諦めますね。