記録2.いつになったら
「なあ、リコル。俺たちはいつまで歩けばいいんだ?あまりにも長すぎないか?いつまで経っても何も見えてかねぇぞ」
「そうです……ね」
歩きだしてから何時間経ったのかはわからなく、唯一の頼りだった太陽もあと少しで沈むというところだ。こんな状況になったのも全部こっちに連れてきたくせに全く役に立たないこいつのせいでもある。
「そろそろ喉が渇いて倒れそうなんだが」
何も飲まずひたすら歩いていた俺にはもう限界が来ていた。
「自分の下の方から出てくるものでも飲めばいいじゃないですかぁ」
確かにその手はなくもないが、できれば飲みたくはない。そうこうしているうちに気がつけば日はほとんど沈んで辺りもかすかに明るいだけだ。
流石に不安で仕方がない。
「な、なあ?ここら辺って凶暴な動物とか出ないよな?」
「さ、さあ。私は何も知りません」
ほんと役立たずだ。
ん、俺は異世界に転生したんだよな。
なら何かしらの力があるんじゃないか?
「なあ、リコル。俺ってなんかすごい力と」
「ありませんね」
「「……」」
しばらくお互いに無言の時間が続いた。
まさか、ないとはな。辛すぎる。チートでも使えれば楽だったんだが……。いや、復活のためだ甘いことなんか言ってられるか!
「アオーーンッ!!」
遠くから犬かもしくは狼の遠吠えが聞こえてきた。
やっぱり怖そうな動物はいた。
「なあ、リコル?」
暗いので目を凝らしてリコルをよく見てみると、怖いのか全身をガクガクさせながら怯えて歩いているように見える。
「漏らしそうなら、それ飲めよ?」
「も、漏らしそうなんてことはありません!!」
「ちょ、声でか」
背後からカサカサと草をかき分けてくる音がした。
これはどう考えてもやばい、な。
「に、逃げるぞリコル!」
何かから逃れるため俺たちは空腹で力の出ない体で精一杯の力を出し続け走った。
しばらく走った後何かの気配はなくなった。
「きっと、諦めてくれたのかな?」
「そ、そうですね」
今思うとリコルの話し方が変わっている。本来はこっちの喋り方なのか、でも会ったばかりの頃が素なんだと思う。最初からこうだったら一目惚れしてたな。
無我夢中で逃げていたのでかなり時間が経ったのかそれとも夜が短いのか時間を知るすべがないのでわからないが、歩いていた背中の方から暖かい光が射してきた。
「あ、朝だ」
朝日に感動したのは初めてかもしれない。
だとしても、人がいる場所にはいつになったら着くんだろうか。
今回も読んでいただき嬉しい限りです。
次回もよろしくお願いします!