記録.3 到着、でも……
太陽が徐々に高い位置へと登ってきている。昨晩は狼と思われる生物から逃げたのと、空腹で疲労がピークへ達していた。しかしながら、こんなに何もないところで休んだところで状況が良くなるとも思えないので力を振り絞り歩き続けていた。
何もない。辺りは地平線の頭で草むらだ。
辺りを見回していると何か四角いものがある。
「リ、リコル。何かあるぞ。急いでいこう!」
彼女の手を引き猛ダッシュでその物体のある方向へ走って行く。少しして手を引っぱられおれは止まった。
「どこへ行こうとしているのですか?」
こいつは何を言っているんだ?
「あそこにある建物に決まってんだろ?」
彼女はおれの目をまっすぐ見つめてきた。
「そんなものはありません」
慌てて辺りを見回すが、おれの視界には何も映らなかった。幻覚を見ていたのか、もうかなり限界だな。本当に死ぬのを覚悟しなければならないかもしれない。復活のためにここへきたのに全て無駄だったのかもしれないと思うと、悔しくなる。
「俺たちはもうしぬのかな?」
視界が滲んで前がよく見えない。彼女は今どんな表情でおれを見ているのだろうか。きっとおれの顔をは酷いことになってるな違いない。
その時、おれの体は何かに包まれた。
リコルが慰めてくれているだ。
「あぁ、あったかいな」
体の底からチカラが溢れてくる気がした。
「リコルありがとう、もう大丈夫だと思う」
「私は何もできないから、このくらいなんでもないですよ」
こんな時になんだが、ドストライクなんだよな。
始まったばかりで諦められないな。まずは諦めずに街を探してみるか。
「リコルいこう!」
「はい」
リコルはそう言って、笑みを浮かべていた。
その笑顔で心なしか疲れが少し飛んだ気がする。
力が湧いてきたことによって、歩くスピードは遅いが確実に一歩ずつすすんでいる。
「何かみえてきましたよ!」
リコルが言った。
今度こそ幻覚ではないだろう。草むらの途中から石畳の整備された道路が建物の方向へと繋がっている。
「やっとか」
「ええ、そうですね。あっ!思い出しました!ここは、アルツワーノ小王国です。チュートリアルの開始ですねっ!」
リコルがフィルターでも掛かっているかのようにキラキラ輝いているように見える。
「とうとうついたわけか」
超えられないくらいの高さの壁が左右になからの距離にわたって連なっている。
門番でもしているのだろう兵士と思われる鎧を着た人が立っている。
「中へ入りたいんですけど」
俺は兵士にそう言った。
「旅人さんかい?中へ入るためにはまず検査があるから扉を入ってすぐ左にいる人に声をかけてくれ」
そう言って俺たちを通してくれた。
扉を開き中へ入った。言っていた人物が立っている。
「すみません、中へ入るための検査をしたいんですが……」
「かしこまりました」
兜をかぶっていてわからなかったが女性の声だった。この街はおそらく男女平等なのだろう。
街の雰囲気は良さそうだな。
「こちらの椅子へかけて待っていてください」
その女兵士は扉から外へと出て行った。
「なあ、リコル良さそうなところでよかったな」
「ええ、そうですね。とりあえずお腹が空いてしまったので何か食べたいです」
リコルもかなり疲れているのだろう。
兵士が、なかなか戻ってこない。外で何を話しているのだろうか。
気になってしまった俺はそのの扉のところへ行き聞き耳を立てた。
「これはまずいかもな」
男の声だ。
「まさか、本当に世界の果てから人が現れるなんて」
続いて女の声がした。
「これは陛下へ報告しなければならない。すぐに上官へ伝えてくれ」
戻ってきそうなのでもといた椅子へ戻るとすぐに女兵士が走ってどこかへ消えてった。
「なあ、リコル面倒くさい予感がするのは俺だけか?」
「い、いいえ。私もです」